表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

第2話 アブソリュート・グランドフィナーレ・フェニックス

 ヤマダとクドウは、炎のキタザワから酒場に誘われた。

 街中には喫茶店もあるが、酒場でもジュースくらいは飲めるらしい。


「なんか悪かったな。ここんとこ、たまに異世界人が紛れ込むとは聞いていたんだけど、俺は初めて会ったもんだから…。俺が奢るから、好きな飲み物とツマミを選んでいいよ」


 メニューは、ホログラム画面で表示された。

 選べるのは例えば、オレンジジュース、リンゴジュース、ポテトチップス、ポップコーン…。

 こちらの世界と変わらない物だらけだ。勿論、聞き覚えのないメニューもあった。


 ヤマダは一瞬だけ不思議に思った。


(そもそも、みんな日本語を話しているし、文字も変わらないんだよな…。いや、気にしたら負けだ)


 なぜ負けなのかはともかく、気にしないことにした。クドウもさして結論が変わらないのか、特に何も指摘しない。


 ヤマダとクドウは、余計なこと?は気にせずに、好きなジュースとポップコーンを頼んだ。

 ヤマダは、炎のキタザワに問いかけた。


「あんた、義務教育って言ってたけど、どこかに学校があるのか?」


「学校で勉強しても良いと思うけど、学費かかるからな。700ゴールドだとまるで足りないし。あ、略してキタザワと呼んでくれて構わんよ」


(義務なのに?いや、気にしたら負けだ…。待て、略してキタザワ?)


 話を続けるキタザワ。


「とにかく何かとゴールドは必要になる。戦闘して稼ぐのが手っ取り早い。とりあえず、縁が出来たついでに、俺がバトルするところを見せようか?」


 それより先に、という感じで、クドウが疑問を投げかけた。勿論、ポップコーンの味や量のことではない。


「ちょっとごめん。HPはヒットポイント、つまり体力だよね?ゼロになるとどうなるの?」


(やはり、なにも指定しないと塩味が基本か。そうだ、たぶん海あるよな?)


 キタザワが答える。

「すまん、そこ気になるのか。バトルが即終了して、敗北扱いになるだけだよ」


 さすがにヤマダが突っ込んだ。

「いや、気になるだろ。死んだりしねぇの?ペナルティとかは?えっと、ゴールド半分にされたりとか…」


「ないよ。そのバトルを継続出来なくなるのがデメリットだね。それと…、バトル終わると完全回復する」


(ぬるっ!マジで?あんた騙してね?)


 クドウがとっとと結論を出した。


「なんか結局チュートリアルみたいだけど、とりあえず見てみようか?」


(クドウ、そんなにチュートリアルはイヤなん?そういや、バター醤油味もあったな)



 三人で案内板のほうに向かった。キタザワは、ドラゴンの丘という場所を指差した。


「ドラゴンにしようか。君らも最初はここがいいと思う。相手のHP多いし、攻撃も激しいから、やり方を覚えやすいよ」


 突っ込むヤマダ。

「ドラゴン?平均HP10万?あんた、そんな強いの?俺ら着いてったら死ぬだろ」


「いや、死なないって言ったろ。それと、強いとかじゃなくて派手系だしさ。まあ近くで見ていてくれ」


 クドウが手を上げた。当然まだ疑問があるようだ。

「キタザワさん、痛いとかないの?それとトイレ近くにあります?」


(そりゃそうだ、いい質問だ、クドウ)


「痛いとか熱いとかはあるけど……。そこは慣れかなあ。君らの世界の感覚が分からんし。あ、トイレそっち」


 クドウはトイレに行った。たぶん普通の水洗トイレだろう。


「やっぱ怖いって。そりゃ俺らHP100だから、すぐ終わるけども」


 キタザワが何かに気づいてくれた。もちろんトイレの件ではない。


「ああそっか。なにもしないとHP100だったかな。そりゃドラゴンのデコピンでもやられる。あとで増やそう」


(デコピン?何?えっと、あと…)


 クドウが戻ってきたので、とにかく出発することにした。


「ちなみに徒歩2分だから。着いてきて」


(2分でドラゴンいるの?マジ?)



(ドラゴン、でか!)


『IT'S SHOWTIME!』


 バトルが始まった。キタザワの説明だと、バトルするつもりで近づかないと何も起こらないそうだ。


 ヤマダとクドウは、少し遠くからバトルを観戦している。

 キタザワから、ホログラムの共有画面を出して観戦する方法を教わっていた。

 空中に映画のスクリーンを出したと言ったほうが解りやすいかもしれない。画面のサイズや視点は、画面を出した者が自由に変えられる。


 スポットライトの範囲内、バトルフィールドと言うべきか、そこには参加者以外でも入れる。

 バトルの参加を希望した者以外は、ダメージを受けることはない。もちろん攻撃することも出来ない。


 要するに、バトルフィールド内でも観戦は可能だが、ヤマダとクドウは、共有画面で観戦することにした。

 酒場で買ったポップコーンとジュースを持ってきている。持ちやすいよう、酒場で無料のトレーが貰えた。映画館でポップコーン買うと渡されるあれみたいなやつだ。手拭きも付いている。



 キタザワが相手に選んだのは、グリーンドラゴン。西洋風の四つ足で立つタイプ。翼もあるため、おそらく飛べる。


「いくぜ!イフリート・ブースト!」

『身体を炎で包み強化する精霊術。攻撃力と防御力が大幅に増加する。』


 ヤマダがクドウに話しかける。

「なんだろ、この声?ナレーション?」


「画面に文字も見えるんだけど…。技の解説みたいなの」


「あ、ああ、俺にも見えてる…。詳細も見れるぽいな」


 キタザワは、炎のオーラを身に纏ったような状態になっている。効果は持続するようだ。


「まずは目眩ましで動きを止める!イグニッション・ショット!」

『小さい火球を連発する攻撃技。拡散弾で一発あたりの威力は弱いが、命中させやすい。』


「イフリート・スウィープ!」

『広範囲を炎でなぎ払う攻撃技……』



 戦闘が続いている。どうも技名は叫ばないとならないようだ。


 ヤマダは少し飽きたのか、画面から目をそらして、周囲を確認していた。


「バトルフィールドの外、全てが暗くなるわけじゃないんだな。当然か。それほど広範囲に暗くなってないな」


「あ!いま、ドラゴンのブレス、直撃だよね。それと、イフリート・ブーストの効果が弱くなってる?」


「またブーストしねえのかよ、キタザワ。エネルギー切れか?やべえ!」


 キタザワは、ドラゴンの直接攻撃を食らって、吹っ飛ばされた。


「ぐはぁ!」


 画面に表示されている、キタザワのライフゲージが赤く点滅していた。


「おいおい、キタザワ負けそうなんだけど…。あんま手本なってないだろ、これじゃ」


 キタザワが奮闘している。なにか大技を放つつもりに見える。


「今ならいける!アブソ…。なにい!!」


 突然ドラゴンが羽ばたいて空を飛び、キタザワから距離を取った。


「ち!甘く見すぎたか。あの位置だと届かん。なんとか撃ち落とすしか…。当たってくれ!エクスプロージョン・メテオストライク!」

『空中から燃えた隕石を降らして大ダメージを与える魔法攻撃。攻撃前後の隙が大きく、使用者の消耗も激しいのが難点だ。』


 クドウが叫んだ。

「当たった!すげえ、なにあれ。ドラゴンが落ちてくぞ」



「そこだ!アブソリュゥート……、グランドフィナーレ・フェニックス!!!」

『炎のキタザワは、自身が追い込まれたときにのみ、自身に封印された不死鳥の力を解き放ち、超必殺技であるAGFを発動することが出来る。』



 ドラゴンを倒したキタザワが、ヤマダたちのほうにやってきた。


「俺は派手系でやってるから、こんな感じで、ピンチに追い込まれてから、大技で逆転が基本かな」


 理解に苦しんでいるヤマダ。

「な、ナンダッテ?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ