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第16話 ワールド・リジェネレーション

次回から従来の雰囲気に戻ります。

15話と16話は、裏設定と裏テーマに関する話。

 石野は自身の行った異世界または未来において、認識されている歴史を説明すると言う。


「今から話すのは、向こうの政府が管理するデータ等から知った歴史です。しかし、僕自身、完全に信用しているわけではありません。歴史なんてものは、権力者等に都合良く改竄されるものですから……」


 そう断ってから、石野は話しを続けた。


「向こうからすると遥か昔、世界規模の戦争が起こったとされています。西暦は不明です。戦争と言っても、人間同士の戦争ではなく、宇宙人が攻めてきたわけでもない。あるものたちが突然現れて、人類が一方的に敵、侵略者として扱った」


「あるもの?侵略者?」


「空想上の生物、神話に出てくるような悪魔やモンスター。例を上げるとドラゴン。それらが突然大量に出現した。勿論、ハルマゲドンと主張する者も多かった。想像が付きますか?」


「ドラゴン以外だと……。私がすぐに思いつくのは、クラーケンとか……メデューサ、グリフォン」


「そいつら向こうにいますよ。ゴブリン、トロール、ケルベロス、ヒュドラなんかもいる」


「そのモンスターは生物なのか?そんなのがウヨウヨ出現した?」


「明確では無いんですが、モンスターは、どうも行動からして生物に思える。そんなのが何万、何十万、もっとかもしれない。各地で目撃された。どのみち敵として扱われる」


「こちらが食われるか。そうでなくとも食糧危機等が想定される感じか?」


「戦闘機だのミサイルだの、エクソシストだの、色んな方法で倒そうと試みた。しかし、勝ち目なんて無かった。いわゆる魔法を使えるモンスターもいる。空間転移できる悪魔とかも」


「……さすがに想像が出来ないな。大騒ぎにはなるだろうし、攻撃もするだろうが」



「とにかく、多くの犠牲を払った後、人類は敗北を認めた。しかし、そもそもモンスターの目的は侵略では無かった。基本的に、人類に危害を加えるつもりすら無かった。攻撃されたから反撃したに過ぎない」


「???……しかし、食糧など資源の問題はどうなる?ドラゴンみたいなデカイのがウヨウヨいて」


「野菜や果物などを食べることは食べるんですが……。あまり必要としません。メインのエネルギー源は、人類の想像力、創造性」


「???」


「もはや理解が追いつかないのは無理もないんですが……。話を続けて宜しいですか?」


 工藤は、どれほど非現実的な主張を続けられようと、とりあえず話を全て聞くつもりだ。

 だからこそ、ここまで話を遮らずに付き合っている。


 工藤は「そのまま続けて構わない」と言い、石野は更に話しを続けた。



「モンスターが出現した事件は、世界の新生や再生をイメージして、ワールド・リジェネレーション、WRと呼ばれています。その時に起きた戦争はWRウォー。


 モンスターが現れた理由については、次元統合という表現をしていました。神話のモンスター等は、元々、別次元に実際に存在していたからこそ、神話があったと。それが統合された。


 ただ、僕の仮説では、空想世界のデータが漏れて統合されたイメージです。人類が空想した虚構が、アカシックレコードなりに記録されていて、その一部が現実化した。このほうが、人類の想像力がエネルギー源という理屈が通る気がする」


「うーん……」


「天使や悪魔のような姿をした者には、こちらの言葉が解る者がいた。そして、共存の道を探ることになった」


「……人類がいないとモンスターも滅びるためか……」


「ええ、当時の国連のような組織が話し合った。驚くことに、向こうの参加者には、ラファエルやケルビムだけでなく、ブラフマー等の記述もあった。宗教的にどう扱ったのか、興味ありますが……。僕は、そこの記述はほとんど信用していません」


「……宗教問題などから辻褄を合わせたと?」


「おそらく……。とにかく、モンスター出現、大戦争、敗北、そして、和解から共存という流れです。向こうの世界では、人類とモンスターが共存しています。敵対関係ではない」


「どうやって共存している?モンスター側が勝利したのだから、人類を奴隷のように扱うことも出来るだろ?」


「恐怖からも創造性は生まれますが、諦めから思考停止されても困るんですよ。結局どうなったかというと……。

 具体的には、人類とモンスターが仮想戦闘を行う契約が締結されました。

 戦闘を行う仮想空間では、人類の戦闘能力を上げてバランスを取る。人類の闘争本能を満たした上で、想像力を引き出せる」


「闘争本能を満たす?自分はドラゴンを倒せたとか、そういうことか?テレビゲームのように。その方法を模索するために想像力を使う?」


「ええ、それと、一般人にモンスターと対等に渡り合えると認識させることで、恐怖を取り除く意味もある」


「とにかく、モンスター側は、恐怖支配ではエネルギー効率が悪いと考えているわけか」


「そうです。そして、仮想戦闘は進化して、戦闘時のパフォーマンスを競うようになりました。見栄えの良い戦い方を考えることで、より想像力が引き出せるようになる。

 パフォーマンスについての説明は、今日は止めときます。歴史の説明は、ここまでにします」



 工藤は、なんとなく理解したと言ってから、石野に質問を投げかけた。


「そこから君はどうやって戻った?」


「理由は解りません。偶然なにかの条件を満たしたのか……。政府の人間は、僕のことをゲストと呼んでいましたから、追い出された可能性もある。なんにせよ、世界を移動した前後の記憶は、ほとんど失われているので」


「ゲスト?政府の人間に招致された?」


「可能性はあります。おそらく発想力を得るために……。正直、僕は帰ってくる気はなかったんですよ」


「向こうの世界で暮らしていたかったと?」


「ええ、工藤さんに話をしたのは、次元統合や大戦争を防ぎたいなんてヒーローめいた理由じゃない。向こうに戻るための方法を探している。

 それと……行方不明者は、無事に暮らしているだろうと伝えたかった」


「確かに、同じ世界に招致されたという可能性はあるが……」


「僕は、こちらに帰ってきて以来、時空の歪みのようなものを認識できるようになりました。おそらく共感覚のようなもので、向こうに繋がる場所が認識できるようになった。

 あのバスの事故現場、そして他の行方不明現場の近くには、歪みがありました。もう消えているかもしれませんが」



 工藤は、自身が最も知りたかったことを問いかけた。


「その世界に、仮に高校生が単独で行ったとしても大丈夫なのか?」


「僕が大丈夫だったように、生活するのは問題ありません。むしろこの世界より生活しやすい。AI技術等が発達していて便利ですよ。


 こちらの世界では、基本は他者の依頼に応える仕事が中心ですよね。主に雇用される仕事。


 向こうはそうではなくて、自己表現活動が主体です。16歳でも発想力さえあれば収入を得られますよ」


「表現活動が苦手な若者はどうなる?」


「インフラ管理などの仕事もあるので、なんとかなります。ところで、どのみち……WRが無かったとしても、自動化が極端に進んだら、似たような状態になると思いますが、どう思います?」


「どういう意味だい?AIで職が減ったら表現活動が主体になると?」


「人類は、きっと永久に想像、空想する。必要なくても新しい物を創造する。娯楽とかではなくて、役割なんですよ、きっと。その理屈のほうが、僕にとっては、人類の過剰な欲望の意義を理解しやすい」


AI(人工知能)とロボットによって、生産性が極端に上がったとして、本当に仕事は無くなるか?

ケインズの予言では、2030年、1日3時間働けば社会は回るとされていました。

ケインズの言った「働かなくてもよくなる」またはマッキンゼーの言ったAIに仕事が奪われて「働けなくなる」。


おそらく、気候変動等の問題が無くなって、資源が足りていたとしても、人間は何故か働くと思います。仕事はある。

元々、芸術作品やら漫才やら、無くても生きていけるモノを創造することが仕事になっています。


そして、この作品の第一部は、AIには創作できそうにないネタを連発する戦争です。

権利問題を扱っているのも、ChatGPTのようなAIの進歩を想定しているためです。

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