第1話 くらえ!バスタードソード!
本作はネタ優先ですが、一部設定を別作品『祓魔師とサーカスとVRMMO』に引き継いでいます。
俺の名前はヤマダ。普通の高校二年生の男だ。
どうも男友達のクドウと一緒に異世界に来ちまった。同級生な。
下の名前?漢字?
異世界に来たとき、名前を聞かれて、苗字を答えたらそうなったんだよ。
俺らが好きな異世界転移アニメみたいな話になってやがる。
来たキッカケ?そんなの後回しでいいよ。
きっとメタバースとか、そういう最新テクノロジーのテストプレイヤーにでも選ばれたんだろ。
そんでどうも世界観は、剣と魔法の王道ファンタジーRPGみたいだった。
せっかくだから、適当に楽しんでから帰ろうって話になった。
来たばっかで、帰る方法は分からないけどさ。
そんで、スタートは持ち金1000ゴールドで、装備は布の服だけだった。そりゃ、まずは武器屋に行くよな。
聞き込みとか使命の確認とか面倒だろ。
バトル楽しまないで、どうすんだよ。
◇
ヤマダとクドウは、一緒に街中の様子を見ていた。中世ヨーロッパ風の王道ファンタジー世界のような街並みだ。
五感は完全に効いていて、ゲーム感はまるでない。お互いに頬をつねったりもしてみたが、普通に痛かった。
今はたぶん、朝方だと思われる。天気は快晴だ。
クドウがヤマダに話しかける。
「本当、リアル感すごいね。マジで異世界転移かもよ」
「とりあえず、どっちでもいいよ。あそこの武器屋にするか。剣がメインみたいだけど、いいよな?」
二人は武器屋に入った。どこかで聞いたことのある名前の武器ばかり並んでいる。
クドウはセール品のコーナーを見ている。
「ちょっ…見てよ、ヤマダ。エクスカリバーが10ゴールド?最大攻撃力500万とか書いてあるんだけど」
「偽物とか呪われてる品だろ?最大とか胡散臭いじゃんよ。なんでエクスカリバーが割引セールなんだよ。しかも投げ売りかよ」
武器屋の親父が話しかけてきた。
「いらっしゃい!兄さんたち、派手系かい?パンデモニウム辺りでやるなら、伝説の武器じゃないと格好つかないからな。
いま、レジェンドシリーズがセール中よ。でも、エクスカリバーは止めときな。難易度が高すぎるぜ」
ヤマダが親父に問いかける。
「難易度?どういうことよ?」
「エクスカリバーは、特殊能力付きで、基本は勝ち確定だからだよ。楽しんで貰えない。魔王と戦うんなら、まあ……」
(自分でセール品にしといて、売る気ないのかよ)
クドウが小声でヤマダに話しかけてきた。
「マジでここ、楽しむための世界かもよ?無敵チートだと面白くないって意味で」
釣られて小声で話すヤマダ。
「なんで小声なんだよ?初心者ぽく思われたくないのか?」
「だって、チュートリアルとかやらされたら面倒だろ。途中の店でスターターセットも売ってたけどさ。ビギナー向けだろ?」
「(実際、俺らビギナーだろ。)まあいいけどよ。とりあえず、300ゴールドくらいのにしてみるか?それで適当なところでバトルしてみようぜ」
「ステータス欄に魔法ってのもあったけど。とりあえず肉弾戦したほうが解りやすいか」
武器屋で、ヤマダはバスタードソード、クドウはムーンブレイドという剣を購入した。
二人にとっては、RPGだと中盤辺りに使いそうな印象だったが、300ゴールドだった。
ちなみに、ゴールドはデジタル管理のようで、指定されたところに手を乗せると支払われる仕組みだった。
ステータスの確認方法だが、「ヘルプ出して」とか「ステータス出して」と言うと、目の前にホログラムみたいな画面が出てくる。心の声でも構わないようだ。
詳細を見るための選択項目みたいなのも表示される。手で触れると選択したことになり、表示内容を変えられる。
ホログラム画面は、こちらが見る角度を変えても、必ず正面から見ている感じになる。
消したいときは、手で払うなりすれば消える。
二人はステータス画面を出して、状態が変わったことを確認した。
なお、ヘルプ画面は、二人ともまだろくに目を通していない。
二人は武器屋を出た。街をうろついていると、洋服屋やら飲食店やら、色んな店があったが、取り急ぎの優先はバトルだ。どこで戦うのだろうか。
ヤマダが酒場を見つけて、クドウに声をかけた。
「世界観からして酒場で情報収集かな?あの酒場らしきところ大きいし、仲間を揃えたりも出来るんじゃね?」
二人が酒場に入ると、壁に案内板があった。
近くのマップらしきものが書いてあり、敵の種類や特徴も書いてあった。
それを見たヤマダがクドウに問いかける。
「一応、ゴブリンの森からにしねえ?平均HP10と書いてあるし。防具は要らねえな」
「うちら最初からHP100あるんだよね……。でも、負けたらどうなるか分からないから、そうしようか」
「もしも大群で出てくるとかだったら、すぐに戻ろう」
ヤマダとクドウは、ゴブリンの森に向かって歩きだした。
◇
ヤマダたちがいた酒場がざわついている。
「おいおい、ゴブリンの森に乗り込むやつがいるぞ!」
「マジか、ひさしぶりにコメディ系が見れるのか?どうする?見物する?」
「さすがにプリティ系じゃないのか?回復させて長引かせる感じだろ」
「男みたいだけどな。プリティ系なら、それはそれで攻めてて面白そう」
◇
ヤマダとクドウは、街中の案内板で確認した、ゴブリンの森に着いた。
徒歩5分程度のところだったため、迷うことは無かった。
ヤマダがすぐにゴブリンを見つけた。
「あいつだろ?緑の小さい悪魔ぽいやつ。種類あるのかもしれんけど、1体じゃん。二人で突っ込もうぜ」
二人がゴブリンに近づくと、一瞬だけ周囲が暗くなった。そして……
『IT'S SHOWTIME!』
アナウンス?と共に、ゴブリンの周囲、半径10メートルくらいだけ明るくなる。二人もその明かりの中にいる。
「なんだ?バトル演出?どうでもいいや。くらえ!バスタードソード!」
ヤマダが斬りかかると、簡単にゴブリンを倒せた。二人はノーダメージだった。
『WINNER!ヤマダ、クドウ』
周囲の明るさが元に戻った。
呆気なさすぎて驚くヤマダと、上のほうを見ているクドウ。
「終わり?マジ?」
「リザルト画面が出てるね。ポイント0で、報酬なし?詳細も見れるみたいだけど、意味ないね、これだと」
次はクドウがゴブリンを倒してみたが、同じく0ポイント。
クドウは、リザルト画面が消えてから、「リザルト出して」と言って、また出てくるかも試してみた。出せる。今までの戦闘履歴も表示できそうだった。
ヤマダとクドウは、何度かゴブリンとバトルしてみたが、結果は変わらない。
それを見ていた男が話しかけてきた。
「おいおい、ゴブリンとやるやつなんて久々だから見に来たら、なんだそれ?お前ら義務教育も受けてないのか?」
ヤマダの印象だと同年代、つまり17歳くらいに見える男だった。
服装はヤマダたちとあまり変わらない。彼らの感覚的には、剣と魔法の王道RPGで良く見る感じの服装。中世ヨーロッパの村人のようなイメージだ。
その男の問いかけにヤマダが反応した。
「俺ら普通の高校生だっての!あんた何者だよ?」
「ああすまん。俺は派手系メインでやってる、炎のキタザワだ」
クドウが炎のキタザワに問いかけた。
「なんなの派手系って?武器屋の親父も言ってたけど」
(いや、クドウ。「炎の」キタザワにも突っ込めよ)
「あれ?お前らひょっとして異世界から来たのか?」