表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕との事件簿  作者: 楓花 凪
2/3

ようこそ部活へ

次の日の朝。

昨日はあの一件から、夜もあまり眠れなかった。家に帰ってからも考えて、お風呂に入っても、ご飯を食べてもずっと考えていた。まさかあんな事を言われるなんて。考えもしなかった。

「良かったら見学に来てね」                 

あの優しそうな先輩からの言葉は僕の脳内で駆けめぐる。どこか優しそうで、どこか悲しそうだった。あの時の僕だったらすぐに答えは出なかっただろう。だが、答えは決めた。

僕は運動系の部活は性に合っていないと中学生の時から分かっている。だからと言って文化系と思うと痛い目をあった。中学生の頃の部活動見学で気にはなっていた美術部に行ってみた。僕は絵を描くのが好きでよく書いていたが、部活の先輩が見学だって言うのに自分で考えろとか、アイデアですら浮かばないの?とか優しさのない言葉を浴びせてきた。僕はあの瞬間から居場所がないと感じるようになってしまった。その日から僕は自分に合っている部活が分からず、仕方なく帰宅部に入った。それから帰宅部に入ったときから周りの目が気になっていき、友達も作らず中学三年間を過ごした。自分の教室に入っても、静かに本を読んだりして休み時間も過ごした。だからなのか体育祭や遠足などがあっても、忘れられるまでにはいかないが、居たのかと言わんばかりに驚かされるのが多々あった。別に僕自身はコミュニケーションが苦手であって、決して誰とも話したくない訳では無かった。誰かに話しかけられれば、話返すし、そこそこ皆が話している内容は分かる。むしろ共感することの方が多い。だが、やっぱり自分から話しかけに行かないので、全く進展は無かった。

けど、今の僕にはまるで救いの手の様な展開が出来てしまった。今まで誘われたことも一回もなかったので正直嬉しかった。なのでまずは今日の部活動見学で行ってみようと思った。まぁ今回も運動系も入らないし、文化系だったとしてもあんなに優しい先輩だったら良いかなと思ってしまう。

僕はそう決意して布団から出て、制服に着替え始めた。制服は普通にスーツと変わらないが、なぜか入学してすぐに天気が暖かくなってしまったので、衣替え的な感じでワイシャツで登校しても良いと言われている。なので今日は特に暑いのでワイシャツに着替えて登校する。着替えが終わり、二階から一階に降りた。リビングにいくと、テーブルの上に手紙と食パンと僕の大好きなイチゴジャムが置いてある。僕はテーブルの上にあった手紙を読んでみた。すると手紙の相手はお母さんだった。

「はじめへ。朝早くから仕事があるので先に出るね。食パンは焼いておいたからジャムをつけて食べてね。帰りはいつも通りだから心配しないでね。お父さんは今日帰り遅くなるらしいから、ご飯ははじめの好きなオムライスにするね。お母さんより」

と、書いてあった。最近これが多い。お母さんはレストランで仕事しているので、朝が早い。お父さんは大手お菓子会社に勤めている。なので休みが一週間に一回あるかないかの忙しくしている。僕としてはもう慣れっこである。

僕は手紙を読み終わったら、手紙を小さく折りテーブルの端に置いた。その後椅子に座り、食パンにジャムを塗り始めた。まんべんなくスプーンで塗っていった。まんべんなく塗れたら、ひとかじりした。やっぱり好きなジャムだけあって、味はとても良い。僕はその後何も考えずに食パンを食べていった。すると、すぐに食パンを食べ終わってしまった。食べおわったらそのお皿を洗い場に置いて、ジャムは冷蔵庫にしまった。ふっと時計を見るともう学校に出る時間になった。僕は急いで学校に持っていくものが入っているリュックを背負って、家を出た。学校までは時間がかかるので自転車で通っていい事になっているので、家を出てすぐ右にある自分の自転車に乗って学校に向かった。学校までの道のりは途中で海沿いの道に通るので景色としては完璧である。無心で走っていると海沿いの道に着いた。今日はこれまでもかと言う程の晴天なので、海が綺麗だった。これは良いことがありそうだ。海沿いを通るともう学校が目の前に見える。

だけど、学校の方を見ると校門の前に人だかりが出来ている。このまま校門を通れないぐらいの人だかりだ。ちかくに行くと、二人の生徒が言い合い?をしていた。僕は思わず近くにいた人に聞いてみた。

「あの~、何か・・・あったのですか?」

その人は僕の方を振り向き、口元に手を寄せてこう答えてくれた。

「なんかさ、風紀委員会の会長と二年のある一人がさ、服装チェックについて揉めてるらしいのさ」

「え?この学校服装チェックなんかあるんですか?」

「あ、そうか・・・君一年か。実はこの学校は生徒会長が風紀委員会なんかを創ってから服装チェックなんかを活動内容に入れやがってさ。ほんとっ、面倒な事を命じたよね。変な所真面目だね~」

「そう・・何ですか。では、このもめ事は服装チェックに乱れがあった・・・って事ですか?」

そう僕が聞くとその人はまるで驚くようだった。

「君よく分かったね~。まぁ確かにそうなんだけどね。ただ一つ違くて、その風紀委員会の会長がさ、その二年のやつに向かって、キツく服装の事について言ったらしいのさ。したらその二年のやつがキレて、差別だって言ったら会長がそれに反応してキレてしまったらしいのさ。で、ただ今その真っ最中」

僕はそう言われて納得した。だが、正直どっちの味方にもなれないと感じた。いや、そんなことなどどうでも良い。僕は今学校の校門のすぐ右側にある自転車置き場に自転車を置きに行きたい。どうやって置きに行こうか。考えないといけない。

「君もしかして自転車通学者だね?だとしたら一緒に自転車置き場に行ってあげようか?」

その人がそう聞いてきた。僕は思わず黙って頷いてしまった。そこで初めて気がついた。その人の胸元のバッチを見ると青色だったので二年生だった。

「決まり!じゃあ端っこの方だったら、会長にもバレずに進めるから。バレると面倒くさいからな。じゃあ行くぞ。しっかりついてこいぞ」

先輩はそう言って端の方に歩いていった。僕もその背中を追いかけるように自転車を押していった。校門を通ると、自転車置き場の方まで無事に行けた。僕は先輩を待たせまいとすぐに自転車を置いた。その後先輩と一緒に校舎の方に歩いた。

「いや~良かったバレなくて。やっぱりあの状況だとこっちに気付かないか。マジ良かった」

先輩がそう言った後に僕は先輩の方を向いた。

「あの、ありがとうございます!おかげで自転車を置けました。あ、そういえば名前を聞いてませんでしたよね。ちなみに僕は椎葉はじめと言います」

「そうかはじめくんだね。俺は疾風秀一って、言うんだ。疾風でも秀一でもどちらでも良いよ。よろしく」

「よろしくお願いします疾風先輩!あ、そういえばあの人たちは大丈夫なのでしょうか?先生に怒られますよね?」

そう聞くと、疾風先輩は、笑顔で答えてくれた。

「あ~大丈夫大丈夫。実は君たちが入学してくる前からしょっちゅうこのことがあってさ。先生たちも慣れっこなんだよね。だからこういう事があった日は授業を少し遅くしているんだよね。ま、勉強好きの人からすれば迷惑だし、勉強が苦手な人からすれば良いのかもね。僕は後者だけど」

「成る程。ありがとうございます。教えていただいて。なら大丈夫ですね」

僕はホッとした。会話しているうちに下駄箱の方まで着いてしまった。

「えっと~、入って右側の方に僕の下駄箱があるんだった。先輩は入って真ん中の方でしたよね」

「そうだよ。良く覚えてるじゃん。意外とこれが楽なんだよね~」

僕は自分の下駄箱に履いてきた靴を入れて上履きに履き替えた。僕の教室は二階だが、二年生の階は三階だった。なので二階まで行くと疾風先輩とは離れてしまう。二階まで階段を登ったところで疾風先輩が僕の方を向いて、手を振ってくれた。

「じゃあ待たな~!頑張れよ」

僕は軽く会釈をして、自分の教室に向かった。教室に入るとほとんど人がいなかった。当然か。何故なら今まさに外でもめ事が起きているから、教室にあまりいないのが当然か。僕は自分の席に着いた。静かさがあり、居心地はそこまで悪くない。授業開始まで残り十分となったところで外では、下駄箱の方まで走ってくる生徒が多々いた。走るくらいなら無視して教室まで行けば良いのにと、僕は心の中で思った。教室の出入り口を見ると続々とクラスメイトが入ってきた。中には汗をかいている人もいる。僕は静かに窓を開けた。汗の臭いで充満しないように空気の入れ換えをした。

クラスメイトが続々と席に着いて、全員が席に着いたところで、チャイムが鳴り響いた。その後担任の先生が入ってきた。僕が見た感じでは、今日は元気が良さそうだ。なんか良いことでもあったのだろうか?そうすると、先生が今日の日程について説明した。

「え~では、今日は丸一日使って、部活動見学にすることになりました。まずは部活動見学について説明します。え~皆さんはまず自分が気になる部活に行ってみてください。その後その部活でまぁ、職場体験的な感じで体験してみて下さい。別に一つに積極的に体験しても良いですし、逆に一カ所づつ変えながら体験しても良いですよ。では、解散です。好きな部活に行ってきていいですよ」

そう先生が言ったら、クラスの皆が部活動見学に次々と移動し始めた。僕も行きたいのは山々だけど、一つ問題がある。それは誘われたのは良いが、部室が分からない。一階なのか、はたまた二階や三階なのかが知らなかった。なのでまずはあの誘ってくれた先輩を探さないといけない。確か二年生は三階なので階段で上がらないといけない。僕は階段を一つ上がった。すると、階段に上がる途中の窓で外を見ると、サッカー部と野球部がグラウンドで新一年生と練習をしている感じだった。こんなに暑いのに凄いと思う。

三階まで上がったところで三階の廊下を見てみた。すると、奇跡的にあの時誘ってくれた先輩が歩いていた。よく見ると人捜しをしている感じだった。誰を探しているのだろうか?僕はそう思いながらも先輩の方まで走って行った。

「先輩。あの~入学式の日に部活動に誘ってもらったんですけど。ちょっと部室が分からなくて先輩を探していたんですけど」

そう言うと、先輩はまるで思い出したかのようなおどろきをしていた。

「あ、もしかしてあの時の一年生?」

「え?そうです・・・けど」

「えー!ありがとうね。いや~まさか来てくれるなんて思わなかったから、どうしようか考えてたんだよね~。あの時誘っといて良かったわ。あ!じゃあ部室の方まで案内するから着いてきてね」

「はい!よろしくお願いします」

僕はそう答えてその先輩に着いていった。先輩はさっきまでの元気が無かったような感じでは無く、むしろ上機嫌だった。部室は三階の渡り廊下を通って向かい側の校舎の方に行き、三階の一番端にある小さな教室に着いた。

「ここが部室だよ。ほらほら入って!入って!」

「では、失礼しま~す」

僕はそう言ってその教室のドアを開けた。すると、中はそこまで綺麗で、長机とパイプ椅子が置いてある。端の方には本棚が置いてあり、ファイルが多くあった。しかもソファが置いてある。凄い。

「さ、座って良いよ。パイプ椅子でもソファでもどちらでも良いよ」

僕はそう言われてパイプ椅子の方に座った。先輩はソファの方に座った。なんかとても体が硬くなった。これを世の中では緊張と言うのだろうか。

「そんなに硬くしなくて良いよ。そういえば名前を聞いてなかったね。私は夏羽メイって言うの。夏羽かメイのどちらかで良いよ。君は何て言うの?」

「僕は椎葉はじめと言います。好きな呼び方で良いですよ」

「じゃあはじめくんね。よろしくね。あ、そういえば後もう少しでもう一人の部員が来るから待っててね。そういえばはじめくんは他に入ろうと思っている部活はあるの?」

「いや、特に無いですね。僕は人より頭一つ出来ないので自分の得意なことが分からないんです。だから、僕は今回の様な誘われたことに感謝しています」

そう答えると、夏羽先輩は笑顔になってくれた。

「そっか。ありがとね。実はこの学校部員が三人いないと部活動として成立しなくて、前までは一人先輩が入っていたのだけれどもう卒業しちゃって。だから今度は私が頑張らないといけないと思ったの。で、今回あなたを誘ったの。私もあまり自身がなくて心配だったのだけれどはじめくんが来てくれて私は嬉しいよ。改めてありがとうね」

夏羽先輩はそう言って僕の方を向いた。僕は思わず目をそらしてしまった。すると、ドアの方から声が聞こえた。

「夏羽。あなただけ頑張っても意味ないからね。ちゃんと私がいることも忘れないでね」

そう声が聞こえたのでドアの方を見ると、黒髪のロングで、清楚系な女の人が立っていた。ピンバッチを見ると青色だったので二年生なのが分かった。

「まい~!もちろん忘れてないよ。一番の親友だからね。どこに行ってたの?」

「私はずっと図書室にいたよ。ちょっと調べ物でね。ところでその人は?もしかして新しい部員?」

「あ、まいにも紹介しないとね。この人は椎葉はじめくん。新しい部員だよ。これで部活動として成立出来るね。ほら、はじめくん自己紹介!」

「は、初めまして。椎葉はじめと言います。ふつつかな者ですがよろしくお願いします」

そう答えると、その先輩は持っていたファイルを机に置いて、僕の方を向いてくれた。

「たく、メイも私に早く伝えてよね。さて、はじめくん、だったっけ?私は水無月舞って言うから、まいってよんでね。これからよろしく」

「よろしくお願いします。まい先輩」

まい先輩は優しそうだが、どこか怖い。逆にメイ先輩は優しすぎて、裏がなさそう。上手くやっていけそうかな?とおもう。

「ところでメイ。結局調べても何も見つからないよ。やっぱり捜査は足からだよ。いつもメイは動くのやだだからって、本で調べたりネットで調べたりのばかりだよ。けど、この事件はもう無理だよ」

「え~。やっぱりダメか。結局人に聞かないといけないの?私動くの苦手なのに」

僕は二人の会話を聞いても理解が出来なかった。

「あの~話の腰を折る訳ではないのですが、ちなみにここは何の部活なのですか?そういえば聞かれてなかったので」

「あれ?そういえば言ってなかったね。あまり他の高校には無い部活なんだ。ここはね・・・」

僕は何の部活か分からなかった。メイ先輩がこちらを向いて答えてくれた。

「探偵部兼何でも屋なの!」

「・・・え?探偵部?何でも・・・屋?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ