僕と霊魂と天国と
SFでしょうか?
「なあ、どうして俺は天国にあこがれるんだろうなぁ。」
ある日の夕方、オカルト好きの友人が訪ねてきた。
SF好きの僕としてはそんな疑問はどうでもよかったのだが、わざわざ訪ねてきてくれたのでその話につきあうことにした。
「そうだなぁ。それはきっと……」
僕はさも関心があったような声色で話しはじめた。
「僕らは精神と肉体の両方をまとめて人間だと考えているがそうじゃないんだ。本当は僕らが精神や心だと思っているものは”寄生生物”なんだと思う。」
「それで天国の話は?」と友人は話がずれているとでも言いたげだった。
「まあ待てよ。最後まで聞けば分かるさ。」と僕は友人を制止して話を続けた。
「その寄生生物こそが霊魂と呼ばれてるやつなんだ。だから肉体の死と同時に飛び出してくるのさ。」
霊魂とか死とかの単語を聞くと友人はうれしそうに身を乗り出してきて、続きはと目で合図してした。
「それでな、その生物は寄生していないと大変なことになるんだ。もちろん長い間寄生できないと死んでしまうんだが、その前に記憶を失ってしまうんだ。おそらく2週間ぐらいしか記憶は維持できなかったと思う。」
僕は明らかにうさん臭い話を友人があまりにも真剣に聞いているので、次第に可笑しくなってきた。だが、僕の口は勝手に次々と話を続けた。
「ところで僕らがどこからやってきたか覚えているか。あのはるか彼方にある我が母星のこと。」
僕はいったい何を言っているんだ??
「ああ、そうだ。そうだった。今思い出したよ。俺達のラレイドッタ星。」
アイツも何を言っているんだ??ラレイドッタだって?
「まさにあの星は天国そのものだった。いや、天国がラレイドッタの思い出なんだろう。」
もう誰が話しているのか分からなかった。とにかく僕じゃない誰かなのだ。
いや、これこそが真の僕なのだと僕の神経回路に誰か?が電気信号を流し込んでくる。
・・・・・・・・そう。
これこそが僕。ラレイドッタ生まれの僕なのだ。
「なつかしいな。消えてしまったけど、どの辺だったんだろうなぁ。」
「たしかあの辺だよ。みんなで地球に飛んできた日のことを思い出したから間違いない。たしかにあの方向だった。」
「あの方向かぁ。」
こうして友人と僕は酒を酌み交わしながら、ラレイドッタの思い出を長々と語った。
これからは”本当の故郷”の話を、好きなだけできるのだろうと思うと本当に嬉しかった。
あなたも”本当の故郷”の話がしたくなったら、うちに遊びに来るといいだろう。
友人と三人で酒でも酌み交わしながら、一晩中、星空を見て語り明かそうではないか。
おしまい