08 渡し守の頼み事
茶斑の猫の頭に、『深淵の魔女』梟が降り立つと、ふたりは帰路につきました。
まずは川辺でサルを呼ばねばなりません。
すると、川辺の小屋にはまだサルがいて、果物を食べていました。
ぼんやりとふたりを見て、その頭の梟をみて驚き、吹き出し、咳き込みました。
慌てて、白猫の彼女がその背を撫でます。
「うっほッ! ゲホゲホッ! なんだ! なんで魔女がいるんだ!」
サルは青い顔をして、梟を指さします。
ふたりは、ふたりの事情をサルに話しました。
「だから、彼女が『魔女ではない』と証言してもらうために、一時的についてきてもらうことになったのです」
「一ヶ月以内には帰ってくるわ」
梟は、片羽を上げて、茶斑の猫の話に付け足します。サルはその言葉に息を抜きました。
「ひとつき……本当に、一ヶ月で、きちんと戻ってくるんだろうな!?」
「片道10日だそうだから、一ヶ月もかからないわ。絶対に戻って、二度と森から出ない」
誓うように片羽を上げたまま、目をつぶる梟をみて、サルは大きくため息を吐きました。
「こんなことは、前代未聞ダァ。けどまァ、たしかにそこの白猫を魔女ではないと証言できるのは魔女だけだろなァ。いいでさァ、船に乗りな」
サルの漕ぐ船に乗り込んで、三匹は出発しました。
梟の魔女は、船の舳先に乗って、気持ちよさげに風を受けています。
その梟の姿をみて、猫たちは思い出しました。
「そうだ。この渡し守のサルさんが、渡し守の交代ができる方法を聞くと約束していたんだっけ」
前を見たまま、私に? と言う梟に、ふたりは頷きます。
「簡単よ。次に渡してくれと言いに来た者に、少しの間見ておいてくれ、と頼んで戻って来なければいいのよ」
「俺ァ、なかなかこの仕事も気に入ってるんだ。暇潰しの話し相手や、できれば連れ合いがほしいだけだ」
その答えを聞いて、梟は、ううんと首をかしげました。
「そうねぇ、じゃあ、猫ちゃんたち。あなたたちの町に行く前に、王城に行ってもいいかしら。彼が友達や伴侶を見つけるための、休暇をとるための陳情をしに行きましょう。なぁに、ほんの少しの間、何人かの兵を借りるだけ。魔女の頼みなら、聞いてくれるでしょ」
サルと、ふたりは、顔を見合わせ、指折り日数を数えました。
「王城に行っても、一ヶ月には間に合うね。いいよ、行こう」
「オイオイ、そんな大事にしなくていいぞ」
疑わしげなサルは、ゆるく首を振りますが、そこに白猫の彼女が手を打ちました。
「いいのよ。そうだわ。王に私が『魔女じゃない』と保証してもらえば、魔女さんに村まで来てもらわなくても大丈夫なんじゃないかしら」
それはいいと言うことになり、三人の旅の目的地が、王城に変わりました。
川辺に着くと、三人を降ろして、サルはやれやれと言いました。
「ま、なんとかなりゃア、それでいいか」
手を振るサルに見送られて、三人は川辺を後にします。
「ああ、そうだ」
その際、サルは茶斑の猫に、ひとつ頼み事をしました。
茶斑の猫は、深く頷くと、先を歩く白猫の彼女と魔女を追いました。




