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02 領主の館



 昼。

 茶斑の猫の姿は、領主の館にありました。


 騎士たちの主は領主ですので、この館の中に、彼の愛しい少女が捕らわれているだろうと。そういうことです。


 少年は数時間前から、少女の身の潔白を叫び続けていました。

 門前払いにされても気にせず、声を大にして訴え続けます。

 すると、そろそろ日も傾くかという頃に、館から一匹の黒いネコが、騎士数人を伴って出てきました。


「少年、何度訴えられようが、私にはどうにもならぬのだ。白い体毛に、赤色の瞳を持つものは、すべからく『深淵の魔女』なのだ」


 少年はここぞとばかりに訴えます。


「彼女の髪は、もとから白かったのではないし、瞳はそんなに赤くない!」


 少女の瞳は、母親に似た赤銅色。そして、毛は、雷に撃たれるという大事故の際にすべて抜け落ち、次に生えてきたときには、艶やかな栗色が、すっかり真っ白になっていたのだ、と。

 この頃やっと、気にせず姿を見せられるようになってきたのにと、少年は悔しげに嘆いていました。


「彼女は白い毛と銅色の瞳の、ただの町娘だ。『深淵の魔女』なんて伝説でしか聞かないような存在ではない」

「『深淵の魔女』は存在する」


 少年が「伝説」と言った瞬間、領主であるネコは、眼光を強めました。


「遥か東方、『深淵の玄き森』に魔女は確かに棲んでいる。それは疑い様のないことだ」


 領主はきっぱりと、そう言いきりました。

 少年はその迫力に一瞬戦き、だがしかし、悔しさをにじませたまま、領主を睨み返します。


 それを見た領主である黒ネコは、表情を緩め、慈しむような目線に変えました。


「私には、彼女が本当にそうであるか、そうでないのか、確かめるすべはない。『深淵の魔女』は、『深淵の魔女』にしか、見分けられない。我々の知る『深淵の魔女』は、白い体と赤い目を持つこと、『深淵の玄き森』から長く出れば、災いの起こること、のみだ。だから、我々は白い体と赤い目を持つ者を見つけ次第、『森』に送るしかできぬのだ。もし出来ることがあるとするならば」


 ここで、黒ネコは灰紺色の瞳を、少年にピタリと合わせました。



「彼女を『森』へ送る役を、君に与えよう。『深淵の魔女』に聞きなさい。彼女が『魔女』であるか否か」



 覚悟のできた瞳をした少年は、とてもカッコ良かったですよ。




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