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13 魔女の災い

 


 わたくしは、茶斑の猫が渡し守に頼まれた事を思い出していました。


 交代要員や、話し相手がほしい、という願いの方ではありません。

 別れ際にされていた、頼みの方です。


 それは、こんな頼みでした。


「もし、『深淵の魔女』が森に戻らないなら、ころしてくれ。災いを起こすわけには行かない」



 けれども、もう、災いは起こってしまいました。


 こんなに悲しい出来事の、いったいどこが災いでないと言うのでしょう。


 これ以上の悲劇など、起こすわけには行かないと彼も思ったのでしょう。

 茶斑の猫の手から、血が溢れていました。握りこんだ手を、自らの爪で傷つけてしまったのです。


 気がついた白猫の彼女が、その手をとります。


「何か、何かいい方法があるはずよ」



 ふたりは懸命に考えました。


 何か、何かないのか。



 そして、ふと、白猫の彼女は、顔をあげました。



「ねぇ、魔女。あなた、お姫さまに直接会ったことはあるの?」



 梟は、きょとんとして言いました。


「ないわ。でも、『深淵の魔女』なのはわかるのよ。だって」


 そこで、はた、と動きを止めます。



「城の中に、『深淵の魔女』の気配がないわ」



 阿鼻叫喚の有り様だった、謁見の間が、しんと静まり返りました。


 憤怒の表情の梟が、シャンデリアから、ライオンの王さまに向かって滑空しました。


「どこ! どこに隠したのよ! わたしが呪った魔女を、どこかに隠したんでしょう!」


 這いつくばる王さまを、周りの兵が守ります。

 叫びながら爪を立てようとした魔女は、寸前で体勢を変えて、そこから飛び退きました。


 魔女に向かって、ライオンの叫びが返ります。


「隠してなどいない! 姫は姫の部屋から移していない!」


「嘘を言わないで! だったらなぜ、『深淵の魔女』の気配が」


 梟はそこで、目を泳がせました。

 わたくしにだけ、わかるぐらいのか細い小さな声で、そんな、まさか、と言っています。



 白猫の彼女が、王さまに問いかけました。


「王さま。王さまには姫が一人だけなのですか?」


「ああ、王子が二人、姫が一人だ」


「なぜ『末の姫』と言うのですか?」


「それは……」


 言い淀んだ言葉に、別の声が被さりました。


「姫には、ひとつ年上の、姉がいたからです」


 それは、乳白色と黒のコントラストが美しい、見事な体毛のトラでした。瞳の色は金。

 この国の、王妃です。


「姫たちはどちらも、白い体毛で、一歳までは青い瞳でしたが、二歳になるまでに赤い瞳になっていきました。私は、『深淵の魔女』だと気付きましたが、手放すことは考えられませんでした。どちらもひどく体が弱く、旅に耐えられるとは思えなかったからです」


 懺悔するように、王妃は語ります。


「実際に、姉の姫は、5歳になるまでに儚くなりました」


 つらい、記憶を、王妃は滔々(とうとう)と語ります。


「だからこそ、末の姫は渡せませんでした。ごめんなさい、この災いは、私のせいよ」


 王妃は顔を覆って、その場に崩れ落ちました。



 その王妃を、白い梟は、なぜ、どうして、と呟きながら見ていました。

 真っ青な、顔で。


 

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