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12 知っているのよ!

 


 城の中は騒然としました。


 だってそうでしょう。

 末姫がかかっていたのは、病気ではなく、魔女の呪いだったのです。


「なんてことだ! 魔女よ、姫の呪いを解くのだ」


 王さまの悲壮な懇願を、梟の魔女は、謁見の間の天井近くを飛びながら、嘲笑いました。


「いやよ、いや。絶対に解いてなんかやるものですか! あははははは!」


 そう言って、その辺りを飛び交います。


 茶斑の猫は叫びました。


「どうして! どうしてお姫さまに呪いをかけたりしたんだ!」


 すると、梟は、シャンデリアの端に止まると言いました。


「どうして? あはは! 王さま、わたし、知ってるのよ?」


 猫は首をかしげます。

 呪いの話が、どうして王さまの何かを知っている話になるのでしょう。


 ところが、真っ白い翼の梟の話は、こう続きました。



「末の姫は、『深淵の魔女』でしょう?」



 城は一瞬、静寂に包まれ、そして、おおきなどよめきに変わっていきました。


「わたし、知ってるの。だってそうよ『深淵の魔女』は『深淵の魔女』がわかるのよ。わたしはこの城下にいたのは三歳の時までだけれど、知ってた。お城に同い年の魔女がいるって」


 梟は回りを見渡し、続けます。


「けれども、わたしが三歳の時、お母さんから引き離されて、森に連れていかれて。それからずっと不思議だった。わたしはお母さんからも、生まれた町からも引き離されたのに、どうしてあの子は来ないのかしら、って」


 その言葉に、息を飲む音が聞こえます。

 そして、王さまを見ました。王さまは、青い顔をしていました。



「王さま、あなた、王国中の親から魔女を引き離したのに、自分の子は引き離さなかったのね。知ってる? 『深淵の魔女』は『深淵の玄き森』にいないと、災いを引き起こすのよ」



 梟は、その真っ白な翼を大きく広げ、ルビーのような瞳を煌めかせました。



「さぁ、災いが起こったわ! ここにいる『深淵の魔女』のせいでね!」



 梟の魔女の高笑いが、城の中に響きます。


 茶斑の猫と白猫の彼女は、とても悲しそうな顔をしました。

 きっとわかるのでしょう。梟の魔女の苦しみも、王さまの苦しみも。


 茶斑の猫は言いました。


「魔女よ、『深淵の魔女』よ。怒りを静めてくれ。お姫さまと、一緒に森へ帰ればいい。それで通りだろう」


 けれども、魔女は言いました。


「いやよ、いや。許すものですか。なにも知らないくせに。のうのうと両親と、なに不自由なく暮らして。同じ年なのに。同じ町に生まれたのに。同じ魔女なのに。許すものですか!」


 さらに、王さまも言いました。


「いやだ、いやだ。連れていかないでくれ。たった一人の姫なのだ。愛しい私たちの娘なのだ。離れて暮らすなんてできない。連れていかないでくれ!」


 大粒の涙を流しながら、吠える王さまに、梟が鋭い爪を剥きました。


「バカなこと言わないで! 今まで子供を引き離された親が、そんな風に泣かなかったと思うの? そんな風に泣くお母さんから、わたしを取り上げたくせに! 自分の番が来たら許せですって? 許すものですか!!」


 鋭くとがったくちばしを広げて、威嚇する魔女に、王さまはうずくまり、許してくれ、連れていかないでくれ、と繰り返すばかり。



 その場にいる誰もが、どうしようもない思いに包まれました。

 

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