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ヒーローが追加されました

 チュートリアルは続く。

 制服のまま、クラスのみんながグラウンドっぽい、最新式の闘技場のような場所に整列している。


「こうもほいほい場面が飛ぶと、便利なのか疑問ね」


「慣れだな。しばらくは我慢しよう」


「今回は隣のクラスと合同で訓練を行います。各自ペアを決めて練習してください」


 先生に言われて散り始める生徒達。もちろんカズマと組むわよ。


「カズマ。誰か組む相手は決まっているのかい?」


 さっきの金髪イケメンさんがカズマと話しています。


「ああ悪いな。幼馴染がいてさ」


「いやいいさ。なら僕は違う人を、どうせなら女性にしようかな」


 親しげに話しているわね。もう仲良くなったのかしら。

 両方高身長のイケメンだからか、注目度が半端じゃないわ。

 でもその片方が彼氏! 私の彼氏! 嬉しいけど近づいてくる子がいそうで不安ね。


『あやこのヒーローが追加されました』


 半透明のメッセージが出ました。なんだか慣れたわ。


「なにかしらこれ?」


 カズマに話しかけようと近づいたらメッセージが出た。

 ヒーロー。ヒロインキャラの女の子版ね。

 私のヒーローは小さい頃からカズマだけなんだけど。増えられても困るわ。


「おや、いいところに……はじめまして、美しいお嬢さん。私は柳生ウェイド。よろしければペアを組みませんか?」


 カズマの前に金髪さんに話しかけられました。この人攻略対象キャラなのね。

 というか柳生ってなによ。世界観が全然わからないわ。


「ストップだ。さっき話しただろう。幼馴染がいると」


 カズマが割り込んできてくれた。恋人というワードが使えないため幼馴染です。

 なんだか逆戻りしたみたいで悲しいけれど、ここは我慢よ。


「ああ、彼女がそうか。僕もつくづく運がないな」


『パートナーをカズマかウェイドから選択できます』


「カズマで」


 こんなもの即答です。私が好きなのはカズマただ一人。この気持ちは揺らがないわよ。

 それに選択肢を出すならもっと前な気がするわ。


『カズマの好感度が1上がりました』


 少ない……選んだだけで自動的に上がるのね。本人の気持ちとか関係ないのかしら。


「すみません柳生さん。私はあんまりカズマ以外の男の人とは……」


 パートナーの件はちゃんとお断りしておこう。

 その気にさせるのも悪い。


「気にしないでくれ。無理やり組もうなんて思わないよ。それにウェイドでいい」


 いい人でよかった。その後、私に話しかけてきたカレンとウェイドさんはペアを組むことに。

 カレンが凄く喜んでいたわ。イケメンと組ませてくれてありがとうとお礼まで言われたし。


「それでは起動テストを開始します」


 先生の声で生徒が闘技場に広がっていく。近くで発動すると危ないのね。


「まず大切なのはイメージです。自分達には当たり前に使えるもので、使えて当然。日常行為だと魂に刻み込みましょう。そうしたら好きなようにイメージしてください」


 目を閉じて、心の中で自分にはできると何度も唱える。

 できれば軽くて飛びまわれるような装備がいいわ。空が飛べたら楽しそう。


「腕輪が光ってる?」


 私の背中になにかある。私の意思で動くそれは、背中の装置と大きくてクリスタルのような翼。

 私の体を包めるくらい大きなもので、これは鎧の役目もしているのだと理解できた。


『魔装具第一段階は魔力重視タイプ。飛行・速度・遠距離戦に優れたものです。ダイヤモンドのように美しく、魔力を流すことで七色に輝く盾であり、空を翔る翼でもあります』


 いいわね。気に入ったわ。綺麗で見ていて飽きないし、なかなか強そうじゃない。

 他の生徒も全身鎧や必要最低限の軽いものまで全員違う。


「それぞれ形は違うものですが、強弱はなく使い方の問題です。魔装具は自分のパートナーだと自覚しましょう。控えめに言って恋人以上、武具未満の関係です」


 先生のおそらく間違っている解説は続く。

 横目でカズマを見ると、黒いオーラが体を包み込んでいる。

 カズマは何をしてもかっこいいわね。あのかっこいいのが私の彼氏ですよ彼氏。


「鎧の軽・重は切り替えられるようになっておきましょう。大雑把でいいので、まずは急所を守るだけのものと、全身を包むものの二パターンだけでも使えるように練習あるのみです」


 切り替えは何度やってもできない。なにか制限でもあるのかしら。


「各自で自由に動いてみましょう。少ししたらペア同士で練習試合をどうぞ」


 あ、これが戦闘イベントね。慎重に練習しておきましょう。

 私・カズマ・ウェイド・カレンの四人で固まって練習します。


「そっちはうまくできた?」


 言いながら羽を出してみる。もう意思一つで出せそう。もうちょっと練習すれば完璧ね。


「おお、間近で見ると本当に美しい……まるで天使のようだね」


 ウェイドさんが褒めてくれるのは嬉しいし、お礼も言っておく。

 そして一番褒めて欲しいカズマに対して、何か言うことは? という目で見つめてみる。


「綺麗だよ。あやこによく似合っている」


「ありがとう。嬉しいわ」


「ううぅ……あやこが羨ましいですわ……イケメンに褒められて……」


 ハンカチを噛んで、どんよりした空気をまとっているカレン。

 白を基調とした服で、ロングスカート。露出は少なく腕についたアクセサリーが服とうまく合わさってお姫様みたい。


「違うんだよ、すまない。カレンさんもとてもよく似合っているよ」


 慌ててフォローに入るウェイドさん。

 プレイボーイなのかと思えば慰めるのに戸惑っている。

 実は女の子の扱いに慣れていないのかもしれないわ。


「ほら、カズマも褒める」


 小声でカズマにアドバイス。流れで褒めるのよ。


「いいのか? 他の女を褒めたりしても」


「別にこんな事で嫉妬したりしないわよ」


「そうか、悪い。一番綺麗なのはあやこだからな。そこははっきりさせておく」


 カップルっぽい! 今凄くカップルっぽい会話でした!

 生きててよかったわ。この幸せを逃がさないように頑張ろう。


「カレンさんも似合っているって。その服、白が清楚さを引き立てているっていうのかね? いいと思うぜ、清純派っぽくて」


「ありがとう存じます! お二人ともカレンとお呼びくださいまし!!」


 立ち直りが早いなあ。本気でへこんでいたわけではなさそうだったし、まあいいわ。

 あとカズマ。私の時よりちゃんと褒めているじゃない。

 嫉妬しないって言ったけど、ちょっと悔しいわね。


「っていうかそれも鎧でいいのか? 普通の服っぽいぞ」


「魔装具は心の機微で変化するからね。重そうで面積が多ければ強いというものじゃあないよ。薄着でも体に強力な魔力の壁が張られている人もいる……こんな風にね」


 ウェイドさんの鎧は胸と腰まわり、そして手を包む装具が綺麗な青。

 あとは真っ白な服に金色の線が入ったデザインで、王子様というよりは騎士に近いわね。

 マントと一体化したような上着。動きやすさ重視で青い部分だけが硬そうな素材。


「美しいですわ! 美しすぎてどうにかなってしまいそう……イケメンと王子、カツカレー、いいえハンバーグカレー級の組み合わせですわ!」


 とりあえずカレーが好きなのは伝わったわ。

 お嬢様は多分カツカレーとか食べないと思うけど。

 ハンバーグカレーは……ハンバーグならお嬢様が食べていてもセーフね。


「そうね、なんだか騎士って感じでかっこいいと思うわよ」


 とりあえずウェイドを褒めながら、カツカレーはお嬢様っぽくないと結論付けた。


「似合ってるよ。金髪と白や青が合うな」


「ありがとう。美少女に褒められると本当に嬉しいよ」


「で、俺なんだが……イマイチうまくいかなくてな」


 カズマを黒い光が覆うけれど、それが一瞬鎧のようになって消えてしまう。


「イメージが問題なのか、俺の魔力とやらが足りないのか。まあなんとかするしかないな」


「焦らなくてもいいさ。最初からできている方が珍しいからね」


「あやこが特別上手なのですわ」


「ウェイドとカレンは初めてじゃないのか?」


 なんとなく経験者っぽい語り口なのよねこの二人。


「過酷ではないけれど訓練はしたよ。多少の覚えがある。カレンもそうなんだね」


「はい! おそろいですわね!」


 心底嬉しそうだ。目がきらっきらしていらっしゃる。


「他の生徒も出来ているヤツと出来ていないヤツで半々といったところか」


「途中までできたんだ。絶対に無理じゃない。初心者ならいいスタートだよ」


「そうですわ! わたくしも応援いたしますわよ!」


 うん、いい人達だ。この世界最初のお友達が二人でよかった。

 そこから練習を続け、カズマは不恰好な全身を覆う黒い鉄板のような鎧を出していた。

 なんとも動きづらいらしく、鎧なんて無い方が強いと言っていました。

 二人は笑っていたけれど、あながちウソでもないのよね。


「では希望者で戦ってもらいましょう。やりたい人は二対二でどうぞ」


 戦闘チュートリアルが始まりそうな気配です。


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