サポート友人キャラと出会いました
乙女ゲームの世界の飛ばされ、仕方なくチュートリアルを見る私とカズマ。
豪華という言葉の語源なんじゃないかというホールに、全校生徒が集められています。
お金がもったいない気がしてならないわ。
「えーでは学園長の挨拶です」
ここだけ飛ばせないのかしら。長くなるでしょこれ。
「えー皆さん入学おめでとう。学園長だ。私のようにこう……やるときはやる。といった人間になってくれ。もうな、今週末とか尋常じゃないぞ。やるを通り越してやっちゃった感丸出しだから……」
やっぱり長くなるのね。どうしてこういう式って話が長いのかしら。
白くて立派なお髭の学園長が、よくわからないスピーチを続けている。
「……なので私のような人間になれ。教師ってのは頑張る生徒を応援していく気満々だからな。生徒以外の人はもう、知らん。身内の葬式にいる知らない人レベルの存在だ。それじゃあ教頭先生。最後にひとこと、何か言ってやりなさい」
学園長の隣で待機していた教頭先生が前に出る。教頭先生は女性だ。
「はい、学園長のありがたいお言葉で……ヒゲふっさふさだな!?」
そんな教頭先生のひとことで入学式は終わりました。
「やっぱり話が長かったな」
学園長の挨拶やらを聞いてなんとなくわかった。
ここは魔法のあるファンタジーに近い、現代文明の混ざった世界ね。
特殊な結晶を加工して魔装具というものを作れるようになった。
でもその武具は使える人間が限られていて、特別な素質をもった人は貴族とかお金持ちに多いみたい。
「そんな人達を集めた学園に編入したという設定らしいわ」
「魔装具を使える人間だけが、瘴気の塊や世界の脅威を浄化、討伐できると」
やたらめったら大きい体育館を出て、カズマと一緒に教室を目指して外を歩く。
左右に木々が植えられた石畳の道。綺麗に整備されているわね。
街灯は電気じゃなくて魔力とか別のエネルギーみたい。
途中にテニスコートがあったわ。スポーツも多分同じようなものがあるはず。
「どっちかっていうと男向けの設定じゃないかこれ?」
言われてみれば、男の子が好きそうな設定ね。
露出が多くて、女性にしか使えなかったりすると、もっと男の子向けっぽいわ。
深夜アニメに出てきそうね。入学早々、女の子と決闘とかするんじゃないかしら。
「乙女ゲーム世界よね? それほどやったことがないけれど、ちょっと変ね」
「男女両方が楽しめる要素をぶっこんでいるってことか。どっちつかずな気がするけどな」
どっちつかずはファンがつかないわよ。
だから聞いたことないゲームだったのかしら。
『チュートリアルその2。魔装具について』
「特殊な装備ってやつだな」
そもそも乙女ゲームって恋愛中心じゃないのかしら。こんな物騒なもの出てくるの?
そんなに詳しいわけじゃないけど、やっぱり違和感があるわ。
『魔装具は万能ツールです。これひとつで武器にも防具にもなり、アイテムスロットから宇宙空間での生活。さらには非常電源にもなり、あらゆる装置の起動キーとしても使用可能です』
「思っていたより万能ね」
なんでもできる夢のツール。でも限られた人にしか使えないと。
これはご都合主義の予感がするわ。結構無茶振りされそうね。
『まずは魔法と魔装具を使うことに慣れましょう。チュートリアルを見ますか?』
「ちなみに見ないとどうなるんだ?」
『飛ばす場合、最終チュートリアル、戦闘イベントへ飛びます』
「戦闘!? なにがあってそうなるのよ!」
「いよいよ見るしかなくなったな」
渋々見ることにして、選択を選ぶ。
そして場面が切り替わる。
イベントは長い道のりを歩かなくてもいいようになっているのね。
「ここは教室ね」
そしていかにもな豪華さを主張してくる教室。お金持ちっていいわね。
空気も綺麗だし、清掃が行き届いている。
広くて設備がお高そう。
「みたいだな。隣でよかったよ」
私とカズマの席は教室の後ろの方、そして隣。心の中で小さくガッツポーズ。
席と席の間がそこそこ空いていることには、この際目をつぶりましょう。
そして先生が入ってきた。
「みなさんの担任になりました、ルーリンです。一年間よろしくお願いします」
エメラルドグリーンの髪と優しそうな雰囲気。
笑顔とスタイル抜群の女性だ。担任は女性なのね。
「それでは全員分の魔装具を配ります」
先生から全員に宝石のついた腕輪が渡され、これに魔力を込めることで最高のツールへ変わるのだと説明された。
付けてみるとぴったりだわ。しかも付けている感じがしない。邪魔にならないように配慮されているのね。
「今回は初歩の初歩。生身での戦闘を想定し、武器や防具に変える訓練です」
それが初歩って、一体この先どうなるのかしら。
ちょっと不安だけど、カズマと一緒ならなんとかなるといいなあ。
「では、グラウンドに集合してください」
先生が出て行くと、隣の女の子が話しかけてくる。
「カレンと申します。よろしくお願いいたします」
金髪で緑の瞳の美少女さんだ。
これまたいかにもなお嬢様ね。清楚という言葉の体現者みたいな存在だわ。
完全に住む世界が違う。二次元に勝つ三次元を始めて見たかもしれない。
いやこの子もゲームキャだから二次元だけど。
「あやこです。よろしくお願いします」
とりあえずくだらない考えは捨てて自己紹介。
なんだかつられて敬語になってしまう。
カレンという名前の通り、純情可憐なお嬢様。
元の世界なら一生かかわらないタイプね。
何気ない仕草に育ちのよさを感じますわよ。
『彼女はカレン。あなたの恋を応援するサポートキャラクターです。気になる男の子の情報は彼女に聞きましょう』
ああ、いるわねそういうキャラ。
反対方向を見ると、カズマも誰か知らない男子と話している。
金髪碧眼のイケメン。きっとカズマのサポートキャラだろうなあ。
「黒髪の殿方と、お知り合いですの?」
一緒に教室に入るところを見られていたのね。
まあ隣だし。先生来るまで話していたからわかるわよね。
「ええ、私の…………幼馴染です」
恋人ですと言おうとして失敗。
幼馴染が一番親しそうだし、とりあえずそれで通しましょう。
なんでしょうこの敗北感は。
「まあ羨ましいですわ。わたくし、お金持ちのイケメンをこよなく愛しておりますの」
最高に美しい笑顔でなんちゅうことを言い出すんだこの娘さんは。
「お金持ちと美男子。これほど相性のよい組み合わせなんて……わたくし、カツカレーしか存じませんわ」
いかにもキャラ作りっぽい無理も違和感もある『ですわ』口調だ。
まあゲームキャラってわかりやすくないとダメよね。
ですわを強引に語尾に付けようとしたりするキャラなんでしょうきっと。
「イケメンの情報ならわたくしにお任せですわ。情報戦を制すれば、イケメン貴族と恋仲になることも夢ではありませんわよ」
ごめんなさいカレンさん。もうカズマと恋人同士です。夢かなっちゃってます。
このゲームに今日また引き離されましたけど。
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」
とりあえず話を合わせておきましょう。余計な波風たてても意味なんてないわ。
「敬語は不要ですわ。もうお友達ですもの」
「よろしくねカレン。あやこでいいわ。もうお友達でしょう?」
「よろしくあやこ。一緒にイケメンにちやほやされましょうね」
聖母のような優しい声と、見る者を癒す笑顔で言われましたよ…………いやまあ悪い子じゃないみたいだし、お友達ができたと考えましょうか。ポジティブにいきましょう。
学園生活をなんとか進めるには、カズマとだけ一緒にいても厳しいものがあるものね。
『続いて練習場へ向かいます。準備はよろしいですか?』
メッセージが出て、カズマと目を合わせ、頷いて選択。
そして私達は外に出た。