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やっと街か



 【セクター】が一瞬光ったと思ったら、徐々にオレンジ色から静かな闇夜に包まれようとしていた草原から真っ白な四方を囲まれた部屋に移動していた。

 その部屋は広く、遥か上から白い光が降ってきている。なんだろう、全てを照らし出すような清い感じのする光だ。


 縦横五百メートル高さ千二百メートル、それがこの部屋の大きさである。

 

 これを部屋と言っていいのかといった感じの大きさだ。 遠くの四方の壁には巨大なシャッターらしきものが見える。床も壁も天井も光を反射する金属でできている。

 

 こんなに広いと体高三メートルはあるはずの【セクター】がちっぽけに見える。【セクター】以外のロボたち(【ヨルムンガンド】は除く)もここに来ればどれも皆小さく見えるだろう。


 ここは俺が所有するロボの中で最も巨大で、最も俺と神様が手を掛けたロボ(ロボ?)である宇宙船型【ヨルムンガンド】の機体内だ。

 初めにこの世界に降り立ってから【セクター】を召喚するまでの間に、この【ヨルムンガンド】を召喚して、ここのメインコンピュータに指示を出していたのだ。今着ているパイロットスーツもここで着替えたものである

 


 それはさておき、ホームに帰ってきたからか眠気が強くなってきているし、此処はただの転送部屋なのでさっさと出ることにする。


 前方のシャッターに向けて【セクター】を進ませるようにスイに指示する。


 「主殿(しゅどの)お帰りなさいませ」


 シャッターへと進んでいる時に突然何処からともなく女性の声が広い部屋全体に響き渡った。


 「あぁ、ただいまヨム」


 「主殿、この後どうされますか。周辺の地理情報はまとめておきました。いつでもホログラムに投影可能です。食糧生産施設の耕作施設、家畜施設はトラブルもなく順調に稼働しています。大気中の資源の回収も順調に進んでおります。その他すべての施設を稼働させましたがどれも不備なく動いており問題ありません。早速促成栽培した小麦を使ったお菓子を作ってありますので、食べてみてください。自信作ですよ。後、今日人間たちの様子を見ていて思ったのですが、人型のロボを造り、それを操って街を回ってみたいのですが、どうでしょう?」


 「あ、ありがとう、じゃあ【セクター】を整備所に置いてくるから、重要なことはマスタールームで聞くわ。それ以外は整備所に向かいながら聞かせて」


 眠いが一応聞いておくか…… ヨムはスイとは違って怒涛のごとく言葉が出てくる。少しでも話から注意を逸らすといつの間にか話の内容が全然違っているといううことになる。  ……聞き逃しそう…… 



 「わかりました、マスタールームの方にクッキーと紅茶も用意しておきますね。まだティーカップやお皿などの工業製品は試運転しかしていない状態なので十分な出来なも……  …    

         

         ……スイ貴方はどうでしたか。主殿に迷惑はかけませんでしたか」


 あ、やっべっ少し寝てた。工業製品が云々(うんぬん)というところまでしか覚えてないな……

 

 スイがヨムの問いかけに少し嫌そうな声で答える。


 「かけてない」


 その後はうつらうつらとしながらヨムから施設等の進行状況の報告を受け、白い部屋から出てロボたちの整備所に向かう。




 ロボ専用通路を高速で移動してすぐに整備所についた。おかしいな、ここに来るのに五分ぐらいかかるはずなんだけどな。


整備所内はこれまた広く蜘蛛型、人型、要塞型を整備、修理、改造するための専用格納庫(ドック)がそれぞれ五機分ある。

 格納庫内の壁には様々な形のロボットアームが幾つも取り付けてあるだけではなく、怪しい魔術紋が刻まれている。


 【セクター】を開いている蜘蛛型専用のスペースに入れて…… 後は……  ……















 はい、おはようございます。只今(わたくし)ガラド王国内にある都市の一つ自由都市フーリンの門前で街に入るための検問の列に並んでいます。


 案の定、昨日は眠くてヨムの話をほとんど覚えていなかった。はっきりと覚えているのは、整備所のシャッターの前までだ。

 スイとヨムが言うには整備所の格納庫に【セクター】を固定したところでそのまま操縦席で寝てしまったらしい。そして【セクター】から降りて、マースタールームでちゃんと寝てもらうために一回おこして、その後マスタールームでちゃんとヨムの報告を聞いてからベッドで寝たらしいが全く覚えていない。

 で、その報告の中でこの自由都市フーリンに行こうって話になり、俺は承諾したらしい…… これも勿論覚えていない……


 まあ、そんな訳で朝起きるとヨムから急に、フーリンに行く準備はすでに出来ていますが、いつ出発しますかと聞かれて何のことと?尋ねると昨夜のことを説明された。

 もう準備もされていたので覚えてないと言って行かないのは無いなってことで今ここにいる。


 フーリンには【ヨルムンガンド】から降下用ポッドで近くの森に降りてそこから歩いてここまで来た。(【ヨルムンガンド】も降下用ポッドも透過魔法で姿は見えていない)


 その間にヨムから何故ここを選んだのかとか、どういう街で、何をしてはいけないのかということを聞いておいた。


 先ず、この街を選んだ理由だがヨム曰く雑だったかららしい。ヨムには昨日の昼の間、【ヨルムンガンド】に収容されているドローンをこの世界全体にばら撒いてもらい、地形、気候、人種、国家、ダンジョン等の情報を集めてもらっていた。

 ドローンにはカメラ機能、収音機能、生体感知機能、魔素濃度測定機能、風速計測機能、湿温計測機能、等々思いつける限りの情報収集機能を詰め込んである。勿論、他の生物に気付かれないように透過魔法をかけてある。


 それで集まった情報によるとこのガルド王国が他の国の中で最もがさつだった。勿論たった半日では大した情報が集まるわけでもないが、それでも分かるほどにがさつなのだ。

 街中の家の建設基準に始まり、物価、特権、兵士、ダンジョン管理、街道整備、関所、国民性、法律どれをとっても大雑把であった。それでなんで国として成り立っているの?と疑問を抱く程に。


 まあ、そのため俺みたいな住所不定、出身地不明、無職にとっては入りやすい国柄というわけだ。

 

 さらにその中でダンジョンに潜って生計を立てるのに都合がいいのがこの自由都市フーリンだったわけだ。


 ここは近くに小中規模のダンジョンが合計五つもあるというダンジョン都市なのだ。普通街の近くにダンジョンがあることはそんなにない。多くても二つだけ。

 そのため経済が潤っていて、ダンジョン関係の道具などは安く、同業者もたくさんいるので一人変な奴が紛れ込んでも気にされないだろう。


 で、タブーなことはあまり定かではないが、殺人は普通に罪になる。たいてい日本で極悪と思われていたことは罪になる。ただ雑なお国柄なので…… 抜け道や力技でどうにかなってしまう。


 ただそんな中でこの都市では商人の力が強そうであった。映像では態度の悪い冒険者らしき人物が商人の前でへこへこする様子や、この都市の一等地に住んでいるのが貴族ではなく商人らしいのだ。


 これらの情報は精度は高いと思うが、上空からの収集なので間違っていることもあるだろう。まあ、そこは自分で聞いていくしかないだろう。


 おっと、もう俺の順番が来たようだ。前の人達は特に何もせずスムーズに入っていったので俺も大丈夫だろう。


 何かの鱗で出来た鎧を着て、剣を腰に差したやる気のなさそうな兵士の前を通り過ぎようとする。


 「おい、お前ちょっと待て」








透過魔法・・・光、熱、衝撃あらゆるものを透過する魔法。これを人ににかければダメージを受けない、誰からも感じられない幽霊人間となる。発動中はあらゆる現象に干渉できない。そのため【ヨルムンガンド】などには一部に光学迷彩を施して推進器などが使用できるようにしてある

 

誰からも認識されず、世界の法則さえも認識出来ない存在、世界に干渉出来ない存在、それは本当にこの世界に存在し、生きているのだろうか?


・ドローンはそれぞれが中継器を内蔵しているので通信距離は問題ありません。

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