表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
研究バカは転生しても直らない!  作者: 犬ガオ
第一章 暴走研究王女、誕生
9/57

後に賢王と呼ばれる者・前編

800PV感謝!

ということで本日も更新です。

キリが良いところまで…。

 僕はシェルヴェス・エ・ギ・シャドラ。木国の第一王子だ。

 皆からはシェルと呼ばれている。歳は四輪。今は来年通う学府の準備として、王としての知識を爺と先生に教えてもらっている最中だ。

 ノートに石筆で【術】の授業の内容を書いていく。今日は【属性】の勉強だ。

 予習のお陰か、授業は滞りなく進む。

 一通りの説明を聞いて、分からない所は質問する方式なので、知っていれば問題なかった。

 余裕が出てきたので、ふと、窓の外を見る。木々が生い茂る先には、妹がいる居館が見えた。


 最近、妹ができた。

 名前は、リンカティア・エ・ル・シャドラ。皆はリンカと呼んでいる。


 兄のひいき目になるけれど、リンカはすごく可愛い。

 まるっとした大きい瞳もかわいければ、白い肌に血の通った桃色のほっぺもかわいい。

 わかりやすい特徴としては、母上譲りのふんわりとした白金色の髪に、父上譲りの、赤よりの紫色の瞳。

 まっすぐな緑色の髪に琥珀色の瞳の僕とは逆だ。

 そして、額と耳の【神霊石】。

 乳白色の【神霊石】は、光の当たりようによっては虹色にも見える不思議な石だった。

 それを持つリンカは、誰から見ても特別な存在と分かる。

 何せ、木国の建国以来、初めての【古き樹の民】の特徴を受け継ぐ赤ん坊なのだ。

 すごい妹が出来た、と思いつつ、その妹に尊敬される兄であるように、僕は今、勉学に励んでいる。


 その日の爺の授業が終わり、僕は明後日にある先生の授業に必要そうな本を、居館の書斎に借りに行く。

 地政学の本、刻紋理論の本、霊素学の本ぐらいだろうか。三冊は重いな、と思いつつ、歩を進めていると、


「姫様、姫様!」


 とイザドラの叫び声が聞こえた。嫌な予感がする。

 本を借りに行くのをやめ、イザドラがいる育児部屋へ急いだ。


「どうした、イザドラ!」


 重い扉を開けると同時にイザドラを探す。そこには、侍女服を着た複数の女性が地面に這いつくばりながら何かを探していた。

 って母上も?


「何事だ、イザドラ。それに母上も」

「はっ、シェル殿下! 申し訳ありません、お見苦しい姿を……」

「あら、ごめんなさい、シェル。はしたない姿だったわね」

「母上、何があったのですか?」

「ええ、実は……」

「奥様、わたくしが説明いたします。――姫様が、この部屋から消えました」

「リンカがいなくなった?」


 詳しく聞くと、部屋に侍女数人、さらには母上が居たというのに、いつの間にかリンカがいなくなっていたという。


「消えるなんて……あり得ないだろう?」

「しかし、そうとしか……」

「とりあえず、状況を確認する。全員、母上も含めて消えることに気がつくまでの行動を言って欲しい」

「分かりました、シェル様」


 僕は持っていたノートに部屋の見取り図を書き、全員の行動を大まかな時系列にまとめていく。

 侍女達は僕の行動に唖然とするけれど、母上はあらあら、と言っていた。


「……分かった」


 全員の行動を書き出し、僕は結論を出した。


「リンカはこの部屋の外にいる」

「ええっ!」


 侍女たちが驚く中、僕はノートの見取り図に、赤い石筆で記していく。

 全員の死角を突き、誰にも気づかれないで、扉の前に辿り着く道筋を。


「おそらく、リンカは誰にも気づかれないままこの線に沿って移動し、どうやったか分からないが、扉を開けて外に出たようだ」

「そんな……ことって」


 愕然とする侍女達とイザドラ。これでも王家に仕える者達でかなり優秀なのだが、自信が崩れていくのが目に見えた。

 だけど、赤ん坊が大人である自分達の死角を突きつつ、ハイハイ移動で扉の外に出るなんて誰が想像出来るだろうか。

 僕も想像出来ない。だけど、情報は真実を話している。


「はい、イザドラ。驚く暇はありませんよ。部屋だけじゃなく、居館全体を探しましょう」

 ぱんぱん、と母上が侍女達に指示を出す。イザドラと侍女達は心を現実に戻しつつ、部屋の外に向かった。


 こうして、生後六ヶ月のリンカ探しが始まった。


 育児部屋の同階をまず探したが、リンカはいなかった。首を傾げる侍女達。

 では、下の階か? と皆が下り階段で移動するとき、僕の眼は、登り階段の方に違和感を見つけた。


 上り階段の霊素が、異様に薄いことを。


 樹の民は、樹の獣の中でも霊素を扱うことに長けた種族だったらしい。

 その血を引く木国の王家は、どの人間も霊素に関して何かしらの才能――【徴術】を持っている。

 僕の場合は、【樹の民の眼】と呼ばれる、霊素を見ることが出来る霊眼の徴術だ。

 この樹の民の眼は霊素の濃度や偏っている属性、さらに鍛えれば行使されている術の内容も理解できるらしい。

 その眼が僕に警告する。この上り階段で何かしらの術を使った者がいる、と。


 僕の喉が鳴った。――最悪の状況を考えて。

次回は5/16に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール

面白かったら、↓のリンクにて応援をよろしくおねがいします。
小説家になろう 勝手にランキング
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ