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研究バカは転生しても直らない!  作者: 犬ガオ
第一章 暴走研究王女、誕生

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研究魔は誘拐犯をスカウトしたい

50,000PV達成しました! いつもお読みいただきありがとうございます!

ブクマ&評価もありがとうございます!


世界観が違うエンエちゃん(結構好きな感想)に変わって、研究魔が世界観を取り戻します。


『やばい、涙でそう。ティッシュない?』


 残念ながら、綺麗なおべべか霊素を吸収するっぽいコートしかないです。

 あ、服で拭ったらだめだからね! イザドラ師匠の渾身の作品なんだから!


『こんな小さな頃から、訓練と任務に出されて……それでいて家族思い……ううっ』


 むーちゃんって涙腺緩いんだね。

 まあ、気持ちは分かるけど。


『いーちゃんも泣いてるくせに』


 これは汗だよ。汗。心の汗。

 私はコートで眼の端の汗を拭った。


『へー』


 疑いの眼差しを感じるよ。なんで自分に疑われてるの、私。

 というか、他人の深層意識を見るの、マジでヤバイ。

 この子の大変つらい半生をダイジェストでVR体験だよ。

 実体験そのままだから、ダイレクトに感情に来てやばいやばい。

 糸電話にAR機能付けたのは失敗だったかも。

 お陰で白黒一緒に感情を揺さぶられてるし。


『それだけ、この子がこの現状に追い詰められているってこと。走馬灯ってやつ』


 そうなんだよねー。

 そして追い詰めたのはだれであろう、この私!

 私の行動がまさか誘拐を自発させていたとは思わなかったよ。

 失敗失敗。


『……余計にこの子が可哀想になってきた』


 その点は申し訳なく思っております。

 今後はこのようなことがないよう十分注意します。


『無理』


 失敬な! まあ多分無理だけど!


 ただ、このおかげで結構重要な情報を得ることが出来た。

 この世界は(特に枝の外は)、そんなに平和じゃないってこと。

 私を狙う『組織』の存在がいるってこと。

 その『組織』の『施設』でこの子が育ったってこと。

 そして——この子が霊人種第一世代、つまり七英雄レベルのすごい子ってこと。


 事実、この子は本当にすごい子だった。


 見たこともない徴に徴術を持っていたり。

 光と陰という相反する属性相を持って、光と陰の術を操っていたり。

 (まさか光子化して光速移動するなんて、この世界でも普通やらないよね?)

 地球換算の九歳で『組織』の依頼をこなすスーパーチャイルドだったり。


 なにそれ、『ほしい』。


 スーパーが五つくらい付きそうなレアな存在に、私の研究魔としての収集心に火が付いてしまった。


 ああー、研究したいなぁー!

 うちの子にならないかなぁー!

 スカウト出来ないかなぁー!


『またいーちゃんのサンプリング癖』


 またっていうない、またって。

 一応、先生のときは我慢したんだよ?

 いつか絶対調べるけど。

 それにこの子、『組織』に不満があるっぽいし、そこを突いたらスカウト出来ると思わない?

 と、私は心の中で両手の人差し指をむーちゃんに向ける(イメージ)。


『なんで、誘拐犯をスカウトしようという発想になるの? 加害者だよ』


 え、だってこの子、いい子だし問題ないよね?

 自己犠牲にいきすぎな所はちょっと危なっかしいけど。

 誘拐も不可抗力だし。別に私に敵意があるわけじゃないでしょ?


『王族を誘拐なんてしたら、普通は極刑』


 はっ、そうか。

 ……どうしようね?


『知らないよ』


 うーん、お兄様から説得して貰うとか。


『お兄様はそんなに万能じゃないと思う』


 そりゃそうだよね。お兄様も子供だもんね。

 あ、それとも、スカウトに応じたら誘拐を無かったことにする?

 そうだ、『組織』や『施設』について供述してくれたら、司法取引で軽い罪にしてもらうとか。


『いきなり具体的な提案になったね』


 そりゃあ、目の前に特S級食材……でなく、希少検体……でもなく、えっと、そうそう、可哀想な女の子がいるんだよ!

 助けなくてどうするの!


『思いっきりこちらのエゴだけど……まあ確かに、『組織』から助けるのはやぶさかじゃない』


 よし、むーちゃんの言質を取った!

 じゃあ、早速話しかけようか、そろそろ私がこの子の胸で窒息死しそうだし。


『ちょっと待って、いきなり話しかけるとエンエちゃんが混乱する』


 糸電話を通話モードにしてっと。

 あ、ちょっと、そんなにきつく抱かないで、『痛い痛い』。


 声を繋げると、キッとした目つきでエンエちゃんが周りを見回す。

 あ、第三眼も開いて見てる。開いていないときは目立たないんだね、それ。

 『過去視』ってどんなのかな。通常の視覚と違うのかな。

 おっと、それよりも今は自分の生存のために、この胸による窒息死を回避せねば。

 胸に溺れるなんてことになったら、前世よりも酷い結末だよ。

 やはりエンエちゃん以外の巨乳は滅ぶべき。慈悲は無い。


『ちょっと、抱く力を緩めてくれないかなぁ? 圧倒的弾力で死にそう』

『……まさか』


 エンエちゃんが私の方を見る。黒目と星空のような時詠の眼が驚きで見開いている。


『えーっと、どうもはじめまして。リンカティア・エ・ル・シャドラこと、リンカです』

『王名を名乗った?!』


 さらに驚くエンエちゃん。ああ、王名って『シャドラ』のことね。

 シャドラの名に誓って、と言うのが王家での最上級の誓い方だから、私は絶対に使わないようにって、先生も言ってたっけ。

 名前にまで権力があるだなんて、やっぱり王家に力がある世界なんだなぁ。

 おっと、脱線脱線。


『エンエちゃん、だっけ』


 すでに知っている彼女の名前を出す。


『どうして、知っているの』


 あ、そりゃ疑問に思うよね。

 でも、説明するのも面倒だし、あえて無視して私は本題を話す。


『そんな『組織』やめてさ、私の元に来ない?』


 カモン、我がシャドラ家へ! 大歓迎の上、私のお付きに登用するよ!

 あとちょっと実験につきあってくれたらお小遣いもあげる!

 福利厚生も充実させるよ! 結婚後も安心して働ける職場です!


 そんな勢いで伝えると、エンエちゃんの視線が右往左往して、


『——どうして、うちは誘拐した姫様に誘われてるの?』


 という言葉と共に、エンエちゃんが後ろに倒れた。

 何がどうしたの、と彼女の丘を乗り越えて顔を見る。

 ……目を回してました。どうやら、脳内処理の限界を越えたっぽいね。


『だから言ったのに』


 むーちゃんの声が溜め息と一緒に聞こえた。


 えー。私のせい?

 ……どうかんがえても私のせいか。


 仕方ない、と私はコートから脱出した後、エレメンタルハンドでエンエちゃんを起こしてあげた。



お話? 進んでないよ?

お話すすんでないので、頑張って今週更新します……。

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