相談
恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしい。いくら杜若義彦に繋がらないようにすると言ったってこの登場の仕方は痛い。
「え、エージェント・ロゥ……リィ?」
目の前で困惑してるのは例の勇者君。困惑するのも無理は無いだろう。当たり前だよね。こんな可愛い美少女(半分幼女)に腕を掴まれたかと思ったらその女の子が〇ョジョ立ちしてるんだもんねぇ!もうこのやべーキャラで通してくしかない。
「さて無謀でお馬鹿な勇者君」
「第一声が罵倒!?」
「五月蝿いよ!あんなどう考えてもやばい力持ってる魔王に単騎突撃しようとしてる君は大馬鹿者だ!そんなんだから七大罪に自分の恋人たち取られるんだ!いいね!」
「うぐ……それは……いや、俺は勇者として……「だぁぁぁまらっしゃい!」あてっ」
僕は鳳凰院の頭を叩く。さっきまで足元にしかなかった霧が腰の辺りまで来てる。時間が無い。
「いいからまずは一旦退くよ!君のせいで計画がめちゃくちゃだ!」
「な、え、ちょっと!?」
僕は無理矢理鳳凰院の手を引っ張って城から脱出しようとする。そしてそれを阻むように狼型の魔族が現れるが黒っぽい霧とは違う色のガスのような物に包まれて一瞬で氷結した。マジかよ。
「な、なんだアレ」
鳳凰院は今の一瞬をしっかり見ていた。魔法とは違う異常なものを視認し、思考が一瞬止まっている。
「いいから!あんなのがすぐこの城内に沢山沸くから、逃げるよ!」
「わ、わかった。じゃちょっと失礼」
鳳凰院もすぐにこの状況が不味いことに気付いたようですぐさま異次元の跳躍力で跳び、窓を割ってこの城を脱出した。
「うぇ?」
僕をお姫様抱っこして。
「ちょっとぉぉぉぉ!?」
冗談抜きで死ぬかと思った。
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「な、なんてことをするのさ……」
「はは、悪いね、あの状況じゃあれが最善手に思えたんだよ」
確かに悪くない考えだったけど……
今僕たちは城を飛び出して城下町に隠れてる。民家の一つに調度いい地下室がありそこに隠れている感じだ。
「これだからイケメンチーレム野郎は嫌なんだ」
イケメン行為を平然とやってのける。そこに痺れないし憧れもしないけどさ。
「で、説明してもらえるんだよね?君が一体何者で、あの霧が何だったのか、そして君が握ってる魔王の力のことも」
鳳凰院は早速本題に入ってきた。ただでさえ張り詰めていた空気が更にきつくなる。
「……私はエージェント・ロゥリィ。とある財団のエージェントだ。君達と同じように世界を渡る技術でここに来た」
「な……!?」
嘘です。SCP財団お得意のカバーストーリー、『更なる異世界からの来訪者』とでも名付けようかね?眼鏡のお陰で僕が誰だか分からないようになってるけど相手は正統派チート勇者。僕が杜若義彦だとバレないよう細心の注意を払う必要があるだろう
「あの霧は私がこの世界に来たときに付与された力。我々財団が確保し、収容、保護を行っている存在__SCPを呼び出す力、その一部だ。例えばあの霧はSCP-224というSCPの一部だ。本体は霧を発生させる壺だが、それから発生した霧の中に更に謎のガスがいる。そいつがあの狼型の魔族を一瞬で凍りつかせたんだ」
「あれで一部……?あんな魔族を一瞬で凍りつかせることなんて俺たち召喚勇者の魔法使いでも簡単には出来ないぞ?そんなのおかしな力を持ったのが一体どれほどあるんだ?」
「数えきれないよ。ぼ……私だって全てを把握してる訳じゃない」
「嘘だろ……あんなのが数えきれないほど召喚できるってことだろ……?そんなの俺らよりよっぽど強いじゃないか」
「デメリットだってあるよ?」
「いや……まあそうだろうけど、メリットの方がでかいで……しょ……?」
僕の話に反論しようとしたところで鳳凰院がなにか気付いた。
「ねぇ、もしかして今あの城の中にある霧、君は一瞬で消せるの?」
「一時的な足止めはできるだろうけど、無理」
そう、いつの間にか一応の足止めができるスキルが解放されていた。ステータスプレートの最後の文字化けのスキル。
《封印:SCP》
多分これが僕がSCP-444-jpの影響下に陥らなかった理由なんだと思う。大幅に減少するPOW値の代わりに特定のSCPの活動を停止させる。精神汚染や認識災害、ミーム系統のものならいくらでも停止させることが出来そうだけど普通に効果のあるマジックアイテム系にはやったこと無いからわからない。
「君自身にも制御できない力ってことか……」
「そういうこと。そのSCPの効果をよく知って扱う必要があるんだ」
「じゃあ俺達に今できることって」
「あの霧が城の中に充満して魔王ごと魔族が凍りつくのを祈ることだね」
「嘘だろ……」
こんな地味で卑怯な魔王討伐があっただろうか?
「まぁ本体にたどり着けさえすれば事後処理は簡単。たどり着くのだって氷系統の魔法が使える人と一緒にいけば何とかなるはず――」
その瞬間、何かが爆発する轟音が響いた。




