ラストバトルへ
「ん……ぐ……」
頭がずきずきする。確か僕は何かのSCPについて話をしようとして、それで――
「ヨシヒコ!起きたな!?なんだこれは!どうなっている!?」
僕が目覚めた途端扉が破壊されるかのような勢いでこじ開けられる。入ってきたのはリーゼロッテさんだ。
「り、リーゼロッテさん……?何を突然……」
「お前の言っていた王冠の影響か!?民の一部が突然暴動を始めた!皆口々に『魔王陛下万歳!』とわめき騒ぐんだ‼」
「え――」
「とりあえず早く来い!外の様子を見ろ!」
僕はリーゼロッテさんに抱え上げられ連行される。小柄な女の子の体のせいで抵抗できない。訳もわからず運ばれる。そして帝都全体が見えるテラスまで連れていかれた。
「あれを見ろ。魔王陛下……の放送だ。奴等遠距離で映像の魔法を使ってきた。困惑気味だった民達は陛下の……ああ!ま、お、う、の!あのきらびやかな……もう!あの王冠を見た途端おかしくなったんだ」
「あ……」
あ、思い出した。確か僕はリーゼロッテさんにSCP-1561の事を話そうとしていたんだ。それで、何故かもう既に僕は汚染されていて、怖くなって、発狂した。
よくわかんないけど、《緋色の鳥《SCP-444-JP》》の精神崩壊すら押さえている僕の体が、負けたのだ。
リーゼロッテさんも、汚染されてる。このままだと、危ない。早く魔王を倒さないと、人類は、負ける。
魔族の力ではなく、人の内乱によって。
「リーゼロッテさん」
「なんだ?」
僕はリーゼロッテさんからするりとおりて彼女に話しかける。
「今すぐ魔王の力について説明します。これを他の勇者、特にそろそろ来てもおかしくない本町という勇者と鳳凰院に伝えてください」
「……?待て、お前はどうする気だ!まさか貴様が一人で魔王を倒すなどと言うつもりは無いだろう⁉」
「駄目です。今の魔王の力は、《SCP-1561》というSCPによる洗脳能力です。これ、この映像越しだから意思の強い人は魔王陛下に対する言葉に敬称を強制的に付けさせられるだけですけど、生で、つまり魔王と相対したらゲームオーバー。喜んであの方の下僕となります」
「なんだその力は……!ならお前もわざわざ捕まりにいくようなものじゃないか!」
「方法はあります。何、すぐ終わりますよ」
「ふざけるな!お前はどうせまた自分を犠牲にするつもりだろう‼私を助けたあの時みたいに!」
リーゼロッテさんは僕を抱えてでも捕まえようとしてくる。
「大丈夫ですよ保険はかけていくので。僕は不死身になれますから」
「どういう……」
「それじゃ行ってきます」
そう言って僕はテラスから飛び降りた。
「待て、行くな‼行かないで‼ヨシヒコー!」
今すぐこの現象を止めるには今召喚出来ない筈のものを、召喚しなくてはならない。
「SCP-429《時計式瞬間移動》!」
その呼び掛けに、SCPは答えてくれた。腕にまとわりつく魔法陣。そのまま腕にずっしりとした重みが加わった。
「目指すは魔王の所。一直線!」
目が見えなくなる?知るかそんなの。僕は死なない。死ねない。誰も、死なせない。
僕はレバーを、起動した。




