閑話 王は目覚め、国は出来る
お、お久しぶりでーす……
ごめんなさいほんと色々考えてたらこんなことに……
ここは元帝国領属国カラフト王国王都、アルトの故郷だ。帝国の属国となっていたが帝国とは良好な関係を築き平和に暮らしていた。だがすでにもとののどかな王国の風景は破壊し尽くされ、陵辱の限りを尽くされた国民の死体が、廃人のように道端に転がる人間の形をしたものがあるだけだ。
そこに異形の者達――魔族が集まっていた。そして、その魔族を統べる王、魔王もそこに来ていた。
『魔王陛下、謁見!!』
一体のタコのような触手の魔族が風属性魔法を行使し王都全体へと声を届ける。それだけで王都にいた魔族達はざわめき、雄叫びをあげるものさえいた。
「諸君、よくここまで来た」
そして、その声は一つの静かな声で止められた。
王都の中で最も大きな建造物、王城。その謁見の間にて一人の男――魔王が演説を始めた。その光景は様々な魔法の組み合わせによりまた王都中に展開された。
「ここは我々が求めてきた土地だ。元は我々が拓き、繁栄させ、平和に暮らしていた、理想郷だった」
魔王の言葉と共に展開されていた映像が変わり王都の外の草原の光景が広がった。その光景を見て涙を流す者達すらいる。
「だが!突然現れた奴等――人間どもによって我らの土地は奪われた!肥沃な土も、清潔な水場も、国も、故郷も、全て!」
魔王は叫び、その声に呼応するように魔族達もまた騒ぎ出す。
「そして奴等に負けた我らはこの大陸から放逐され、異形へ堕ち、苦しい生活を余儀なくされた。その苦しみから逃れる『死』すら我々にはなく、悠久の時を刻むこととなった」
全身触手の魔族が自身の触手を眺め、涙のようなものを流す。岩の身体となった魔族が愛する者の暖かさを感じられなくなったこの身体を恨んだ。その悲しみを壊すように魔王の言葉が響く。
「だが!もうこの苦しみは終わった!この国が、我々の復讐の第一歩だ‼さぁ立ち上がれ民衆よ!友よ!建国だ‼今、ここに『魔帝国』建国を宣言する!諸君、戦いの狼煙を挙げろ‼雄叫びを挙げろ!」
そしてその声が届いた瞬間、カラフト王国の元国民の身体が弾け始めた。死体も、未だに魔族に見つからずに隠れていたもの達すら残さずに弾け飛ぶ。弾けとんだ身体から紫色に輝く光が王城へと飛び、魔族の魔法使いの元へと集まる。光の正体は魔力だった。特定の生物から魔力を根こそぎ奪い取り、殺す禁呪だ。
魔族達はそれを元にまた魔法を唱える。そして、使われた魔法は――
先程と同じ、映像の魔法だ。
だが、それはこの王都だけでない。この大陸全土に映像が広がった。写しているのは、
――黄金のきらびやかな王冠を被った魔王の姿。
「この大陸全土に住まう人間どもに告ぐ。我々はこれより最終決戦に入る。これまでの小競り合いなどではなく本格的な戦争だ。だがこの高貴なる我に屈し、服従を誓うと言うならば命の保証はしてやろう。懸命な判断を願っているぞ?」
始めこそはどの国の政府も「何をバカなことを」と言い、魔王との最終決戦に臨む準備を始めようとする。だが、本当の恐怖は、すでにばらまかれていた。




