決別、あるいはSCP-249《どこだかドア》
お久しぶりです。お待たせしました
『杜若くーん!』
そこにいたのは、本町君だった。どうやら僕が置いてかれてからずっと探しているらしい。
薄暗いダンジョンで、彼の声だけが木霊する。
ここで、彼本町祐介の話をしよう。
身長約160センチメートルと小柄、一見女子に見られることもある。
彼は一言で言えばお人好しだ。底抜けの、がつく。
弁当を忘れた人がいれば自分の弁当を分けてあげるし、不良生徒がパシりに使おうとすれば喜んで行く。
何がなんでも他人のために動くのが第一な人間だ。その性質のせいで気味悪がられ、いじめられた。
それでも彼は笑って言うのだ。
これも誰かの為になっている、と。
異常な程のお人好し。それが彼だ。
(しめた!本町君なら喜んで僕を逃がしてくれる!)
僕はこっそりとガッツポーズをとる。
ここでさっさと本町君と合流して説得、脱走だ。なんかよくわかんないけどチートの中のチートになってる彼なら僕を守りながら逃がしてくれるはず。そう思い、僕は彼に近づこうとした。でも、
「おい」
後ろから肩を掴まれた。
(はー)
振り返ろうとしたら思いっきり殴られた。ぶっ飛んだ。SCP-408がざわめく。
(動いちゃダメ!)
必死にSCP-408に語りかける。何とか落ち着かせることに成功した。
殴られた方向を見る。そこには、
「そこにいるやつ、誰だ?」
あの本町君が助けに来たとき彼と一緒にいた、小野寺君だった。
「小野寺君?」
「本町、警戒しろ。ここになにかいる」
(マズイマズイマズイ!)
小野寺信二。クラスの中ではあまり目立たない立場だけどかなりの合理主義者。槍を構えてじっとこちらを見ている。
(どうする?このまま目の前に現れても脱走の手伝いをしてもらえるか?いや、無理。)
小野寺君は合理主義者だ。絶対本町君と拘束してくる。なら、
逃げる。
「SCP-249《どこだかドア》」
「な……!?」
「うわっ!?」
突然構築される魔法陣。二人は驚いている。
構築された魔法陣から召喚されたのは一枚のドア。
SCP-249《どこだかドア》
オブジェクトクラス Euclid
《神出鬼没》
扉を開くと850メートル以内のドアに接続する。また、500回毎に扉を開くときその制限は解除され、ランダムな場所へ転移する。 現在使用回数・・・4999回目
僕は迷わず扉を開く。
『カウントは5000になりました。ランダムな場所へ転移します』
頭に響く電子的音声。その時の音声がSCP-408にも聞こえてたのかSCP-408が動揺してちょっと透明化が解ける。
「杜若!?」
「杜若君!?」
やべ、バレた。いいやそのまま行っちゃおう‼
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「小野寺君……今の……?」
「ああ……あれがあいつのスキル、なんだろうな」
「お城で言ってた『SCP-■■■■-AW《SCP-foundetion》』?」
「よく覚えてるな」
「まぁね」
残された小野寺と本町は突然現れ、去っていった杜若の能力について考えていた。
「確か、『不思議な力を持つ物、生物を召喚できる』スキルだったはず」
杜若は自分のスキルをペラペラしゃべっていた。危機意識が無さすぎである。
「今のところわかるのは『透明化』と『転移』っぽいやつだな」
「うん……」
「どうした?」
「杜若君大丈夫かな?お金もないのになにもわからない異世界で一人で生きていけるのかな?」
彼らは知らない。もともと杜若は今回のダンジョン攻略で力を見定められていたことを。そして結果ではそのままそこらの街に置いていくつもりだったことも。
「まぁそれはあいつの自己責任だ。それよりどうする?あいつの事、馬鹿正直に報告するか?」
「いや、黙っておこう?」
「何?」
本町の意外な発言が小野寺を驚かせる。
「何だか放っておいた方が彼にも、僕たちにもいい気がする」
「《直感》か?」
「うん」
このとき、本町が手に入れていた《直感》スキルが発動していた。カンが鋭くなるスキルである。そのスキルが『奴はヤバイ』と叫んでいた。
「分かった。だが、あいつのスキルには注意する必要があるだろ」
「そうだね、いろいろと調べる必要があるかも」
二人は来た道を戻り、話し合う。
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ここはヴラジ帝国王城の大浴場。その女湯。そこには一人の姫と――――
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
「ぶへぇ!?」
侵入者が、いた。
SCP-249《どこだかドア》
オブジェクトクラス Euclid
扉型のSCP。
扉を開くと850メートル以内のどこかのドアに接続し、移動できる。
また、500回毎に距離を無視して扉でもないランダムな場所へ転移する
http://ja.scp-wiki.net/scp-249