試練の洞窟 第二層
僕達は第二層へ通じる階段を見つけ、降りる。
「これで……二層っと」
僕達は第一層を特に問題なく踏破した。出てきたモンスターはネズミや大コウモリくらいでさしたる苦戦もせずに勝てる。罠も軽く観察すればわかるようなお粗末なものだった。
「一層は楽勝だったね」
僕に続いて降りてきたナルメアちゃんが言う。
「あんまり油断しちゃ駄目だよ?一応ここDランク昇格の基準になるダンジョンなんだから」
「わかってるわ」
「ならいいけど」
多少の傷はナルメアちゃん自身で治せるけど重症はそうではない。ここはダンジョン。何が起こってもおかしくない。と、道の先から早速何かが動く音が聞こえてきた。
「ん?なんか来たね」
「とりあえず戦おう」
ナルメアちゃんが二振りの剣を抜く。二刀流だ。どうせなら二振りとも使おうという判断らしい。そのせいで剣を振れるようになったのがつい最近。その代わり《二刀流E》のスキルを手に入れたようだけど。
「ギチギチギチッ」
奥から現れたのはなかなかにでかい蟻のモンスター、ジャイアントアントだ。初めて入ったダンジョンにもいたような記憶がある。威嚇するように持ち上げた頭が僕の頭と同じ高さにある。
「ソフィアはそこで見ててよ?」
「わかったよ。気を付けてね?」
ナルメアちゃんはジャイアントアントに向けて走り出す。ジャイアントアントは寄ってくるナルメアちゃんに標的を定め右足の鋭利な鉤爪を振り下ろす。ナルメアちゃんはその鉤爪を難なく回避し、関節部から左の剣で切り落とす。
「ギィィィ!?」
切り落とされた右足を振り乱すジャイアントアント。ナルメアちゃんはそこから右回転。その途中に左の鉤爪も切り落とす。
たまらず後退したジャイアントアントの首に二振りの剣を鋏のように交差させ押し付け、首を切断した。残された体は崩れ落ち、足が何回かもがいたあと、動かなくなった。
「どう?」
得意気な顔でこちらを見るナルメアちゃん。僕はそれを見て剣を抜き、
「だから油断しちゃ駄目だって」
ナルメアちゃんの後ろで今まさに鉤爪を振り下ろさんとしていたもう一匹のジャイアントアントの鉤爪を受け止める。
「あ……ごめん」
状況を理解し、顔を青ざめさせて謝るナルメアちゃん。
「謝るのは後で良いからやっちゃおう」
「う、うん!」
僕はそのまま鉤爪を弾き飛ばし、僕の小さな体から出る予想外の力にたたらを踏むジャイアントアントの首にナルメアちゃんが剣を振り下ろし止めを刺す。
「ふぅ」
今度こそ周囲に敵がいないことを確認して一息つく。
「お疲れ。剣もよく振れるようになれてるね」
「ヨシヒコ……ごめん」
だから今僕はソフィアだって。どうやら僕の名前を言っちゃうくらい余裕が無い様子。その顔は後悔で一杯で今にも泣き出しそうだ。
「大丈夫大丈夫。次気を付ければいいんだから。そんなに落ち込まないの、ね?」
僕は腰からナイフを取り出してジャイアントアントの頭をかっさばく。脳みその辺りをぐちゃぐちゃかき回して魔石を取り出す。ジャイアントアントは空豆くらいの大きさの魔石を持っていた。
「失敗して、学んで、強くなる。それでいいじゃん」
僕はあらかじめ召喚していたSCP-109《無限水筒》で魔石と手を洗いながら励ます。そして振り返り、笑顔で続ける。
「大丈夫、死なない限り僕達はいくらでも成長できる。僕はそう簡単には死なないし、君も死なせないから」
「……!うん!」
一気に表情が明るくなったナルメアちゃんはこっちに駆け寄ってくる。そして僕を脇から持ち上げ笑顔で言う。
「私、絶対強くなる!それで、今度はソフィアちゃんと――ううん、ヨシヒコともっと冒険をする!」
「Sランク冒険者の夢は?」
「もちろんなるわ!」
「なら、進まなきゃね。僕達は今まさに冒険してるし、Sランク冒険者にもなろうとしてるんだ」
まだここは二階層。冒険はまだ始まったばかりだ。




