再びダンジョンへ
お久しぶりです。お待たせしました
「ダンジョンいかない?」
本町君達との遭遇があった次の日、朝早い宿の部屋の中で二日酔いも覚めた僕にナルメアちゃんがそう提案してきた。
「んー……ダンジョンかぁ……」
初めて入ったダンジョンのことを思い出して少し複雑な気分になる。ダンジョンのトラップ。普通の場所にいる奴と全く異なり侵入した人間を殺すことだけを考えているモンスター。おもわずぶるりと震えてしまう。その様子を見てナルメアちゃんが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫?」
「い、いや、大丈夫。昔ダンジョンでトラップにひっかかっておいてかれたことがあってね。ひどいパーティだったよ」
「酷いね!?信じられない!」
全くだ。それもその犯人がこの世界で勇者と呼ばれる存在なのだから世も末だ。
というより冒険者になる前からダンジョン入ってることに違和感覚えないのかな?
「まぁ、でも問題ないよ。最初は比較的簡単なダンジョンにいくつもりなんでしょ?」
「まぁね……ダンジョンではクズ魔石でも良い値段で売れるし。あとヨシヒコもダンジョンとか調べたいんでしょ?」
「!?」
もしかして、昨日立ち聞きされちゃった?
「ヨシヒコ、勇者様と知り合いだったんだねぇ……?それに魔族の事とか……知らなかったなぁ」
「ああー……えっとぉ……」
僕は思わず目をそらし、しどろもどろな反応をする。ナルメアちゃんは僕のその反応を見て「ふふっ」と笑う。
「あはは、まぁいいよ。また後でちゃんと教えてね?」
「う、うん」
「それよりも今はダンジョンの事だね。私が考えてるのは『試練の洞窟』っていうダンジョン。全部で五層のダンジョンで攻略自体はされてるダンジョンだよ。最下層のボスを倒すとDランク冒険者として認められるんだって」
この世界のダンジョンは成長する。ダンジョンの元となるダンジョンシードが生物に付着し、寄生。寄生した生物の魔力を素にダンジョンコアに成長する。ダンジョンとなったダンジョンシードは元となった生物のねぐらを中心にダンジョンを生成し始める。
生成されたダンジョンは寄生した生物の生態、思考パターンなどから様々なものを生成する。
それは罠、内部構造、物品、そしてモンスター。
生成されたものは様々なものを呼び寄せる。宿主と同じ生物、宿主を食料とする生物、人間など、様々だ。
そしてダンジョンは誘い込まれた者達がダンジョン内部のモンスターや罠によって死亡すると死亡した生物の死骸に残っている魔力を吸収する。その際肉体やその周囲の物品も分解され、全て魔力や、新たな獲物を呼び寄せる記録になる。ダンジョンはその吸収した魔力を一度宿主に送り込む。送り込まれた魔力は宿主の体内で宿主の魔力に変わる。そしてその魔力は宿主が充分生存できる量の魔力を残してダンジョンコアに吸収される。そうして入った魔力でダンジョンは殺した獲物から手に入れた新たなデータをもとに餌を作り罠を作りまた大きくなっていく。
つまりダンジョンは宿主の魔力で成長し、誘い込んだ獲物で知識を得、凶悪さを増していく。また、ダンジョンコアは宿主の魔力でしか成長できない。だからダンジョンシードに寄生された生物は『ダンジョンマスター』と呼ばれる。
ダンジョンマスターは基本老いることはない。老化で宿主が死んだらダンジョンが成長することができなくなるためダンジョンコアが《不老》の呪いをかけるのだ。
だが、不死ではない。ダンジョンマスターは剣で切られれば普通に死ぬ。その時ダンジョンコアはダンジョンマスターから貰える成長するための魔力を失う。ダンジョンマスターを失ったダンジョンコアは成長することができなくなる。
では成長できなくなったダンジョンはどうなるか?
ただ稼働し続ける。
ダンジョンコアは成長することはできなくなるがそのままの状態を維持することは出来る。ダンジョンに吸収された死骸の魔力を素に新たな餌を準備することは出来るのだ。そのためダンジョンマスターを討伐、つまりダンジョンを《攻略》したあとはダンジョンは攻略された時点の機能しか行えなくなる。
一定の機能しかできなくなったダンジョンは様々な素材や資源の獲得場所として人間に利用されるのだ。
「そうなんだ。そのダンジョンはどこに?」
攻略されたダンジョンは何が出るかすでにわかっているため比較的に安全に攻略ができる。多分今の僕達ならそう簡単に死なないだろう。
「ここからそこまで遠くないよ。多分三日も有れば攻略出来ると思うよ?」
三日か、ずいぶん大きく出たな。この前ようやく剣に振り回されないようになったっていうのに。いや、彼女の本領は回復魔法なので剣を振れるようになっただけ良いのか?
「わかった。ナルメアちゃんのレベル上げにも調度良いしそこに行ってみよう」
「さっすがソフィアちゃん!話がわかるぅ!」
パチン、と指を鳴らすナルメアちゃん。この子も元気になったなぁ。




