SCP-113《ジェンダースイッチャー》
何故か女の子になっているヨシヒコとナルメアが出会う数分前。ヨシヒコはベッドの上でナルメアのトラウマについて考えていた。
(ナルメアちゃんが男に対してトラウマを抱いてる。多分これから先それは酷い欠点になる)
(それはSCPでの治療が可能ではあるけど、その方法はきっとあの子は絶対に嫌がるし、何より色々と危険だ)
そう、確かにSCPによるナルメアちゃんの精神治療は可能だ。
SCP-590《君の痛みを知る人》。彼は人のケガ、病気、精神異常など体に起きた不調を全て自分に写してしまう力をもっている。しかし、彼はそれ以外ただの人間だ。
この力を使えば確かに治療はできる。だが、その自分の精神異常を写した後のSCP-590を見たら?
恐らく彼女はまた傷つくだろう。それに彼は現在三歳児並みの精神状態。それが更に酷くなるなんて僕も見たくない。
なら――
「僕が女の子になろう」
そうするしかない。自力での克服なんてあんな辛い経験からは不可能に近い。なら、そのトラウマを刺激させないようにすれば良い。性別が変わるからもう帝国に作ってもらった偽造ステータスプレートは使い物にならないだろう。申し訳無い。
「SCP-113《ジェンダースイッチャー》」
いつも通りの魔法陣の収縮と召喚。SCP-682の時のように魔法陣の色は赤くはなっていなかった。何か条件でもあるのだろうか?
召喚されたのは赤碧玉の欠片。それは物理法則を無視して宙に浮いていた。そしてステータスウインドウが表示される。
SCP-113《ジェンダースイッチャー》
オブジェクトクラス Safe
スキル
《TS》
このオブジェクトを手にした生物の雌雄を逆転させる。
業が深そうなオブジェクトだ。僕は迷わず手に取る。
「ぐぅっ!?」
手にしたとたんにSCP-113は僕の手に沈み混む。僕の体内に入ってきたのだ。
そしてすぐに全身を刺すような痛みが襲う。吐き気がする。胃の中がひっくり返りそうになる不快感を味わいながら耐える。
20秒経過。全身の痛みが激しくなり、言葉で言い表せない苦痛が僕を襲う。
更に1分。それで全て終わっていた。
「うぅ……」
痛みから解放されて怠い体を持ち上げる。妙に視点が低い。
手足を見ると男にしては細かったものが更に細くなって色も白くなっている。足を見たときに長い髪が一房ぱさり、と垂れてきた。髪はさらさらで、絹のようだ。胸は――ささやかだが、ある。何故か無性に悲しい。足元にはいつのまにか分離したSCP-113が落ちていた。
「あ、あー、あー。SCP-113《収容》」
鈴の音のような声で分離したSCP-113を《収容》する。SCP-113は魔法陣に包まれ消える。
「えーっと?」
改めて全身を見る。身長は150センチくらいまで小さくなったようだ。体は全体的に線が細くなり、部屋に持ってきてもらっていた水桶に反射させて見た自分の顔はなかなかの美少女。出るとこは出ないで引っ込むところは引っ込まない幼児体型。SCP-113は変位するとき一次、二次成長を経た状態で性別が変わるはずなのだが?
「なぜだ……!」
僕は無性に悔しくなって両手を地について嘆いた。確かに僕は何回か鍛えてみても全く筋肉がつかなかったがそれが女性になったときの体型にまで作用するとは……!
「ま、いいか」
気にしてもしょうがない。服が体が小さくなったことにより服が少しだぼついているが裾を捲ったりして対応し、僕はナルメアちゃんの部屋に向かった。
そして今に至る。
「ど、どうやって女の子になったの!?」
ナルメアちゃんは驚きの声をあげて僕に聞いてくる。僕はその問いに少し悩む。SCP《jobスキル》の事はあまり言ってはいけないと考える。そこで、
「家のちょっとした魔道具をね。勝手に持ってきちゃったものだから秘密だよ?」
人差し指を口元に当てて「しー」とジェスチャーする。あざとくウィンクなんかしてみる。
「ぷ……あははははは!」
「むぅ、なんだよー」
それを見てナルメアちゃんはお腹を抱えて笑う。僕は頬を膨らませてナルメアちゃんをつついてみる。
「ふふふふふ」
ナルメアちゃんは何もおかしな事は起こらず笑い続けてる。
「よかったぁ」
思わず声が漏れる。ナルメアちゃんは不思議そうにこちらを見てくる。
「どうしたの?」
「僕が触っても大丈夫そうだねぇ」
僕はナルメアちゃんに抱きついてみる。男だったら犯罪だけど今は女の子だからセーフ。SCP-113を使ってから何か性格が変わった気がする。
「そうだね。ねぇ、ヨシヒコ?これからもよろしくね」
抱きついた僕にナルメアちゃんはそう微笑んできた。
「もちろん!これからもよろしく!」
SCP-113《ジェンダースイッチャー》
赤碧玉の欠片のような見た目のSCP。触れると自身と融合し、融合した存在の性別を逆転させる。要はTSさせる結晶体。
ストーリー進んでませんね・・・




