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ダンジョン行こう


 この世界に来て一月経ちました。スキルについては誰にも言ってません。言っても「えすしーぴー?なにそれ美味しいの?」って言われるだけです。寂しい。


 そして現在。困ったことに無能扱いされてます。訳のわからない存在を召喚できるjob名とそのスキルは気味悪がられ、ステータスもPOWの値がおかしいだけで他のやつらとあんまり変わらない。僕も何が起こるかわからないから迂闊にスキルを発動できない。普通のスキルも[検閲済み]ってなっててわからない。新たなスキルも手に入ってるのかどうかすらわからない。何でだ。


 そして困ったことにクラスの中に自分のチートに酔った奴等が出てきた。騎士団に混じって戦闘訓練を行うのだがその時新兵の人に絡むのだ。他にもメイドなどの女中の人達にナンパけしかけてみたりやりたい放題。困ったやつらだ。こいつらは「異世界チート症候群患者」とでも呼ぼう。


 不味いぞこの事態。そんな時にお姫様が朝食の時間にとんでもないこと言ってきた。


 「皆さんにダンジョン攻略してもらいたいと思います」


 ダンジョン、あるんだ。


 更に一週間後。本当にダンジョンに来た。目の前は洞窟。騒ぐクラスメイト。あ、突撃してった。追いかけなきゃ。


 洞窟の中は暗く、女子の中の何人かが光魔法で明かりを灯す。少し視界が確保され、全員がゆっくりと警戒しながら進む。


 目の前に現れるモンスターを片っ端から倒していくクラスメイト。僕のところには来やしない。かといって倒しにいけば「邪魔するな‼」と蹴り飛ばされる。理不尽だ。


 「つつ...」


 蹴り飛ばされた痛みを押さえて立ち上がる。そしてまた隊列に戻ろうとしたときそれは起こった。


 ビーッ!ビーッ!ビーッ!


 なんだか電子的な警報音が前方から鳴った。そちらの方を見てみるとなにやらクラスメイトが言い争っている。


 「お前何やってんだ!!」

 「わ、悪い!」

 「おいおい早く止めねぇとやばいぞ⁉」

 

 なにやら宝箱を見つけて無警戒に開けたらトラップに引っ掛かったらしい。警報タイプのトラップで、周囲からモンスターの足音が聞こえてくる。


 「やべぇやべぇやべぇ!」

 「ど、どうするの!?」

 「戦闘準備しろ‼」

 「本当、やめて欲しいわ...!」


 押し寄せてくるモンスター。俺も必死になって抵抗しようとする。だが、


 「ジャマだ‼」


 また蹴っ飛ばされた。こういうときこそ協力しようよ...


 「うわぁぁぁ!」


 あ、一人モンスターの波に呑まれた。ありゃ死んだかなぁ。つーかもうきついな。いっそのことSCP-297《鋼入りのダン》(超高速振動できるバ〇ブ。何でも原子レベルに分解するぞ!)でも出してしまおうか?いや、やめとこう。そんなことを思ってたら、希望が現れた。


 「皆!大丈夫!?」


 新しく二人の男子が現れた。本町と小野寺だ!いつの間にかおいていっていたらしい。さっきモンスターに呑まれた男子を抱えてる。でも、本町はこの世界の一般人程度の力しか持っていない。このクラスのなかでもっとも弱い本町に何ができるのだ?


 「あとは僕に任せて!」


 そう言って駆け出す本町。その姿は信じられないほど霞んで見えた。


 速すぎる。なんだあの早さ。目で追っても残存が見えるだけだ。

 本町は瞬く間に敵の包囲網を突破してクラスの奴等の逃げ道を作り出した。


 「早く逃げよう‼」


 ハッとした鳳凰院が全員に呼び掛け、撤退する。俺も一緒になって逃げようとしたが、


 「雑魚は引っ込んでろ!」


 と、吹っ飛ばされた。え、ここで?と思う間も無く僕はモンスターがいないギリギリの位置に不時着する。その上、


 「お前はそこで囮になってろ!無能が‼」


 おぉーっと異世界チート症候群の土魔法使いが僕を土の檻で囲んだーっ!?


 「え、ちょ、ちょっとぉ!?」

 「ははっお前にゃちょうどいいかもなぁ‼せいぜいしっかり餌になって時間稼ぎしてくれよぉ!」


 マジかよ。


 こうして、僕は魔物の群れに対して孤軍奮闘しなくてはならなくなった。


 

SCP-297《鋼入りのダン》

オブジェクトクラス~Safe

透明な内部機構の見えるバ〇ブ。電源が超小型原子炉でできていてスイッチが切、弱、中、強、自殺の五つある。自殺のスイッチにするとこのオブジェクトは超高速振動してどんなものでも原子レベルに分解する。


SCPwiki SCP-297《鋼入りのダン》より

http://ja.scp-wiki.net/scp-297

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お読みいただき有難うございます!
ストーカーの転生憚~前世では守れなかった貴女を、今度こそ~
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