SCP-408《幻想蝶》 2
「え……?」
僕はSCP-408を召喚したはずだ。なのに、目の前にいるのは、幼女?
幼女は僕を見て、口を開く。
「うそつき」
喋った。しかもきれいなまだ幼い声。唇が震えてる。心なしか目に涙が溜まってない?
「カキツバタの嘘つきぃぃぃぃ!」
「いいっ!?」
キーンと耳に響く声。もうなんだ、訳がわからない。
「ちょ、ちょっと待って落ち着こうね、え、SCP-408?」
「そ、その子がお前の言う隠密系の召喚物?なのか?」
リーゼロッテさんも突然の幼女に動揺しっぱなし。
とりあえずなんとかSCP-408らしき幼女に近づく。
「ご、ごめんSCP-408。ちょっとあのあと色々あってね?大丈夫。約束は忘れてないから、ね?今お城の人達に御菓子持ってきてもらってるから!」
「ぐすっ、本当?」
ぐずり始めてる幼女。こいつ本当にSCP-408か?
なんとかSCP-408を宥めることに成功したあと、皇帝陛下と話の続きをする。
「で、その子がSCP-408と?」
皇帝陛下はメイドさんと可愛らしくスコーンを頬張っているSCP-408を見ている。SCP-408はスコーンの味に目を輝かせる。可愛い。
「はい、色々な物に擬態が出来る蝶です待って嘘じゃないから近衛兵の人達に剣を抜けさせないでお願い」
「黙れロリコン」
「うそん!?」
これはひどい。SCP-408に助けを求めます。
「ちょっとSCP-408、一部分で良いから擬態といて!お願い!」
「やーだー」
可愛らしく僕を見てふてくされる幼女。いつの間にかメイドさんに庇われるように立たれている。
弱った。このままでは幼女拉致誘拐で牢屋に再突入することになってしまう。
冷や汗をかいているとSCP-408が調子にのってふりふりさせてたドレスの裾にティーカップが引っ掛かった。
「あ」
ばしゃり、とティーカップの中の紅茶がSCP-408に掛かる。
「ぴっ」
可愛らしい悲鳴を上げるSCP-408。それと同時に擬態も解かれた。謁見の間に舞う大量の蝶。虫苦手の人がいたらちょっと悪夢だな。
「な、これが……」
「はい、SCP-408《幻想蝶》。擬態を得意とする蝶の群れです。まぁこの子達も交渉しないと力は貸してくれませんし魔族も利用出来ないと思います」
念のためSCP-408に聞いておこうか。
「SCP-408、僕以外に誰かにその力使った?」
一旦落ち着いたのか幼女に戻るSCP-408。
「使ってない。なんかまぞくがきたーたすけてー見たいな空気になってる街の中でおばあちゃんに御菓子もらってた。というかカキツバタ、そろそろ帰りたい」
マイペースだな、こいつ。
「とまぁこんな感じです。わかった。ありがとうね?あと約束遅くなってごめん」
「わかればいい」
「それじゃ、SCP-408《収容》と」
SCP-408は光に包まれ、消えた。
皇帝が静かになった謁見の間でふぅ、と息をつく。
「面妖なものが多いのだな、勇者殿が召喚するものは」
その皇帝の感想に僕は苦笑いしながら返す。
「僕らからしてみれば魔法も充分面妖ですよ」
「ふ、違いない」
ははは、と共に笑いあう。
「しかし、勇者ヨシヒコ・カキツバタよ。此度の事、いくら勇者の使命であろうと未だ弱い身で戦い、更に『七大罪』に勝利できるような武具を供給してくれたこと、感謝する」
「ありがたき幸せ、聖剣はかなり切れ味良くなってるので扱いにはどうかご注意を」
皇帝が改まったように礼を言ってきた。僕は素直に受けとる。
「して、この後はどうするのだ?聖王国へと戻るか?それとも我が国に残ってくれるか?」
「そう、ですね」
その問いには少し困ったが、すぐ答えは出た。
「冒険者、になろうかと思います」




