挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第2部

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

53/57

53 ドラデモ的レーダーについて/雑兵は見出す、人の絆の火を

 心の奥底に燃える、火。ワタシたちをつなぐ、火。
 火。ワタシたちと神とをつないでいる、絆の火。


◆◆◆


 怖い。あー怖い。トイレ行くのも怖いくらいに怖いから、戦闘に集中するよう。

 いもでんぷんとは、バトル的栄養素である! 多分!

 馬上双剣でザシュッとラッシュ! 《火刃》で一撃必殺! 駆けろ、黒馬の……ええと……チョコようかん号! 今甘いもの食べたい気分! あとでコンビニでキノタケ里山買ってくる! タケノコ比率多かったら吉! キノコは自重してよね。

 しっかし、勢いで乱入はしましたものの。

 どーゆー戦場なんでしょ、コレ。

 人間とヴァンパイアががっぷり四つで歩兵集団戦とか、めっちゃパワフル。しかも人間側が火達磨になって攻めかかってるとか、もはやテリブル。物凄くアチチ。何で燃えてるんだろうか。気づいてないんだろうか。

 そして、どこのゾンビかニンジャか、死体の下にヴァンパイアという謎の趣向。ほらそこにも。槍を投げてストライク。君は燃えてバーニング。ぬるゲー。

 いや、だって、ねえ……近距離はレーダーマップありますからね?

 そんなところに隠れんぼしても、その、無駄っていうか……なんか気の毒になってきたんですけど。サプライズに気づいちゃった的な申し訳なさががが。

「ちいっ! ここでヒトの使徒たあ、泣きっ面に溶岩飛沫だね!」

 お、ネームドの敵。ベアボウさんとやら。

 戦槌使いか。ほぼイコール土使いですな。ステータスはどんなものかな?

「う、くっ!? このあたしが怖気なんて……ええい! 逃げるよ! あたしらは仕事を完遂したんだからねえ!」

 土が隆起するーの、石が突き出すーので、進路ナイナイ。

 騎兵に対して《土壁》や《石盾》をバカスカかますのは、なるほど定石になるかもですね。でも、魔法は魔法。そいっ。ご覧の通り《火刃》で砕けます。魔力の強弱で片が付くのが魔法でございます……って。

 あれ? なんて逃げ足。スタコラサッサじゃないの。

 追撃してもいいですけど……もう大勢は決しましたからねえ。

 やっぱり、騎馬部隊が中央突破したのが決定的でしたね。ヴァンパイアの戦陣を分断するとか映画みたいでカッチョよかったですわ。しかも手榴弾みたいのをバカスカ投げ散らかすから与ダメージ半端なかったし。

 真昼間だからか、なーんかヴァンパイアがパッとしないってのもありますが……それにしたって、人間も強くなったもんですなあ。

 やっぱり、ヴァンパイアに対する火の特効が大きいですね。同じ条件でエルフと戦ったら勝てない気がしますもん。どんだけ放火したって風で防がれ水で消されてって感じになりそう。手榴弾みたいのも、放ったそばから矢で弾かれそう。

 ふうむ……つまるところ、このDX版って対ヴァンパイア仕様なのかも。

 この前の対『黄金』戦でも感じたんですけど、人間とエルフが共闘するとヴァンパイアを倒しやすいんですよね。水で防いで火で攻めて、みたいな。

 そもそも論ですけど、何で特効なんてあるんでしょ?

 だって、ヴァンパイアだけですからね。流水を渡れないだのとっても燃えやすいだのって。そりゃあ、吸血鬼の設定に忠実っていえば忠実なんですけども……ぶっちゃけカテゴリ違くないですかね。ファンタジーってよりゴシックホラーでしょ。

 なんか、こう、違和感があるんですよねえ……主役種族だから特別扱いってだけですかね? それで、パワーバランスの調整的に弱点も作っときました的な?

 だったら魔神も倒せるようにしておいたらいいのに。制作チームェ……。

 さて、と。

 適当に無双していたら決着しましたね。ヴァンパイアは敗走。人間の快勝ってところですか。おお、めっちゃ勝鬨上げてますね。ウサギもぴょんぴょこ跳びまわってるから、なんともファンシー。

 騎兵も追撃しないみたいですね。それが正解ですわ。山林地帯に分け入って対ヴァンパイアだの対エルフだの、そんなんサメと水中決戦するようなもんですし。

 それに、山林の先にはヴァンパイアの主力軍が近づいてきてますから。

 今どの辺だろ。大陸マップで『艶雷』をチェック。ふむふむ。やっぱり南側からの迂回行軍の気配。対する『絶界』は動きなし。ふうむ。

 これは、あれかな? 『艶雷』の動向をつかんでない感じ? もしくは、目の前に何十万ってヴァンパイア軍が居座ったままとか。使徒って戦略級の存在のくせにフットワーク軽いですからね。そういう陽動はままあるこってす。

 そう考えると、二人分だけとはいえ使徒の位置がわかっちゃうこのシステムはかなりのチートですねえ……い、いいのかな? っていうか正確な情報なのかな?

 まあ、自分に有利なルール違反は許容する方向で……ふえっ!?

 あ、あのお……『艶雷』のマーカーだけ消えちゃったんですけど?

 え、愚痴ったからですか? シラちゃんウインドウもそうですけど、ユーザーのプレイングを即反映する新サービスとかなの? それって何気に怖いんですけど。リアルな身辺事情のこともあるんで、ちょっと勘弁してほしいんですけども。

 やばい、また怖くなってきた。ストップ、いもでんぷん監視社会。ストーカーとかダメ絶対。ううう……う? マーカー復活。何だよ人騒がせな……って。 

 今度は『崩山』? 『艶雷』じゃなくて『崩山』?

 それに、位置が、なんだってそんなところ?

 西地の南端じゃん。

 そこら辺って、あれじゃん。人間領域を南北に隔てる山脈のところじゃん。聖盾山脈。俗称、鉄壁山脈。中央には砦があって、人間の安全圏を護る栓になってるんだよ。だからそこら辺には敵が来ないはずなんだよ。西側、行き止まりだもん。

 なんで、そこなの?

 そこ、麓に、大村があるところだよ?

 なんで『崩山』のマーカーが、ジリジリと南へずれていくんだよ。

 おいおい……まずいって。大村どうなってるのさ。『崩山』何やってるのさ。おい……おいおいおい! 止まんないってどういうことだよ! 

 まさか……まさか!!


◆◆◆


「ムラソウ……おい……生きてるか?」

 什長の声がする方へ手を伸ばして、触れた何かを、トントンと叩いた。

 だって、息をするのが精一杯で、声なんて出せない。目もよく見えない。瓦礫に身体半分埋もれてて、動けそうもない。腕も……片っぽだけみたいだ。

 突然の、襲撃だった。

 地平線の向こう側から、土煙をもうもうと上げて、ヴァンパイア軍が走り来た。

 凄い数だった。什長は何千骨だよって叫んで、他の誰かが一万骨はいるって叫んでた。それくらいたくさんだった。見て、すぐにわかった。もうダメだって。もう死ぬんだって。息の吐き方を忘れて、スンスンって、吸い続けた。苦しかった。

 でも、什長の言葉を覚えてたから、俺、走ったよ。

 できることをやろうって、民の皆を急かしたよ。地下壕や岩室へ行けって。早く隠れろって。お婆さんを背負って、子供の手を引いて、やれるだけやったよ。

 兵の俺は、死ぬ。でも兵じゃない人たちは死ななくていい。そういう人が生き残るために、俺は死ぬんだ。そう思い定めて走り回ってると、胸の奥が熱くなった。涙をボロボロ流しながらでも、頑張れた。

 それで、什長たちと一緒に槍を握りしめて、ヴァンパイアに立ち向かった。逃げずに軍の役目を果たそうとしたんだ。勝てなくてもやるぞって、戦ったんだ。

 でも、俺は騎士さんたちみたくカッコよくないから……すぐにやられちゃった。

 腕をつかまれて、振り回されて、放り投げられて、何かにぶつかって。痛くて痛くて痛くて。気が遠くなって。何にもできなくて。

 什長たちが戦う声を、聞くだけ。死ぬ気で勇気を振り絞っても、結局それだけ。

 火にも、薪にもなれなかったな。カッコ悪いな。俺。

「ムラソウ、お前……よくぞやってのけたな」

 ああ、最期まで叱られる。でも、いい。ひとりぼっちで死なずに済むなら、何でもいい。人に触れていられるのが、嬉しい。

「お前の槍は、ちゃんと届いた……大したもんだったぞ」

 え……今の、褒められた気がする。什長が笑ってるような気がする。

「お前が挑んた相手な、すんげえ大物だ……使徒だよ使徒……『崩山』ってやつ。家も壁も、山をも壊す化物に、お前は……槍を届かせたんだ」

 そう、なんだ。俺、すぐにやられちゃったけど……少しは、やれてたんだ。

「誇って逝けよ。やれるだけのことはやったんだ。お前も、俺も、他の連中も……ここで皆してくたばっちまうけど……神様も褒めてくれるさ。よくやったってな」

 苦しそうな声。指先にビクビクって伝わってきてた痙攣もなくなった。そっか。什長も、もう……他の皆も……軍は壊滅なんだ。

 でも民は。お婆さんたちはどうしたろう。子供たちはどうしたろう。

 声、出ろ。聞かないと……死んでも、死にきれない。

「……民は、大丈夫だろ。ヴァンパイアは、先を急いでいるようだったしな……」

 いいな。本当にそうなら、いいな。そうであってほしいな。それだけが心残り。

 神様。クロイ様を愛してくれる、人間の神様。

 祈ったり願ったりしてばっかの俺ですけど、これが最後ですから……どうか、どうか、悲しむあの人たちにご加護を。怯えるあの子たちにご加護を。

 ああ……火が見える。熱くて、綺麗な、火が。

 俺も、そこへ……ああ……。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ