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ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第2部

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51 末弟は先制する、騎馬の高速で/ドラデモ的動画データについて

 駆ける。駆ける。敵の迫る方へ。
 寒い。なぜ。ワタシは何を恐れもしないのに。


◆◆◆


「念押ししておくぞ、末っ子君。ウィロウさん家のマリウス君。死なないように」

 早朝、開戦に先立って、ヤシャンソンパイン軍官はそんなことを言ったけれど。

 ヴァンパイアへ仕掛ける初手は、ぼくの裁量の内。

 一撃を。主導権を握るために必要な打撃を。必ず。

「全騎、魔力を整えて……進め」

 左翼隊を率いて出る。右翼も息を合わせて出ている。歩兵を残して、中央を大きく開けての、二千騎による前進だ。砂煙を上げて地を揺らす。

 ふふ、ヴァンパイアに注目されているね。それでいい。

 ヴァンパイアも、エルフも、ぼくたち人間をよく見るべきなんだ。

 知るといい。世界の片隅へと追いやり、滅びゆくに任せていた存在の今を。そして考え直すといいよ。あなどれないって。ぞんざいに扱えやしないって。そうなれば思うはずだもの。語り合うことの必要性を。

 戦争は引き算だけれど、どこかが零になるまで引き続けるものではないから。

 最終戦争なんて、生きとし生けるものが発していい言葉ではないから。

 ぼくたちの戦い振りでもって、そんな妄言、斬り裂くよ。

「各騎、火瘤弾用意」

 ゴブリンの死体が散らかるこの原野は、騎兵にとっては少し厄介だ。歩兵がぶつかる予定もある。つまりは乱戦になることが確定している。

 だから、初手に最大の火力を用いるんだ。

「行くよ!」

 敢えて馬列を整えないままに駆ける。一個の強力な騎馬隊と思われなくていい。強き者の群れと思わせたい。そうすれば、ほら、ヴァンパイアは真っ向からぶつかろうとしてくる。蛮勇で蛮勇を誘う。

 我も我もと前へ出てくる、その、怖いもの知らずな強面を。

「横列! 投擲用意!」

 速やかに滑らかに隊列を整えることで、ギョッとさせてから。

「放れ!」

 思い切り投げつける。雷魔法を使われるより前に、機先を制しての《爆炎》だ。距離があるからさして損害は与えていないだろうね。でもそれでいい。

 熱と音と煙とが撒き散らされたなら、それで十分。

 ぼくらの意志を……戦意と気概を見せつけて。

「敵右翼を削ぐよ! 楔の陣!」

 馬列を稠密に、前方へは鋭くする。狙うは敵最右翼の綻びだ。襲歩の高速で分け入る。二百骨ばかりを分断して、斬り抜ける。首級にはこだわらなくていい。

 置き土産の《爆炎》で、死ぬものは死ね。ぼくの狙いは引き算の多寡じゃない。

 本来なら、ここまでやって一度下がるのだけれど。

 行く。迂回してさらに駆け行く。敵の奥へ。敵の後方へ。

 いた。そこだ。回を重ねた挑発にも、今の火魔法にも動じない一団。ヴァンパイアらしくもない守備の構えが、潜む者の正体を教えているよ。

 この戦いを指揮する者が、そこにいる。

 ヤシャンソンパイン軍官をして不気味がらせるはかりごとの担い手が、そこに。

 ここで潰す。

 意味はないのかもしれない。もう企みはついえないのかもしれない。それでも討つ。詳細がわからなくとも、全貌が見えなくとも、ぼくたちに僅かでも滅びを予感させたことが罪だ。許すわけにはいかない。命であがなってもらうよ。

 向こう側からは右翼隊も来ている。二千騎による挟撃さ。一千骨やそこらならば崩せる。崩してみせる。

 ん? 重装の、年配と見える雌ヴァンパイア。戦槌を地に突き立てて……?

 他にも何骨もの、地を触れるヴァンパイア。魔力の高まり。

「っ!! 散開!!」

 命じるが早いか、地面が隆起した。土魔法だ。幾つもの石の壁が乱立して進路を阻む。跳び越えられない高さ。衝突音と落馬音。ヴァンパイアがこうも防御を。

 来る。獰猛な声を上げて、ヴァンパイアが襲い来る。

 速度と進路を失っている。のがれられない。

「駆け続けて! 全騎、小螺旋!」

 小螺旋。十騎分隊ずつに分かれての攻撃。騎馬による乱戦。今はこれしか。

 跳び来た一骨へ槍を見舞う。当たらない、けれど、体制は崩した。後続の刃に任せて馳せ違う。もう一骨、目の前に。槍で応じるも、柄を圧し折られた。そのまま駆け抜ける。また一骨。明らかに狙われている。剣を抜き打つ。鉄棒と白刃がぶつかり合う。火花と衝撃。まともに打ち合えばこの威力。ヴァンパイアの強力ごうりき

「あんたが将だねえ!」

 強敵が来た。さっきの土魔法の使い手。早々と振りかぶった戦槌は、だから罠。

「そうですよ?」

 手信号をひとつ示して、跳ぶ。人馬一体の跳躍。眼下に、陥没した地面を見る。後に続く十騎もそれを避けて散っている。ヴァンパイアの舌打ち。

「さあ! 死んじまいな!」
「御免こうむります」

 着地したところへ戦槌。唸りを上げて迫るそれを、剣で叩く。刃を張りつかせたままに押す。そうやって軌道を変える。ぼくにも馬にも当たらないようにいなす。何とかなったけれど、肩と肘をひねった。何という強撃だったのか。

「逃げるのかい!?」
「追えるものならば、どうぞ」

 十騎を呼び寄せて、駆け続ける。石の壁を避けて、ヴァンパイアを躱すなり斬り払うなりして、戦域を脱する。剣を頭上で振る。擲弾騎兵を糾合させつつ退く。散発的な《爆炎》を背で聞く。

 仕損じた。何名も失った。指揮官を狙った一撃は失敗だ。

 けれど、ぼくは見たよ。

 怯えた表情をしていた一骨……得物を構えない雌。地へ半ば沈み込んでいたのは新手の土魔法だろうか。地面に潜るそれは派手に土砂を散らかすはずだけれど。

 あれが、敵の指揮官だ。憶えたよ。まだ機会はあるはず。

 主導権は取ったからね。

 こうも好きにされて、ヴァンパイアが猛り立たないわけがない。そして、恐怖を体験した指揮官が攻撃を止められるはずもない。

 さあ、決戦の時だ。

 原野を黒狼の群れが迫り来る。まるで黒く地を薙ぐ一陣の風。それを追ってヴァンパイアも駆け来る。もうもうと土煙を巻き上げる様は土砂崩れのよう。どちらも災害で、避け難く抗い難く死を押し付けてくるものだけれど。

 ぼくたちは、それら全てを跳ね除けるためにこそ、火と刃を帯びているんだ。

 勇ましい喊声を、頼もしい靴音を、正面に聞く。

 横陣を堅く組んで、火防歩兵の戦列が前進してくる。鱗のように並ぶ盾と林立する槍。揺れる油壺。はためく軍旗。朝にも赤い灯火。足元からはウサギが跳び出してきた。前歯を剥き出しにして、耳を伏せ、角刀は地に水平の構え。

 ヴァンパイア、何するものぞ……その気迫が美しい。

 神に見捨てられた種族なんて、ここにはもういない。

 正面からぶつかって打ち砕く。それで初めて、ぼくたちは勝利者となるんだ。


◆◆◆


 えー、知らぬが仏って言葉がありますが……知っちゃったらどうしたらいいの?

 いもでんぷんです。不安と恐怖で半ベソなんですけども。

 いや、だって、気づいちゃったんですよ。実家にここの住所教えていないって。社宅申請がどーたら住居手当がうーたらって、色々とゴチャゴチャして、とりあえず落ち着いたら連絡するって言って忘れてたことを忘れてたん。

 親が会社から教えてもらったってこともナイナイ。だって社長言ってたもん。君は海外へ出張していることとするって。情報統制は完璧だって笑ってたもん。

 ステーキ、食べちゃったんですけど……とっても美味でした。

 いもでんぷんってば小市民なんで、他人様のお肉でグルメとか罪悪感に耐えられない……と思って宛先確認してみたら、間違いなしにここ宛てですよ?

 そりゃ、通信販売でのお届けですから、住所知ってればできることですけど。

 でも、贈り主のところ、普通に母親の姓名記入されてましたですけど?

 しかも「たまには肉でも食べなさい」ってメッセージついてましたよ? そんなこと言われたの初めてだーって思ってたんですけど、現在進行形でそんなこと言われてないってこと? ん? やばい混乱してきた……いやでも、これって。

 もしかして……ここ…………監視されてますん?

 え、えーと、実はそういう仕事だったりします? ゲーム漬けとインフラの関係についてとか……ははは、言ってて既に馬鹿馬鹿しいや。そんなわけあるかーい。

 あと、さ。

 今さっき気づいたんですけど。

 撮り溜めてる動画データ……アクセス日時がおかしいんですけど?

 誰? 勝手に中身見たのは……っていうか、何? 何がしたいの? いもでんぷんに何をさせたいの? まあ、具体的にはドラデモをさせたいのか。それにしたっておかしいけど、そこだけは何となく安心してしまう……ううう。

 まさか、あいつか?

 あのルーマニア語のメール送りつけてきた奴か?

 あいつが動画データをのぞき見してたんなら、なるほど、希望云々っていうムカつくツッコミもできるよな。うん。ステーキ肉については絶賛意味不明だけども。

 こ……怖い。

 普通に怖い。尻の下に大穴でも開いたみたいだ。

 うう……クロイちゃんはもう黄土新地に到着するな……って、うわ、戦争イベント発生してるじゃん! わ、何だあれ、黒狼の群れとソードラビットの群れがぶつかって……いい勝負してる! すげえ!

 と、とにかく! 今はとにかく!

 戦闘だ! 行くぞクロイちゃん!
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