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ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第1部

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23 中弟は殲滅し勧誘する、人間の先頭を征く少女のために

 魔物を斬り払え。病毒呪詛を祓うように。
 それもできないでいて、どうして、神を奉れるだろう。


◆◆◆


 七百騎で土漠を行く。明らかに強行軍の速度だってのに、疲れが薄い。

 これがあの馬鹿馬鹿しい訓練の成果なんだから、嫌になる。踊るだの回るだの、いちいちが奇妙奇天烈なんだから、神懸かりの代償にしたって心抉られるぜ。馬の毛並み、蹴り足すら良くなったんだから、納得しないわけにもいかないが。

「あの丘を越えれば黄土新地だ。すぐにも戦闘になるぞ」

 アギアス兄者は元気溌剌だ。前から風変りなところがあったもんだけど、更に磨きがかかって、向かうところ敵無しに見えるわ。

 あれだな。儚さみたいなのが抜けると、こうなるんだな。

「聞いているのか、オリジス」
「聞いてるよ。急いじゃ来たが、まさか二日で着くとは思わなくてさ」
「二日もかかってしまった。間に合うかどうかというところだぞ」
「まあ、そうなんだけど……」

 間に合いそうってのが、もう、凄いことだと思うんだ。俺は。

 だって、黄土新地の危機を知ったのって、手分けして小村落を救って回っていた時だろう。血の気が引いたぜ。あそこは北方辺境における最大の人口密集地。そこへ魔物の大集団が押し寄せたなんて、とんでもない話だ。

 急ぎ救援に駆けつけなきゃならない。かといって、戦力分散の愚は犯せない。

 妥協策としちゃ、部隊を合流させつつ駆けるよりなかった。そんなもん、どうしたって迂遠な経路になっちまう。事実、そうなった。

 それでも、黄土新地はまだ落ちちゃいない。落ちる前にここへ来られたんだ。

 それを凄いと思わないってあたりに、アギアス兄者の凄さがあるなあ。

 丘に駆け登れば、おう、見えた見えた。

 業腹だな。川と緑地とに寄り添った街並みは、悲惨なことになってやがる。遠目にも壊され穢されているのがわかるぞ。ゴブリンめ。我が物顔で瘴気を撒き散らしやがって。ホブゴブリンの数も多い。

 だが、斥候の報告通り、一応でも民の避難が済んでいるようだ。街を見下ろす断崖の上、黄土色の壁を高くして砦風にした施設。そこから炊煙が上がっている。

 そして、それを侵さんと欲して、麓の荒野にもゴブリンか。

 ホブゴブリン交じりの凶暴極まる大群……ざっと数えただけでも二千匹を超えている。異常な数だ。不自然な群れだ。だが戦場に限ってはありうる話なんだよな。

 要はヴァンパイアの尖兵だろ。あれって。

 天然もんじゃなく、養殖もんなんだろ。

 もともとゴブリンは雄しかいない。繁殖させやすいらしいな。母体に適した生物は何種もあるが、特に人間がいいとかぬかしてやがったな。おぞましのヴァンパイアどもめ。

 崖上へ続く道は狭い。防塁も築かれちゃいるだろう。それでも、あの数だ。いつかは破られちまう。いや、もう半ばまでは突破されているっぽいな。

「軍を二隊に分ける」

 アギアス兄者、判断が早いな。

「私は二百騎で市街地へ向かう。あの様子では、逃げ遅れた民も少なくないだろうからな。後回しにはできない」

 なるほど確かに。喰うことと犯すことにしか執着しないゴブリンが、ああもまだ徘徊している……つまりは民の気配を探っているからで、数を鑑みれば察せられるもんがあるな。

「オリジスは五百騎を率いて、あれを崩せ」

 兄者の指差す先。荒野に、ゴブリンの大群。二千匹超の。

「やれるな?」
「やらいでか。全力でいいんだよな?」
「そうだ。ウィロウ家の旗のままにやれ」
「そりゃ、いい命令だ。魔法使用自由ってことだもんな」

 掛け声をひとつ、丘を駆け下りる。

 籠城戦を頑張る皆さんよ、さあご覧じろ。掲げる旗は、火刑十字の黒戦旗だぞ。そうだ、気勢を上げろ。ウィロウ家軍が助けに来たんだ。もう助かるんだ。

 俺たちが、ゴブリンどもを、駆逐してやる。

「全騎、『火瘤弾かりゅうだん』用意!」

 一塊になって駆けつつ、手に焦げ茶色の球を握る。ユシノ木の虫こぶの中に木炭粉を詰めたそれへ、魔力を注ぎこんでいく。まだ入る。もっと。こんなくらいか。いや、もう少しだけ……よし。

「縦列! 敵集団の外周を巡る! 投擲は同時にやるぞ!」

 命じて先頭へ出た。

 いい風圧だ。もうゴブリンの醜い面構えが見えるぞ。そこまで近づいた。速い。疾走が力強い。これまでの戦法なら、このまま突入したろうな。それでも十分に勝てる。そうやって、我が家門は武名を轟かせてきたんだから。

 だが、これからは、違う。

 ここで俺は、馬首を左方へ向けるわけだ。剣も抜かず槍も構えず、騎馬の風だけを敵へ吹き付けて、馬蹄の地響きで身をすくまさせて、駆け行くわけだ。

「火ぃ点けえ!」

 よおし、ゴブリンども。もっと押し合いへし合いしろ。

「投擲用意!」

 騎馬に慄きギュウギュウ詰めになって。密集して。

「放れ!」

 さあ、こいつを喰らえ。

 火瘤弾を投げた。我先にと五百個の瘤球が弧を描く。ゴブリンどもの頭に当たったり、肩に当たったりして、足元へ落ちていく。いや、中には受け止められたり、拾われたりしたもんもあるかな。まあ、いいさ。

 それな、《発火》を切っ掛けとして発動する触媒魔法だぞ。

 そして、どれもこれも、《発火》の魔法を仕込み済みだぞ。

「退避い!」

 離れるや、ドカンと……うお、凄え、ドッカンドッカンでズバババーンだ。音が腹に来て、熱が頬に来る。いつもよりも凄え。魔力がいい具合に馴染んだんだな。《爆炎》って魔法名は大げさじゃないぜ。

 もうもうと上がった黒煙が風に流されて……と。

 死屍累々、だな。

 それでも途上だ。爆発に巻き込まれなかったやつらがいる。まだ動けるやつらがいる。ゴブリンであると見てわかるやつらが、残っている。そんな何もかもが、どれも一等悪いことだな。

 魔物はくたばれ。ゴブリンは素材にもならないから、ただ死ねばいいさ。

「全騎抜剣、自由攻撃! 殲滅しろ!」

 隊列を解き放って、俺も行く。

 動揺するゴブリンを斬る。暴れるホブゴブリンを刺す。油断はしないぞ。一匹とて生かしてはおかないし、一騎とて失うつもりはないんだ。

 それにしても、馬がよく駆ける。爆発の光や熱もへっちゃらだし、敵に怯えもしない。アギアス兄者の言う通りだな。馬を使って戦うんじゃない。馬も一緒に戦っているんだ。それがわかる。

 気持ちが通じるから、手綱、ほとんど鞍に巻きっぱなしだ。だから、そら、長柄が使いやすいったらないぜ。いや、実際のところ、妙に技の切れがいい。

 ホブゴブリンの棍棒を、人馬一体の動きで避けるその際、もう肘を切断して。

 馬が体勢を戻す動きを、長柄の切り返しの勢いへ乗せて、首を飛ばしている。

 ううむ。俺、開拓地に来てから凄く強くなったよなあ。

 今ならアギアス兄者に……いや駄目だ勝てる気がしないわ。兄者と試合うと、馬まで攻撃してくるからな。馬具でユニコーンみたいな角着けるとか、人馬共に頭の心配をしたもんだけど……それで突き落とされたからなあ。

 そして、そんなアギアス兄者をして、絶対に勝てないと言わしめる人物。

 それがクロイ様なんだよな。

 いや、わかるよ。手合せをしないでも、佇まいだけで感じ取れるもんがある。あの人は尋常じゃない。兵法の達人ってのもあるんだろうが、こう、もっと圧倒的で……要はさ、ひとりでもう軍隊なんだよな。あの人は。

 そりゃアギアス兄者がほれ込むわけだよなあ……言葉通りの一騎当千だし。

 けど、だからこそ、俺たちみたいな人間が必要なんだよな。戦える軍人が。露払いになれる軍隊が。あの人を決戦の場へ至らせるための、足場となれる軍組織が。本当に、アギアス兄者の言うとおりさ。文面じゃ言い尽くせてなかったけどな。

 さ、この一匹で終いだ。魔物は退治されにけり、だ。

 歓声が降ってくる。熱狂的なもんだ。おう、旗を振ってやれよ。街の方は虱潰しになるから時間がかかる。その分、こっちは派手に勝ったんだから。

 救われて、盛り上がって……もっと戦ってくれ。あんたたちも加わってくれ。

 クロイ様を先頭にして戦う、この、回天の大事業にさ。
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