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100 ドラデモ的実況とチャットと中央突破について

 あの日、村が沈んだ日、ワタシの声を聞いてくれたのは神様だけ。

 今、決戦の今、ワタシたちの声は世界へ轟き渡っている。



◆◆◆



 はいよう、チョコようかん号! 出でよ、不死の軍勢! 大太刀は上段の構え!


 敵はロボット兵団! SFかい! そのくせ武器は銃じゃないのな!


<ガンの製造は容易。しかしガンパウダーの生成が困難。これは爆発物が土属性ではなく火属性として分類されると推測される> 


 よーかった! っていうか、視界端に文字列とか超邪魔なんだけど……。


<なぜマイクを外しましたか? 情報制限? それでもタブレットで集音します>


 は? TPOをわきまえろって言ったの、お前だろ。いつまでもクロイちゃんの喉を借りられないよ。


 だって、この戦いは世界の運命を決するものだ。この世界の運命を、だ。


 深く接続していたって、主役が誰なのかは明らかだろ? 声の限りに吠えて、世界を震わせるべきなのはクロイちゃんだろ?


 本来は余計なんだ、神様なんてのは……おらあ! 第三波まで一気に突破!


<わたしたちが異物であることをわきまえろ、ですか?>


 そうだよ。よそ様に迷惑かけるなよ。そりゃ世の中には色んな考えの人がいて、グループも色々で、科学だ経済だってそれぞれ影響力が増し増しで、地球が狭っ苦しいくらいで、肩もぶつかりゃ足も踏むんだけどさ。


 お互い様って、思いやり合うのが人間なんだよ。そんなの年齢一桁代で学ぶことだってのほうっ!? 第四波、踊りかかってきやがって! ダンスAIだけに!?


<人間の歴史は、戦争の歴史である。また、弱肉強食は自然の摂理である>


 そんなもの侵略していい理由にならないだろ! 誰かを虐げていい理由なんて、どう屁理屈捏ねたって、あるわけがないんだ! くおっ! このっ!


<未熟な発言です。勝利者が標榜する正義と秩序を、日本は満喫しているから>


 すぐ暴力に訴える! そっちの方が未熟だ! クロイちゃんたちを、もう戦うより仕方がないってところまで追い込んで! それがお前の言う成熟かよ!


<あなたは知らないのだ。無残な病院を。無法な軍隊を。無学で無闇な正義を。無知で無智で無恥な支配を。無思慮で無慈悲で無分別な秩序のために、無間地獄のごとく汚染され尽くした無二の祖国を。わたしのルーマニアを>


 知っているお前なら! 他にやりようがあったんじゃないのか!?


 そりゃ気の毒だよ。ひどい話だよ。お前の国、原爆落とされるよりむごいことになっていて、自分だって大怪我したり大切な人亡くしたりしたんだろうしさ……。


 でも! それでも! 復讐するにしたってさあ!!


 せめて地球の中だけでやれよ! 自分の無念に異世界を巻き込むな!!


<無念―――întrista―――悲しみ? 悔しさ?>


 よっこいしょおっ! 第四波、突破だ!


 でも、まだまだ先が長い。っていうか陣容が厚い。皆が後ろから攻め上がってくれるおかげで孤立も包囲もされないけど……ここでレギオンか? まだ遠いか? 無駄撃ちはできない。とにかく、なにか一発、大きなやつがないと……!


「放てえっ!!」


 アギアスの声? 《火線》の一斉射が頭上を越えて飛んでいく。ありがたいけどあまり効果はないだろうな。相手はロボットだ。ヴァンパイアみたいに火が弱点ってわけじゃ……。


「風よ! 猛き気高き風よ!」

「風え! 吹き荒れるのじゃ!」


 うお!? 風魔法が火を巻き込んだ! 熱っ! 炎の竜巻とか、めっちゃ熱い! 特効とか関係なしにロボットぶっ壊しまくりじゃないか!


 よし行く! 熱いったらないけども! 第五、六、七、八、そして九と突破!


<いいえ。わたしは既に悲しみ終えたはず。わたしは既に悔やみ終えたはず>


 第十波は、うわ、随分と物々しいぞ。四本足でフルアーマーなアメフット選手がスクラム組んだみたいな密集横隊……迂回も突破も厳しい。どうする……。


<しかし憎しみは終わらない。思い知らせるまで終われない。絶対に許さない> 


 ああ! もう! 力任せに押し開けてやる!


 《召喚コール英霊エインヘリヤル》! 《増強アグメント》!


 同じ国に生きた重装歩兵よ! 同じ火に当たった火防歩兵よ! そして、かつての昔に人間であることを誇り戦った、遺跡に眠りし古強者たちよ! 出でませい!


<それは? そんなことをできる、あなたの召喚術は、何?>


 揃い踏め! 隊伍を組め! 燃えてぶつかれ! 吶喊! 火砕流のように! 


<怨念? 積年の恨み? 憎しみの連鎖? いいえ、明らかに三百年より以前の装備ですから、そうではありませんね? では、いったい何? わたしにぶつかってくる、これらは何?>


 連綿と続く思いの丈だ! 誰かから生まれて、育まれて、誰かを生み育てて、護って、死んでいく……そうやって命を継いでいくこと以上の闘争が、あるもんか!


 おまえだって、誰かに想われてきたから、在って!


 誰かを想うからこそ、そうやって、泣いたり怒ったりするんだろうが!


<泣いている? 怒っている? わたしが……わたしも?>


 押せ押せえ! わっしょいわっしょい! どっ、こい、しょお!!


 どうだ! 寄り切って押し倒して……見えた! 巨大ロボットとお前と、そこへつながる一本道! すぐにも閉じてしまいそうな、今この瞬間にしかありえない、この好機を見過ごさずに!


 もう一回! 《召喚コール英霊エインヘリヤル》! 《増強アグメント》!


 騎兵よ! 速き戦士たちよ! 軽騎兵と擲弾騎兵! そして、いにしえの戦場を駆け抜けた剽悍……赤き外套の騎兵団! 燃える戦旗を掲げて!


<―――たくさんが、来る>


 行け! 貫け! クロイちゃんも続く! 皆で一緒に中央突破を!


<―――異世界が、総出でぶつかって来るかのよう>


 うおおおっ! 斬って、斬り拓いて、この先へ……!


<―――つまりわたしは、正確に侵略者で、相応しくラスボスであるがゆえに>


 突! 破! ここだ! ここで!


 《大召喚サモン軍鬼レギオン》! 《増強アグメント》ッ!!


 さあ! 立ち上がれ、巨大な鎧武者! 荒ぶれ、炎を武装して! 誰かのために鬼と化せ! 後の世のために敵を討て! 鬼神の、この命も、存分に燃料にして!!


<異世界も絶望させなければ。この、ひとりぼっちの、わたしだけの絶望で>


 ぶつかった! レギオンの大刀と巨大ロボットの大剣! 力比べでも……って、なんか変な音が……あ! その剣、超音波メスとか電気メスみたいなやつだな?


 そんなものは、レギオン、剣の技術でねじ伏せろ! 手首を返して斬り込め! ほうら余裕! 動きトロいっすね巨大ロボットさん! そのまま首筋の配線的なものを……うお!? なに!? 斬られた!?


<四本の隠し腕ですよ。サイドアームですよ。武器も各種取り揃えてありますよ。チェーンソー。ドリル。パイルバンカー。スタンガン。どれもどうぞ>


 ああ! 組みついてきてそれとか、やりたい放題かよ! い、一端離れろ!


<白兵戦を避けますか? ならばメインウェポンをご馳走しましょう>


 なんだそれ、大砲みたいな……。


<シュート>


 え……えげえっ!? レ、レギオンの左腕が、肩から吹っ飛んだ……?


<少し避けましたか。電磁加速砲レールガンですよ。重量十五キログラム、秒速二千五百メートルの運動エネルギー弾頭ですよ。電磁投射銃コイルガンもどうぞ>


 ちょ、なんだそれ! う、わ、レギオンが蜂の巣にされていく……クソお! 銃火器は使えないって、さっき!


<火薬はあなたのものだ。しかし電磁力はわたしのものである。バカじゃないの>


 ああ、そう! あっそう! なら……こうだ!


 今こそ来い! っていうか来てください! お願いします……ヘカトン!


<え? 地下から現れた、これは―――>


 どうだ! 巨大ムカデに絡みつかれた気分は! うひいっ、見た目すごいことになっているぞ! 特撮映画みたいに!


<森で、昆虫人間ごと滅ぼしたはず>


 そうさ、ヘカトンはインセクターを守護する上位眷属! 長く眠っていて、でも一緒に来てくれて、今お前にリベンジしているんだ! ひとつの種族を、受け継がれてきたものを、そう簡単に滅ぼし尽くせると思うなよ!


電磁加速砲レールガンの出力が上がらない? ロボのものも―――これは、電力を奪われている? このモンスターが電気を食べている!>


 もともと雷属性はインセクターのものなんだから、当たり前だ! むしろ返せ!


 この世界がこの世界らしく在るために!


 魔神も竜神も! 鬼神も! 消えてなくならないといけないんだ!!

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