練習
俺はもうえたっている
「貴様に俺は倒せん」
「そんなことはないさぁ、この世に100パーの事柄なんてないんだからよぉおおお」
主人公が敵をやっつける場面での決め台詞。
勿論このパーは%のことであって‰やパーミリアド、頭がクルクルパーのことではない。
何てアニメか忘れたけれど、僕は今でもこの台詞を覚えている。何故ならば普段あまり意見や考えが思い浮かばない僕がこの時は珍しく思い浮かんだからだ。
「100%なんて『ない』と言い切ってる時点でそれは1つの100%になってるからこれはおかしいんだ」
勿論、頭が回る人なら僕が頑張って出した考えを簡単に弁駁できるのだろうが、 小さい頃の僕の小さな脳味噌では十分な大きな満足を手に入れることができたのだ。
何故こんなことを今思い出したのか・・・それは今僕が置かれている環境が理由だ。
ザアアアアアアアアア
何故か寝転んでいたから立って、頭を後ろにや捻って見てみる。背後には今にも襲いかかって来そうな数々の巨大な針葉樹。
顔を戻す。
10m程前には荒れ狂った川がありその向こう側にはやはり針葉樹が広がっていて、上からは恐らくpHが川崎のよりやや高いであろう雨が容赦なく降りかかり時々雷が落ちてくる。
荒れ狂ってる理由はこの雨の強さが恐らく原因で、今懸念すべきことは増水による溺死だなと考える。
早く去らなければならない。
「なんなんだよここは」
思わずそう呟いてしまう。
左の方は雨でよく見えないけれど、ある地点で地面が見えなくなってるのでこの川による滝の落ち口になっているのだと思う。
だから僕は右へと川から離れるように歩く。
歩き、考る。
何故このような場所にいるのか。
嘆いても仕方ないのだと自分に言い聞かせる。
言い聞かせて、できるだけ考えるのを止めないようにする。
止めたら、また肩から崩れ落ちて時計の針が止まったかの様に動かなくなってしまうのを知っていたから。
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僕はよくネット小説投稿サイトをみていた。そこでは異世界転生であったり異世界トリップ、異世界人憑依の話が多い。次点でゲームの世界に閉じ込められたり、未来もしくは過去の地球に飛ばされる話が多い。
続きが知りたくて知りたくてたまらないやつが10以上ある。
「帰らないとなぁ」
今僕に当てはまるのはどれか?
今僕は赤ちゃんではないので転生ではない。ないが、実は今までの地球での生活が夢で実際の僕は記憶喪失という可能性がある。これは候補1だ。
ゲームの世界ではない。僕はrpgが苦手なのでプレイしてないのだ。ボツ。
では憑依はどうか?と考える。
そう言えばさっきから体が軽い気もするが肘の裏には俺である証拠の3つのホクロが縦にポツポツポツと並んでいるので違うだろう。
この体は俺の体だ。ボツ。
過去か未来かの可能性。
未来であればもしかしたら、タイムマシンができていて帰ることができるかもしれない。これであれば嬉しい。
過去であれば・・・
過去だったら帰れないな。候補3。
そう言えば、拉致の可能性もある。一番現実的だ。でも意味がない。うちはそんなにお金がないのだ。三人兄弟で皆大学に通っていて、もう貯金が無いらしい。候補4。
あ、思い出した。
俺は夜コンビニにカップラーメンを買いに行く途中、目の前に雷が落ちて驚いたけどそのまま足を動かした瞬間、足を滑らしながら、泥に少しずつはまっていく感覚があって気を失い気付いたら、あそこで寝転んでいた。
あの主人公じゃないけれどこの世に0%なんてありえないんだなぁとふと思った。