デイナの護衛
ハルタナはデイナの護衛としてデイナに同行していた。
時代の変化に真っ先に対応していくのが、彼女のような仕事なのかもしれない。
今のハルタナは、昔のような動きやすいクロースを着てはおらず、正装をキッチリと着込んでいる。
本人は、給料が上がっていい服が着れるようになったなどと言っているが、デイナのような城から派遣されてきた重要人物の護衛としては、正装を着こんでいくのが一番目立たない。
正装の中には、武器として数丁の拳銃を忍ばせてある。武器の小型化も、服装が軽装になった理由の一つだろう。
こういう仕事こそ、その時代に一番合わせなければならないのかもしれない。
最初、ロドムがハルタナを連れて来たときは『また女の子を増やしたのか』とあきれたものだが、やはり、彼の人を見る目は確かで、今回だって、デイナの護衛としても、十分すぎる働きを見せてくれている。
それに秘書としても有能で、次の予定などを完全に把握して、効率よく仕事を回れるように考えてくれている。
「しかし、私も護衛が必要になるとは……ただの一介のメイドだった私が……」
やはり世の中運なのだと思う。
虫の魔法などというと、何に使うのかわからない奇怪な魔法だと最初は思っていた。だが、ロドムがその使い方を見出し、それに従っていくと、とんとん拍子に自分の価値が見いだされていき、今では国の重要人物になった。
「それは私も同じ。あのままアサシンギルドに入っていたら、ただの使いっパシリから昇格できるのはいつになったか?」
やはり、あの世界は男の世界。女で上に上がるのは難しい。
女のアサシンの仕事は、基本的に敵の懐に入って情婦にでもなり情報を聞きだすようなことが、主流だ。
自ら武器を取って、手を汚す役になるのは珍しい。
女という事で、甘く見られていたので、アサシンギルドのみんなで結託しての反国運動には参加させてもらえず、ロドムからの依頼に自分が指名をされることになったのだ。
この国が帝国に占拠でもされれば『ロドムに協力をしていた逆賊』とかいう扱いでもして、真っ先に切っていくつもりだったろう。
「それが分かっていて、命令に従ったんですか?」
「私たちの世界ではギルドの命令に従わない事こそ死を意味する」
それに『死にに行け』と言われているような指示を受けることなど、アサシンにとっては当然の事。その時は死にに行くつもりの覚悟くらいは持っていた。だが、結局死んだのはギルドの方だった。
「私たちは生産性のある仕事なんて知らないしできない。誰かの後ろ盾がないと、生きていけない。あそこで、切り捨てられたのは逆に幸運だった」
主君を失ったアサシンの末路など、見られたものではない。
大抵は野盗に身をおとし、討伐をされる未来を待つか? 自分に価値はないことを認めて自害する事も多い。
「この羽よりも軽い命……といえど、命を救われたことには感謝を禁じ得ない。私はロドム様のためならなんでもしよう。体を捧げる事も厭いはしない」
無表情で言うハルタナ。
一瞬デイナには、意味が分かって言っているのだろうか? と疑問に思うが、彼女はそういうのが普通に行われる世界で生きてきているのだ。
意味は当然分かっているし、そうなれば本気でそうするのだろう。
「それは、王宮では言わないように、それ聞いたら烈火のごとく怒りだす人がいるからね」
「御意」
そんなことを聞いたら、絶対フェリエなんかは発狂するだろう。十五歳にもなれば、ロドムも、十分女の子に興味を持つ年ごろ。
フェリエ自身も五年前と比べても警戒心も強くなっている。
そんな言葉を聞いたら、フェリエなら発狂してハルタナの事を殺してしまうこともあり得る……
いや、それどころではない。フェリエならやる……




