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適当男の転生軍師 2  作者: TUBOT
テルシオとの戦い
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王宮に呼ばれて

「話には聞いていたが、こんな子供とは……」

 俺は王の謁見室に呼ば、そう言われた。

 その王も俺より二歳上くらいだ。もちろんこの世界のこの体での二歳年上であり、見た目は十二歳くらいに見える。そして女の子だ。

『どこのラノベ?』

 彼女と会った時そういう感想を抱いた俺。

「集中してください」

 シィに頭の中を読まれそう言われた。

「貴様が魔法学院で敵を撃退した司令官か……」

 その女王は俺の事をそう言った。

「はっ……ロドム=エーリッヒでございます」

「名前など聞いておらぬ」

 そう言う女王。その女王の視線を感じる。俺はこうべを垂れており見えるのは床だけだ。

 床にはカーペットが敷かれておりそこにはこの国の紋章と、王族の紋章が刺繍されている。しかも、新品のようにきれいだ。こういうところで王の権威を見せているのだ。

「若輩者が運よく敵を撃退したからと言って、私の前に顔を出すとはよほどのお調子者のようだな」

『呼び出されたから来たんですけど……』

 俺はそう思う。だが隣のシィが『こらえてください』と言いたげな視線を送ってくる。

「おもてをあげい」

 女王がそう言うと俺は頭を上げた。

「お前……この国を守れるか?」

 そう言う女王。

「守れるかどうかは分かりません。ですが守れる可能性のある人間は自分しかいないと自負しております」

 俺はそう言う。

 この国の戦略戦術の思想は三国志の頃のレベルだ。元の世界にいた頃の時代には、もっと効率的で兵の命を危険にさらさない戦術はいくつも考案されている。

「おのれ……」

 俺はそう声を聞く。

 この国の軍師か何かだろう。その男はいずれ戦わないといけない相手だ。

「まあ、それもはったりではないようだな。わが国の優秀な軍師も『学院戦』の状況では勝ち筋が見えないと言っていたぞ」

 あの戦いはすでに名前が付けられているのか……『学院戦』ね。

「兵の士気を上げる事を忘れなかった……というか、それしかしなかった。兵のご機嫌伺いしかしない指揮官など用はない。そんなのは慰安の人間の仕事だ。司令官がやる事ではない」

『慰安の人間を呼べれば良かったんだけど……』

 俺はまたも女王の言葉に頭の中で口答えをした。

 この女王、戦争の事を何も分かっていないらしい。

 まあ、普通はそうだろう。王女は戦争をする事を命じることはあっても、自身で指揮をするわけではない。

「だが武勲は武勲。褒章としてこの国の将軍の地位をやろう」

「はっ……ありがたき幸せ」

 俺はそう言った。だが正直金一封の方がいい。そのお金を国外逃亡の資金にしたい。地位なんか与えられたらそれこそ逃げられなくなる。

「これで満足だろう? エーリッヒ……」

「はっ……陛下。私めの意向をくんでいただき恐悦至極にございます」

 その会話を聞くと俺の父が出てくるのを見た。

 俺の出世のために口をきいてくれてありがとうオヤジ……くそったれ……

「それでは、お前の軍はすぐに用意させる」

 女王がそう言うのに俺は驚く。

 すぐに用意? 誰かの軍を引き継ぐわけではないのか。つまり、俺の軍は新兵の集まりになるのだ。

「学院から何人か、連れてきていてよかった……」

 ディラッチェは指揮官としてやっていけそうだしシィも雑務を任せられる。

 フェリエは第一線に立って戦ってくれるだろうし、デイナとレスティとセリットもいいとこのお嬢であり人脈も広がるだろう。

「最初はつらいだろうけど君ならすぐに何とかするさ。お前は私の自慢の息子だからな」

 俺の父は無責任にもそう言った。

「それでは下がれ。武勲をあげる事を期待しているぞ」

 そう言われ俺は謁見室から下がった。

 とにかく俺が指揮するのは新兵の集まり。十分の一人前の彼らを、せめて半人前くらいにしなければならない。

 これからの事に不安を感じながらも俺は謁見室から離れていった。


「集まった新兵達です」

 あれから少し経ち、俺は志願をしてきた新兵達の事を見た。

「やっぱり……」

 傭兵と言った感じの髭面の男達。そして、何かの間違いで志願してきたのではないかと思うような若い青年。

「食うために志願してきた人ばかり……って感じですね」

 シィが言う。

「最初はこんなもんだろう……」

 俺は言う。こうなるのは予想済みだったため何も思わなかった。

 しかも数は二十名前後。こんな数では軍とは言えない。

「ガキとは聞いていたがこんなきれいなガキとはな。男娼にでもなればもっと出世できるかもな」

 臆面もなく下品な事を言い出す髭面の男。

 俺の隣にたつフェリエはその男の事を睨みつけた。

「やっていいよ……フェリエ」

 俺がそう言うとフェリエはその男にゴッドスピアを叩き込んだ。

 当然、死なないくらいに威力は抑えてある。地面に転がったその男を見て俺は溜息を吐いた。

「君らはどうせ『食うため』に志願をしてきただけだろう? だが入ったからにはこの国の事を守るために命をささげる立派な兵士にならないといけない。女王に忠誠を誓い、死をも恐れぬ屈強な精神が必要だ」

 俺がそう言うと隣のシィがクスリと笑った。お前が言うなってか?

 そりゃそうだ。俺は正直軍師になる事など望んでいない。できればすぐにでも逃げ出したいくらいだ。

 だがこうなったら彼らには規律くらいは覚えてもらおう。

「まずはランニング! 基礎体力からだ!」

 俺がそう言うが兵達は動こうとしない。

「フェリエ……やれ!」

 そう俺が言うとフェリエは新兵達に向けてゴッドスピアを撃った。それは誰にも当たらなかったが脅しには十分だ。

「はじめ!」

 俺が言うと、新兵達はこの城の庭を周回し始めた。

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