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ココニアルモノ

作者: 離宮 愛琉

今日も空が綺麗だ。

窓の外を見て、ぼぅっとしている私は

なんとなく

青い空の見える日は好きだった。

そう、好きだった―――

今は綺麗な空をみていると

どうしても自分の汚さが見えてしまって

無性に自分が嫌になる。


大好きだった歌だって

いつの間にか

忘れてしまった。


そんな日々の中で

そっとこの世界から

いなくなりたいと思う事がある。


誰にも愛されてないのなら

誰からも必要とされていないのなら

自分の存在する意味が分からないくらいなのなら


今まで見ていた窓を開けて

身を乗り出す


その瞬間

一つの真実が頭の中を駆け巡る


『自分は飛ぶことができない』


分かりきっていたことなのに

酷く怖くなる


夢を見るのは容易たやすい事。

でも

現実を見る事はとても残酷だ


涙がこみ上げてくる

死ぬ事が怖い

本当は

誰かから愛されたい

自分は求められて生きていると

自信を持って言いたい



きっかけは、ほんのささいな事だった。

私の大好きな友達が、私の事を大嫌いになった。

理由なんて、もう覚えていない…

その日から、私は皆から遠のいて生活することになった。

いや、「入れない」って言う方が正しいのかな?

とにかく、人と接しない日々が続いた。

そして、私は心を失った。



ふと見ると、私が飛ぼうといていた窓の下では猫が喧嘩をしていた。

喧嘩…と言うより…

ある一匹が攻撃されているみたい…


………私に似てる……


私は家を出て、その猫たちに近づいた。

一歩、歩み寄る度に猫たちは私から離れていく

その一匹を残して。

痺れが切れたのか、ある一瞬を境に猫たちは逃げ出していった。

私の足元には傷ついて動けないでいる猫が一匹。

「…大丈夫?」

私は答えなど帰ってこないと知りつつも話しかけてみる。

「にゃー…」

私は地べたに腰を下ろし、少し怯えている猫に手を差し伸べる。

「大丈夫。私も君と一緒だよ。」

自分に呆れつつも、自然と言葉が出てくる。

一緒に、また涙も出てきた。

「私…さ、何であんなに嫌われちゃったんだっけ…?」

私は皆が好きだったのに…

本当に…何でだろう?

「にゃぁ…」

猫さんは差し伸べた手に手を乗せてくれた。

温かい…懐かしい愛しさ。

「私ね…ただ、皆と一緒に楽しくいられれば良かったんだ…それすらも叶わないなんてね、馬鹿だよね……」

止めたくても止められない。

言葉と一緒に涙の量も増えていった。

胸が痛い…

締め付けられるような感情の波。

「もう…辛いんだよぉ……!!」

どうしようもない。

砂時計みたいに

一度ひっくり返ったら

落ちるしかないんだ。

「ボクと君は似ているね。愛されたいけど、きっと…」

近くから声がした。

男の子みたいな声。

その声がした方向には猫しかいない…

……空耳?

「ねぇ、君の名前は?」

「え…?な…なっ!」

やっぱり猫が喋ってる…!?

「ななって言うんだね?」

ちっ違う!ってか何で喋ってるの!?

「なな。ボクはね、ボクが皆から嫌われてしまった訳を知っているんだ。」

「…え?」

「ボクはね…誰よりもボクの事を愛してないんだよ。」

…やっぱり似てる…私と。

「ななもきっと、そうなんだろう?」

「……うん。」

「でもさ、本当に嫌いなものを周りの人が好きだって言っていてもそう思えないだろう?」

「…うん。」

ああ…本当に、頭がおかしくなっちゃったのかなぁ?

猫となんの躊躇いもなく会話してるなんて…

「なな、君は実は誰からも嫌われてなんかいないんじゃないのかい?」

「え…?」

「信じる事は何よりも大切なことだよ。愛されたいのなら、愛さないと。君は愛されているから、今、ここから戻る事ができるよ……………」






気が付いたら私は病院ベットの中にいた。

私の周りではたくさんのクラスメートが泣いていた。

…そっか…私……

「あ!気がついた!?よか…本当に…」

周りの皆は私が目が覚めたの気づいて、

私のために泣いてくれてる…

そうだね。きっと―――

「ねぇ、聞いて。私、夢見てたの。私、皆のお陰で帰って来れたんだよ?…皆、大好き。ありがとう…」




辛い事で埋もれてる世界。

そんな世界だから

幸せの鍵も

埋められちゃう事がある

でもね、

信じていれば

きっと目の前にはたくさんの幸せ。


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