人と鉄砲は砂に弱い
トラックの揺れの度に、荷台に溶接された粗雑な長椅子が俺達のケツを痛めつける。
おまけに、外の砂嵐が幌の隙間を突いて襲い掛かってくる。
国の精鋭特殊部隊といいながら、型落ちのBMPすら無い泣ける話だ。
「隊長、質問いいですか?」
部下の一人が質問してきた。本来ならば出発前のブリーフィングで全て済ませるべきなのだが、まあ良いだろう。暇つぶしにもなる。
「質問を許可する。カシム曹長」
「ありがとうございます。では、今回の反政府軍の協力者への抹殺作戦ですが、協同で作戦に当たるとされる黒豹9番とはどこの部隊なのでしょうか?我が国に黒豹の名を冠する部隊は1番から8番までの8部隊だったと記憶しているのですが」
これは、非常によろしくない質問だ。ブリーフィンブ中であれば絶対に答えなかったと確信できる。
だが、ここは砂嵐の中のトラック。周りにいるのは俺の部下だけ。はたして、どう答えるべきか…。
「隊長?自分は何かマズイ質問をしてしまったのでしょうか?」
「いや、問題ない。質問には答えられないがな」
「そうですか、すみませんでした」
「なに、謝ることは無い。その素晴らしい洞察力。それは黒豹の一員として必要とされている能力だ。誇っていいぞ」
「あ、ありがとうございます!隊長」
だが、ヒントくらい与えても良いだろう。
「それと、全員聞こえるか?」
「「聞こえます、隊長」」
「よろしい。そろそろ砂嵐が止むだろう。そうしたらマトワールに着く前に銃の整備を済ませろ。しっかりとだ。解かったか?」
「「サー!イエス!サー!」」
念入りに整備すれば分かるさ。黒豹9番ってのは―――