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しゅーてぃんぐ☆すたー  作者: 鶴岡
01-Prologue
3/45

それは、きっとL1A1。

砂漠を駆け抜ける車の荷台の末席に収まる、場違いな俺1人。

周りにはいかついお兄様方が3名。

そんな、不穏な成り行きの車が砂漠を走っていると―――


「へっだーん!!」


急にさっきの気前の良かった兄ちゃんの叫び声が聞こえ、


「ぐぼへっ!」


いきなり、いかついお兄様その1に頭を荷床に押さえつけられて変な声が出た。

ああ、“HEAD DOWN”ね。頭を下げろってか。

言葉を理解したと同時に、遠くから銃声が聞こえ始める。

マジですか?

車のボディがパチパチ逝ってるんだけど?!

攻撃?攻撃されてるの?なんで?俺ってば善良な市民ですよねぇ?!


「あーぴーじー!!」


RPGキターーーー!!


その衝撃と共に車が急に傾いて、俺たちは砂漠にぶちまけられた。




ぱぱぱぱっ

たったったったったったっ

ぱぱぱぱっぱぱっ


どうにか五体満足で砂漠に転がっている俺を銃声が二方向から挟んでいる。

こういう時ゲームや映画だと、下手に姿勢を高くするとHS(ヘッドショット)頂戴して即死するパターン。たぶん、コレも同じはず。

なので砂に寝転がったまま辺りを見渡してみると、一方は同乗者だったいかついお兄様方が3人。割と近くにいる。撃ち合いに使ってる銃に見覚えが、というより、さっき荷台で見た銃。

もう一方は…なんつうか、とっても怖い凶悪そうな黒装束の集団。まだ遠いけど、じわりじわりと近づいてくる辺りが特に怖い。


とりあえず、FPS的にはこのまま這って移動して武器を探すパターン。

つまり、さっきまで乗ってた、今ではひっくり返って燃えてしまっている車の辺りに武器があって。

そんでもって敵はあの黒装束の奴ら。絶対そうだ。おれの5感全てがそう叫んでいる。




砂の上でのぎこちない匍匐前進の末、やっとのことでソレを掴み取るまでに至近弾をいくつか貰った。

こういう時、おれはキッチリお返しをしないと納得がいかない性分だとゲームでは自覚していた。

そして今、俺の手に納まっている銃。それはゲームでも良く見かけるFALというバトルライフルだった。

ゲームじゃ威力は強いんだがセミオートしか出来ないという銃。

それを、300m程先にいる敵に向ける。

どうやら、こちらに気付いていない。ということはさっきのは流れ弾か?

だけど、先に撃ってきたのは向こうだ。お構いなしに引き金を引き絞る。


タンッ


ほんの僅かな時間を置いて、ソイツが銃を落として右腕を押さえながら倒れた。


「やった!」


そして、次の敵。少し右の奴。


タンッ


今度はうずくまるように倒れる。

すると敵は負傷した2人を引きずりながら、まるでゲームに出てくる敵のように一斉に撤退し始めた。

あまりに簡単に撤退していくものだから、つい見とれてしまった。

まあ、いかついお兄様トリオは御構い無しに撃ち込んでいるのだが。




だけど、理由なしに撃ち込んでいるわけでは無かった。

敵がもう見えなくなり、彼らも撃つのを止めると慌てたようにそばにある岩陰に集まる。

俺も行ってみることにした。


近くには、エンジン周りがやけにひしゃげた車が、ひっくり返って盛んに燃えている。




いかついお兄様トリオが悲しみに暮れた、悲痛な顔で岩陰に集っていた。

そういえば、気前の良い兄ちゃんドライバーがいない?


「ま、まさか!」


急いで駆け寄ると、案の定彼はそこにいた。

ドライブテクニックは上手かったのだろうか、撃たれたような傷は無いように見えた。

だが、あのRPGを車に喰らった時の爆炎に飲み込まれたのだろう。

服は殆ど燃え落ち、上半身が酷く焼け爛れているように見えた。


許せなかった。


もう、4人は笑顔で話し合っていた。

諦め、達観しながら、きっといつものような笑顔で。


それが、許せなかった。


日本の、引き篭もりなめんなよ。

ネットサーフィンで得た知識なめんなよ。




俺は、急いで準備に取り掛かる。

旅行の荷物の中から救急キットを取り出す。

海外じゃ保険証効かないんだからケガぐらい自分で治せと持たせてくれた親父に感謝。

そして、コッチは母さんに持たされた大量のエチケット袋という名のレジ袋。

これで、しのげる。




三人を押しのけ、火傷の兄ちゃんの目の前で屈みこみ、殆ど燃えカスとなった服を素手で剥ぎ取る。

彼の上半身を裸にしたら、あらためて火傷の範囲を確認する。

顔はとっさに守ったのか程度は軽かったが、その代償であろう両腕が特に酷い。

だが胸の辺りは割と軽傷だと思うし、背中にいたってはほぼ無傷である。

あらかた調べ終えると、次はワセリンを火傷の箇所に塗りたくる。

それも終えると、レジ袋を破り広げてワセリンを塗った火傷に被せ、包帯で軽く押さえるように巻いていく。


これで、処置完了!


まさか、怖いもの見たさに見たグロ画像サイトが火傷専門の医者のサイトだとは俺だって思わなかったさ。

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