翼
僕はあの空を目指した。何度も何度も崖からとびそのたびに落ち傷ついた。だけど僕には翼がなかったから飛ぶことはできなかった。
ある日のことだった。いつものように崖から飛んだ、そのとき足を怪我してしまった。
痛くて苦しくて僕は泣いた。もうどこにもいけないのだと、死すら覚悟した。
そんな時彼女に出会った、彼女は白く美しい翼を持っていた。そしてその翼でやさしく僕を包んでくれた。暖かくてやわらかくて白い翼、いつの間にか涙は止まっていた。
それから何度も彼女は僕のところへ来てくれた。食べ物を持ってきてくれたり、歌ってくれたりした。彼女の歌声は美しく、それを聞いているだけで僕は幸せだった。僕には白い翼も美しい歌声もなかったから正直彼女がうらやましかった。
そして僕の傷は治った。そして彼女は微笑みどこかへと飛んでいってしまった。
僕は走った。走って走ってでも彼女に追いつくことはなかった。そんな時僕の心に一点黒い染みのようなものができた。
彼女の翼が憎い。どこかへ行ってしまうなら、あの白い翼を引き裂いてしまえばよかった。そうすればずっと彼女は僕のそばにいてくれるのだから。
彼女が好きで好きで大好きで、それ以上にあの白い翼が嫌いだった。一点の染みは次第に広がり、いつの間にか心全体が黒く染まっていた。そんな時僕の殻が剥がれ落ちた。
そして俺は皮肉なことに翼を手に入れた。血のように赤い翼を。
いつの間にか俺は笑っていた。そして翼を広げ飛び出した。
彼女を見つけた。湖のほとりで仲間と戯れていた。俺は水面を引き裂き彼女のそばに降り立った。
誰もが俺を見て怯えていた。そして一人が逃げるのと同時に皆が逃げ出した。しかし彼女だけが逃げ出さなかった、いや逃げ出さなかった。俺の視界に彼女はすでにいるのだから。
俺は彼女にゆっくりと近づく、彼女は後ずさることもできなかった。俺は彼女に何をしたかったのか分からなかった好きで嫌いで大好きで大嫌い。頭が割れてしまいそうだった。
俺は彼女の横を通り過ぎ飛び立った、もう会うことはないだろう。彼女には彼女の居場所がある。
そんな時彼女はなにかに気づいたように口を開き、そして歌ってくれた。二度と聞くことのないであろう、彼女の歌を聴きながら、その声が聞こえなくなるまで飛び続けた。
涙が頬を伝った。
すこし前に書いたものを若干手直しして出しました
モデルは一応あるのですが、秘密ということで
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