そうだダンジョンに行こう。
新しい鞭に不味くない回復薬に接触型の毒薬が完成し、ダンジョン行く気満々だったんだがジョブの事すっかり忘れてたわ。
「いまさらなんだが、職が村人から村長にジョブチェンジした」
「ちょ待てよ。ランクアップ?!」
「ああ、家が完成した時にな。固有スキルで地鎮祭ってのが使える用になった」
【地鎮祭】
自らが所有する土地に限り使用することで魔物の発生、侵入を防ぐ。村長職限定スキル。
らしい。役所で土地を購入出来たのはこれがあったからだろう。
「ランクアップは今の所報告されてません。フェアリーリングで初ですよ?」
「そうなのか? まあ強くなる類いのジョブチェンジでも無いし、大した事でもないだろ」
これが『村人から勇者になりました、チートスキル満載の職です』ってんなら掲示板辺りで騒ぎになるだろうが、村長になっても出来るのは開拓だけで、俺ってばあいかわらず戦闘職でも生産職でもないんだよ。掲示板でもネタ職乙と草生えるぐらいなもんだ。
「そんな軽い物なの?」
「んーブラウのは楽観視しすぎだが、LVUPによる上位職化でもなさそうだし検証厨なら多少は……。特殊ランクアップの傾向がわかるのは大きいのは間違いないんだけど、あくまでも特殊だからなぁ」
そうそう。昨日は木蓮がはりきってしまったが効率プレイなんてする気はないし、ネタ職に金策に村作り、ダンジョン攻略、観光気分の遠出、これからは航海も入るだろう色々手出して遊べばいいのさ。
『ゲームは遊びじゃない!』なんて有名な言葉があるが、金も時間も労力も無駄遣いしないこのゲームは、能動的に動いていかないと本当に遊びではなくなってしまう。
っと何の話だっけ、そうダンジョンに行くんだよな。地鎮祭は木蓮主催で今晩も開催されるであろう蛾の乱獲済ませてからでいいだろ。
ここに来た時からダンジョンがある事は分かっていたのだが、放置していた場所。
そこは三角州の中に入り口があり、内部は鍾乳洞。干満によって海水が入り込み湿度が高くジメジメとしてハッキリ言おう。寒いぞここ。
良かった点としてはありがたい事に、鍾乳石が発光していて洞窟内だと言うのに暗くなかった。
それでも戦闘をするには薄暗いし、どんな条件で消えるかわからない光では心許ないので、松明を灯す。
これは中衛の俺と、後衛の木蓮がそれぞれ持っている。
「コウモリに海蛇の巣みたいですね」
「にしちゃあスケルトンが異質だから、スケルトンの住処を生き物が住み着いちまったって感じかな」
確かに洞窟の入り口からしばらくは生き物だらけだったな。しかし分岐を2つ越え3つ越えた辺りから生き物の姿を全く見なくなった。代わりに出てきたのが人骨の化け物。
こちらは毒付与の鞭と毒薬の効果を確かめようと言うのに、スケルトンは効果が無いようで完全に肩透かしだ。
肩透かしではあるのだが、強い。
「また来たぞ。前方視認1体」
若干の下り坂が続く洞窟内にタンクの藤やんが突っ込み、挑発スキルでヘイトを上げる。ルーが右脇から躍り出てハンマーで頭蓋骨ごと破壊しようとするが、スケルトンのバックステップで簡単にかわされてしまう。しかも手に持った剣で藤やんに引き胴を食らわせながらだ。
洞窟と言ってもほどほどに広く、前衛が左右にずれて確保出来たスペースに鞭を飛ばす。人型なら機動力が削げるで有ろう足首を狙った。しかし、これも片足を持ち上げるだけでかわされてしまった。
「奥に……奥に更に1体います!」
1体でも手間取るのにマジかよ。松明の灯りの更に先、鍾乳石のほのかな光に照らされるシルエットが持っていたのは剣ではなかった。
「ちっアーチャータイプだ。俺が引きつける」
「おい突っ込むと明かりから外れちまうぞ」
藤やんは敵意を一身に集め、攻撃を受け続けるのが仕事のタンカーだ。遠距離攻撃の出来る敵の出現に焦ったのだろう、剣士タイプのスケルトンを無視して突っ込んで行ってしまった。
剣での一撃は覚悟しての行動だったのだろうが、攻撃を受ける事無く倒れ込んでしまう。
「まさか特殊攻撃か? 援護するから、木蓮はすぐ回復頼む」
左手に松明、右手を短鞭に持ち換え突っ込む。後一歩で接触する。
突如目の前が真っ赤に染まった。音は鳴っている事はわかるが音量が大きすぎるのか耳が機能していない。そして全身が熱く感じられ、次の瞬間には体が浮いた。そこで意識が遠のいた。
目覚めるとそこは(ry
資材倉庫前だ。と言う事は、何が起こったかも分からないまま死に戻り。
怒りや悔しさよりポカーンだ。心情ポカーン。
「なにあれ」
「恐らく可燃ガスの充満していた所にブラウが持っていた松明で引火爆発じゃないかな。俺が突っ込んだ位置だと酸素が無かったのか息苦しいと思ったら気絶していた」
「ゲーム内で酸欠とか引火とかそんな……」
「フェアリーリングなら有り得そうなのが恐いわね」
可能性としてスケルトン、もしくは発見出来ていない他の敵による攻撃って可能性もあるが、一撃で1PTを全滅させる攻撃手段を持った敵が居るとは考えにくいので回避可能な罠に掛かってしまった可能性の方が高いであろう。
対策としては松明、ヒメアの火魔法禁止するしかない。
「鞭は粘りが無くてすぐ中折れしちゃうから、確かにダメージは期待出来ない。けどコウモリに使った限りでは毒が想像以上に有効だった」
「見ていると、気分が悪くなるのか一瞬動かなくなるような挙動していたな」
「洞窟内では生物には長鞭、スケルトンには短鞭でやって行くつもり」
「私は回復薬を皆が持っているおかげで、罠魔法に比重が置けるのが助かるわね」
確かに。道中では落とし穴や壁など、立地を変化してくれたおかげでかなり戦いやすかった。
戦って負けたなら踏ん切りもつくが、これからダンジョンに潜るには残念ながら時間が心許ない。
結局今回のログインの最後は、蛾の乱獲で幕を閉じた。




