表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/45

おら買い出しさいぐさ

 

 俺と木蓮の二人は、大量の建築資材を現地に持ち帰るため木蓮の店まで買い出しに来ていた。

【Shopセントラル】と書かれた看板の下には、店からはみ出さんばかり棚が並べられており、生産職であろうプレイヤーがそれぞれの目当ての商品を探していた。


「ティナさんただいまー」

「あっ店長おかえりなさいませ」

「個室使わせてもらうわね」

 従業員のNPCに声をかけて木蓮がずんずん進んでしまうので、俺は置いて行かれないよう必死に人垣をかきわけて着いていく。


「ふう、ここなら落ち着けそうだな。それにしても大繁盛じゃないか」

「活性化が目的だから利益率はそんなでもないんだけどね。それより建築資材は丸太と石材を半々でいいわよね?」

「丸太があれば俺が加工するから構わない。けど、木蓮はレンガ欲しいんじゃなかったのか?」

 彼女の希望の家はレンガ造りだったはずだが。

「ああ、レンガはスキル持ちが少ないから、統一素材で一軒分の材料ってなるとすぐには手に入らないのよ」


 木蓮が従業員に確認した所、在庫で充分な量が保管されているらしいが積み込みにしばらくかかるらしい。

 ここでお茶しているのも悪いし手伝うかな。


「人手が足りないなら……」

「せっかくだから生産したら? そろそろ金欠でしょ」


 腰を浮かしかけたが、魅力的な提案に腰を降ろす。

 確かに初期に泥啜りを売り出して一般的なプレイヤーと比べればお金はあったが、ここの所まともな生産活動などはしていなかった。木蓮の店で購入する予定の資材もタダではないし、俺たちではスキルが無くて購入するしかないアイテムも出てくるだろう。


「待ってるだけじゃ暇だから、久しぶりにやってみるかな」

「そうこなくちゃ。最近日本刀の鍛造・鋳造が成功して、鞘や柄がいくら受注しても追いつかないのよ」


 そういって箱一杯の木材と一緒に、壁に掛けられた一本の太刀を机の上に置かれた。鑑定しろって事か。


【武器】 鋼の大太刀 品質B- 斬属性

 物理攻撃 72 魔法攻撃 ー 耐久値 30 


 ちょっと待て! 性能が良すぎだろこれ!

 ちなみに俺の短鞭の性能と比較すると。


【武器】 茄子牛の短鞭 品質C+ 打属性

 物理攻撃 30 魔法攻撃 ー 耐久 122


 品質の差や鞭だと攻撃方法によって状態異常を与えられるのもあるのだが、それにしても強すぎる。俺の顔から疑問を汲み取ったのだろう、木蓮が若干のドヤ顔をして「このゲームのシステムを覚えている?」と質問してきたので答えてやる。


「確か人の脳を読みとってそれぞれ唯一のアイテムが出きるとかってやつだろ?」

「正確には『サーバー内のプレイヤーの意識を基準に』ね。プレイヤーが苦労して獲得した素材で、手を懸けて加工して現状のプレイヤーの大半が性能がいいだろうと思われる装備は実際に性能が高くなる。そして私達がいるのは日本サーバー」

「なるほど。サーバー内のほとんどが日本人だからか」


 ここまで言われてようやく理解出来た。俺を含めて日本人にとって日本刀は特別な意識がある。

 知識として、対人でも4人も斬れば脂で使い物にならなくなるとか頻繁に手入れしなければいけないだとか、そもそも武器が大活躍した戦国時代でも主力は槍兵だった等の知識はあるのだが、それでも日本人に最高の武器を聞けば日本人の大半が刀を選ぶであろう。

 そんな日本人プレイヤーの意識を元に数値化すれば、今目の前にある高性能武器になる訳だ。


「ちなみにアメリカサーバーだと銃がとんでもないステータスになってるみたいよ」


 銃に日本刀か……


「海外サーバーも同じ世界、海の向こうにあるんだよな。いつか俺たちで行ってみるか」

「ははっ地平線の先まで着いたと思ったら次は水平線の先? 気が長い話ね」


 冗談だと受け取ったのか木蓮は笑っているが、俺は自分の思い付きが気に入ってしまっていた。

 釣り好きなヒメアが近いうちに造船に着手するのは想像……いや確定している。

 始めは個人用の小舟でも、モンスターサイズを釣り上げる為には最低限モンスターと同じ大きさの船が必要になる。そこに海賊や商人に憧れるプレイヤーがいれば造船技術が一気に進むであろう。

 そしてある事だけはわかっている他サーバーの大陸。

 仮定を繋ぎあわせた物でなく、大航海時代が現実に始まる。そうとなれば俺は木工のレベルを更に上げて準備をしておかないとな。

 大海原は漢のロマンかつ、金の成る木だ。オランダ船だか黒船が日本サーバーに襲来する前に和船で乗り込んでやろうじゃないの。



「ねえ、それ鞘にしては大きすぎない? それに端が割れちゃってるわよ」

 おっと脳内で胡椒を山積みして帰港を目指している途中、クラーケンに襲われて戦ってた。そんな妄想中も俺の手はしっかり働いていてくれたようで、一本の鞘が出来上がっていた。


「ところで大太刀って売れてるよな?」

「男の一つ覚え、漢のロマンってやつね。うちは中間素材しか置いてないけど、日本刀を買う男はほぼ二刀流か大太刀かが半々みたいよ」


 机に置かれたままの大太刀を鞘から抜き、自作の鞘に差し替えて腰に履く。鞘は塗りも細工もしていないので不格好だがとりあえずはいいだろう。


 沸き上がる中二心を抑えつつ柄を持ってそのまま抜くが、大太刀の長さが邪魔をして抜ききらずに止まってしまう。

 木蓮の視線が痛いがまあ待ってろ。

 刀身が長い太刀は普通は鞘を投げ捨てて使う。

 今の様に腰に履いたままだと腕よりも刀身が長いので抜こうと思えば柄から刀身に握り直してやらないといけない。そんな事をすれば当然、自分の指が落ちる。


「この鞘ならここから鯉口を支点に腕を戻せば、鞘の切れ込みから切先が跳ね上がってくると」

「へーそのまま抜刀出来るね」

「腕の伸ばして戻して構えての動作が必要だから抜刀術には使えないが、いちいち鞘を外したり捨てるよりは手間がかからないだろ」

「いいアイデアだと思うわよ。でもそんなの今思い付いた?」

「うっ、あー現物みてたらなんとなくな」


 そこは触れてはいけないトップシークレットだ。間違っても中二心が詰まった【僕の最強武器集】から抜粋とかじゃないぞ。


 それはともかく、中間素材なので単価は安いが量産して、ただの鞘より割り増しで店頭に置いてもらえた。

 てかここから薬士の塗り薬に裁縫士の飾り紐に鍛冶士でも見た目に拘れば柄頭や鍔を小物のセンスを持った別の鍛冶士の部品を購入する事になる。

 幾人もの手を使ってようやく完成する事となるこの刀が果たして幾らになるのか……少なくとも純戦闘職には手が出せない値段にはなるだろうな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ