地上の楽園
桃園を抜け、西に進むとほどなくして、山と言うには低く、青々と繁る落葉樹の生えた丘陵地帯に入った。連なる丘を縫うように葛折れした道をアメザリが引く馬車が進む。自然を見に行くのに車を走らせなければいけない先進国に産まれた身としては、電柱1本建っていない景色と言うだけで立派な非日常。これで興奮できる俺は安い男なのかもしれない。
「さて、クランの情報だが、どう扱う?」
ちなみに新しい地形に入ったので戦闘してみたが、新たに出現したのは緑青色の『カッパーゴーレム(錆)』と、落葉に擬態して舞い降りてくる『刃紅葉(青)』の2種類。堅いゴーレムに手間取っていると全身鋭い刃となっている紅葉が頭上から襲いかかってくる。カッパーゴーレムのドロップ品である魔法銅は魅力的だったが、今回はPTメンバーであるヒメアの希望である海に着く事を最優先。
「流すか秘匿するか。の2択は決まってるよな。秘匿しても利益がまったくない。」
「まぁ上位クランに報償がってイベントはあるかもしれないが、秘匿したらイベント自体始まらないからなぁ。タダで流すか、ゲーム内通貨で情報を売るか、現金かの3択ってぇ所だな」
PT内での話し合いなので藤やんもRMTを選択肢に入れたが、お互い否定派だ。
「現金のやりとりはやっかい事のにおいしかしませんね。相場がわからないのでなんとも言えませんが、貴重な情報ならsでやり取りした方が後腐れがないと思います」
これは木蓮。ゲーム内通貨だな。
「現金は気に入りませんね。欲しかったら働きます。」
死に戻りでのリベンジを除けば、前に出たがらないルーが珍しく感情を表に出して断言する。腕1本と自分のセンスだけで社会を生きる者として思うところがあるのだろう。
「楽しみたいだけだからタダでいいんじゃない?」
俺と藤やんの意見は、「遊びでお金稼ぐってパチスロで生活費稼ぐみたいで格好悪いからRMTは無い」男が単純なのか俺たちが○○なのかはわからないが、最年少のヒメアとほぼ同じ意見。結局神殿で発行される契約書を利用してゲーム内通貨で情報を流すことに決めた。
その後も『年代別、男女別身につけるべきアクセのセンス講座byルー』や『SHOPの選び方。店員の転がし方講座by木蓮』などの講義に受講生が釘付けとなった。負けじと『男がのちに後悔する事(年代別)』を藤やんが力説している。目に強い光が飛び込んできて、顔をシカメながら前方を見ると木製の窓枠のにアメザリの甲殻が規則的に入り込み、その先に一面のコバルトブルー。
適当に聞いていた受講生達が一斉に馬車から飛び降りるとそこは丘陵地帯最後の丘の頂上。そこからなだらかに続く斜面になっていて、おりた先は白い砂浜。コバルトブルーの海面を上からみると、珊瑚礁が波でゆらゆらと揺れている。
「勝手に降りるなってぇ~30代第1位がまだ」
30代1位なんて下ネタ以外ありえないだろ。1鞭で黙らせると、改めてその景色を魅入る。
「向こう見て!お城が海に浮かんでるよ」
ヒメアの右手が指す方向に視線を移すと、大河と言うにはおこがましいが立派な河が中州を作り、海に注がれている。その更に先。天橋立のように続く砂浜の最終地点。そこに海面を切り取り突然建てられた白亜の城が海面の乱反射でいっそう光り輝く。
全員無言で自分の眼にその景色を刻み込む。
移動や時間経過で区切ると1話1500文字ほどになってしまう。。。




