地上は楽園
ひんやりとした湿気と圧迫感が支配する地下洞窟から抜け出した俺は今、太陽の光を全身に当てて深呼吸を繰り返す。日の光に桃のさわやかな香り、その間を抜けるそよ風。こういった人間として必要な栄養素を体中の細胞に取り込むと頭まですっきりする。
「待ってたコボよ」
「待ちくたびれたコボボ」
コボルト3義兄弟の元に戻ると、さっそくボススライムからドロップした依頼品である『越乃寒桃』を納品する。末弟がこちらに声をかける事もせず用意した杯にそのお酒を注ぎ3匹がそれぞれが詠唱する。
「我ら産まれた日は違うコボが」「死するコボボは同じ」「ここに義兄弟の契りを交わすべきコボ」
「「「クラン申請。名は『蜀漢』」」」
クエスト報酬を貰うために待ってたんだが、コボルト3義兄弟が勝手に蜀なんてそのままズバリな国を立ち上げやがった。国?国かぁ
っぽ~ん クラン申請が可能になりました。
頭の中に響く軽い電子音に俺を含めた4人の上に疑問符が浮かぶ中、藤やんがいつも以上に声を張り上げまくし立てだす。
「きたきたきたきたぁー」
よくわからないがとりあえずウルサいから鞭で黙らせる。俺は興奮している理由が分からないだけだが、ネトゲ初心者の3人に説明してやらないと言葉の意味自体わからずに、馬鹿みたいに口を開けてポカーンとしているだろ。
「痛っ鞭を人に向けてはいけませんって母親に。 悪ぃ説明するから早くそれをしまってくれ」
興奮から冷めたようなので鞭を纏めて右腰に仕舞うと、女性陣も口を閉じて聞く体勢に入る。
「クランってのは、他のゲームならギルド・一門・変わった所だと商会とも呼ばれる、いわば仲間が集まったチームの事だ。パーティなら最大6人だが、フェアリーリングの公式ではクランは40人以上所属できる。
利点としては、同じ目的を持った仲間がたくさん居ればそれだけPTが組みやすくなるってのがデカい。ネットゲームでありがちな『ゲームで遊ぼうとしてインしたのに、人が集まらなくて1時間待ちぼうけ』みたいなのが格段に減る。」
PTで遊ぶ事を念頭に置いたネトゲでは映像が綺麗とか作り込まれたストーリーより、良い仲間に巡り会えるか。が、そのゲームの面白さに直結したりするもんな。
「まぁクランシステムについてはヘルプに出てたから割愛するが、大事なのはクラン申請が出きる『桃園の誓い』クエストの情報を誰も知らない事だ。」
藤やんが言いたい事がようやく分かった。ボリューム層(程々のプレイ時間で普通に遊ぶ人)でしかゲームした事の無い俺には縁の無かった話だが、ゲーム自体の面白さを左右するシステムの情報。欲しがる人は山ほどいる事だろう。女性陣の中でも情報の価値を知る社会人の二人は重要性に気づいた。ヒメアがただただ話を聞かされる時間に飽き始めてしまっているので一端切り上げて馬車に乗り込む。
「我らの事も覚えておくコボよ」
「立派な国を作るコボボ」
「かならず会いに来るべきコボ」
いつの間にか1升瓶を空けていたダメ犬共に別れを告げ、向かうのはさらに西。
この時点でロックウェブの街から馬車で4時間弱の距離、フィールドではゆとりを持って戦闘出来てはいるが、ダンジョンが厳しくなってきた。海までたどり着いたらヒメアに釣りをさせて、一度戻るのもいいかもしれないな。
あけましておめでとうございます。
目標であった読了100分越えと11万ユニークを達成する事ができました^^v
あと、胴体着陸になりますが、未完で投げ出さないってのが最大の目標なので、なんとかこぎ着けてみせますw




