暗い狭い怖い
ヒメアの詠唱が完了すると、うぞうぞと地を這う黄色や紫色をした粘着質の集団をまとめて砂嵐が襲い、蓄積されたダメージが限界を越えたのか次々と軽い破裂音を放ち消滅する。
「後ろからまた気持ち悪いの来た~」
ごつごつとした岩肌に手をやりながらドロップアイテムを回収して振り返ると、最後尾にいる木蓮が提げているランタンの光の端にスライム=『気持ち悪いの』が近づいていた。スライムはRPGどころかパズルゲームにも登場するメジャーなモンスターだが、フェアリーリングのそれは打撃耐性・斬撃耐性・刺殺耐性・状態異常攻撃持ちの嫌らしい特徴を持っていた。
それでも耐性であって無効ではないので多少の被害は気にせず奥に入り込んだのを後悔した時には遅かった。
メインストーリーに沿って進んでいない俺たちはダンジョン戦闘に対して経験値が足りなかったのだろう。フィールド上であればどの敵を狙うか、援軍になりそうな敵はいないかを確認して戦闘。MPが減れば馬車に乗り込み絶えず万全の体制で戦闘が出来ると。実際スライム程度の敵であればちょうど良い経験値稼ぎにしか思っていなかった。
それがダンジョンではHPが減れば薬か木蓮の回復魔法だより。そして要のMPが切れても自然回復できるだけの休憩地点がみつからなければあとは一か八かの強行突破か死に戻り以外の手がなくなる。
実際インベントリとなっているポケットの回復薬は安全に帰れるだけの数はもうない。
無言の5人で暗いダンジョン内をランタンの明かりを頼りに更に奥へと進む。スライムを倒し、目的地に近づいているはずなのに空気が重くなるのは洞窟と言う状況の性も大きい。暗く、狭い上に低温で湿気を帯びた空気。一人だったら・・・・
いかん 思考まで暗くなる必要はまったくない。ポップを奪い合う事もなく連戦を続けられ、たとえデスペナの装備劣化を受けたとしても生産スキル持ちの集まりである俺たちのPTだと損失より戦闘の経験を含め利益の方がかなり多いのだから割り切って攻略しよう。
「・・・なぁシリトリしないかぁ?」
「やめておけ。こんな状況で始めたら脳が破壊される」
重い空気を変えようと精一杯ネタを振ったのだろうが、リンゴ~ゴリラ~ラッパの時点で思考能力が停止して死に戻る未来がはっきり見える。
☆★☆
「ん~マップも取りこぼし無くほぼ埋まってますし、休憩地点からボス部屋まで距離があるとは思えないのでもう少し頑張れば着くはずです」
脳も体もなんとか破壊を免れ、破壊這々の体でたどり着いた5m四方ほどの休憩部屋で自然回復を待っているが、ルーの言葉通りなら外に出られるのも近そうだ。それに
「それに依頼クエストでここに潜ってもう1時間。ここから更に時間とられるようなクエは流石にないだろ」
1つのクエストで数時間を長時間拘束するようなクエストはMMOでは基本的にありえない。
「んじゃさくっとボス倒しちゃいましょう。そだ。スライムの体液は炭酸ジュースに『調理』出来るみたい。袋一杯あるから外出たら期待しててね。」
「「「「。。。」」」」
元気が戻ったヒメア以外の言葉に絶句するが、視線を向けると他の3人も同じ事を思ったらしい。
現物さえみていなければね。。。
休憩室を出た俺たちは、最低限の戦闘に抑えて一本道を走り抜ける。と正面に現れた、岩肌がむき出しになった自然洞窟に似つかわしくない両開きの扉をそのままの勢いで走り込む。
入ると明かりが灯り、素人による作業であろういびつな平らに均された部屋の隅には粗末なベッドに机。正面には無数の水晶が宙に浮き、その中央に水で満たされた巨大な水槽へと光を当てているものの、中には何も入っていない。
「ここまできて行き止まり?」
「いや 来るぞ!」
ボス戦用の緊迫した音楽が鳴り響き、中央に据えられた水槽から水?が溢れだしている。
イブにヒマだったから投稿したわけじゃないんだからねっ!!




