井神 真希 (いかみ まき)
「うあー明日学校行きたくないー…」
クラスの発表会で盛大に噛んで笑われた日の帰り道。私は一人で通学路を歩いていた。なんでいつも私はドジばかりしてしまうんだろう。何か前世に悪いことでもしたかなぁ。今まで小さい悪いことはたくさんしてきたかもしれないけどそこまで厳しく罰しなくたって…嗚呼もう。
「ちくしょー! …あ、え?」
上を向いて叫んだら人がいた。明確に言うと電信柱のてっぺん。9月なのにマフラーを巻いた男。その男はそこに何の危なっかしさもなく座り込んでこちらを見ていた。 …見てた!?
「キャー! すいませんちょっとさっきの聞かなかったことにしてくださいお願いしますー!」
「うわああ! すんません今ここに俺いるの無かったことにしてくださいお願いっすから!」
「…え?」
「…あ?」
二人同時に取り乱して二人同時にきょとん顔って傍目から見たらどれだけ滑稽だろうか…。 …というか、見たことある顔な気がする…。
「…あ、もしかして井神? なんだクラスメイト…っぷ、くく…噛んでた…よな、確かっふはっ」
「…ちょ、まさかクラスメイト…ってか、発表会引きずんな真冬男!」
「は!?なんだよ真冬男って!マフラーなのはわかるがもう少しまともなのあるだろ!名前一文字も掠ってねェ!」
「え…名前…、君にそんなものあったっけ…?」
「有るよ!里葉だよ忘れんな!」
急に降りてきた。ビビるわ…。そして相変わらずちっせぇ…。
「お前今ちっさいとか思ったろ…。マジで殴りてぇ…殴っていい?」
「駄目よこの可愛い顔に傷がついたらどうしてくれるの」
「うわぁ」
…ここまで会話しといてなんだけどむしろすっかり忘れてたけどこの人は超能力者だったのか…。だってさっきまで電柱の上にいたし…。
「いや超能力とかねェよ?」
「心を読まれた!やっぱり超能力…!」
「声に出てたからな? 馬鹿なの?」
…またやっちまったァ! なんで私はいつもこう…。
「…じゃあどうやってあんなところに」
「……………普通に上った」
「何やってんの馬鹿?」
「いいんだよ俺運動神経いいから」
「150㎝無いわりにはね」
「殴りてぇ…!」
まあ運動神経はいいよね。小さいくせに立幅250㎝超えてるし。いつも一緒にいる遠城も運動神経いいしなぁ…。
「…ってアレ遠城くんは?」
「そっちは普通に覚えてんのな…。 今日は用事があるんだと」
「あーうん夏冬コンビで。ホントいつも濡れタオル被ってる人とマフラー巻いてる人並んでると違和感いっぱいで。 用事かー残念だね(周りの腐女子が)☆」
「括弧内どういう意味だてめぇ」
よくそういう噂たってるのは気づいてるんだよね…。
「知ってるが気にしていない!」
「また読まれた!」
超能力者じゃなかったらなんなの一体!
「ちょっと空気読める人」
「嘘だ!あんたが空気読めるはずない!」
「いいきんな!」
「で、遠城君は何の用事なの?」
「急に話変えたなお前。確か今日どうしても手に入れるべきものがあるとか言ってたけど」
「なにそれすごい謎」
「え?普通にそんなもんじゃねェのか?」
「いやいやいやないないない。 え、なにあんたら両方そんな感じ?隠し事とか結構あるタイプ?」
「普通に他人に言わないことは遠城にもいわねぇよ。お互いそんな感じだ」
「意外と冷めた友人関係ね」
「えー…。でも普通だと思うんだ…」
「いや。親友には全部打ち明けないと!」
「親友ではないとお互いに考えていると思う」
「冷たッ!! ひっどそんな風に考えてたの!?」
「あぁうん。だって親友ってほどお互いに開いてないぜ?家に遊びに行ったことも来させたこともないし、昼食とかも一緒に食べていると思われがちだけど一回もそういうことはない」
「マジか!マジなのか!マジでそんな冷めた関係なのか!」
「何その恋人みたいな言い方。 というか日が沈んだぞ通り魔出るぞ早く帰れよ」
「!わあああホントだ通り魔怖いもう帰るじゃあね!」
「っわ嵐かお前声でけぇ! …じゃあなー」
そういって彼は電柱にまた飛び乗って帰って行った。 ってあれ、一回で飛んだよね普通に上ってないよねやっぱ超能力だよね!?
副題は「小休止」です。