8.ライバル
少し前に遡る−
私、千歳愛菜は学校帰りにある女の子に声をかけられていた。
「ねぇねぇ、愛菜ちゃん!」
「この学校に来てからカッコいいって思った人とか、気になる人とかいたりしないの?」
そう声をかけてきたのは同じクラスの柊紗奈さんだった。
この人が兄と一緒にカップル限定パフェを食べていた人…、少し探りを入れてみることにしよう
「もちろんいるわよ」
「えっ!だれだれ?」
紗奈さんは私の話に興味津々のようだ。
「んーそれはちょっと秘密かなー、でも紗奈さんとも関わりがある人かな」
とりあえずはぐらかす
「逆に聞くけど紗奈さんには気になる人とかいないの?それか付き合ってる人とか」
兄との関係を知るためにそれとなく質問する。
「彼氏はいないよ、でも気になる人は…いる…かな」
「もしかして千歳湊くん?」
私がそう言うと紗奈さんはとても驚いた表情を浮かべた。
「実は…そうなんだよね…」
「っていうかなんでわかったの!?」
「よく仲良さそうに話したり、一緒に帰っているの見たことあるから、もしかしたらそうなのかなって」
私はよく兄の後ろをついて行ってるので、誰と帰って、どこに寄っているのかくらい当然把握している。
「湊くんには内緒にしてね!」
紗奈さんは頬を赤らめ可愛らしい表情をしている。
もう少し深掘りしてみるか…
「千歳さんと紗奈さんはどれくらいの付き合いなの?」
「えーっとね、親同士が仲良くてその影響で結構前から知り合いだよ!小中高と同じなんだ!」
嬉しそうに、どこか自慢げにも見える表情で紗奈さんは言っている。
「つまり幼馴染ってこと?」
「うん!」
幼馴染か…これは手強い相手になりそうだと思った。
「まぁでも私の、私だけのお兄さんは渡さないから…私のお兄さん♡」
。
「愛菜ちゃんの気になる人も教えてよー!」
「私も湊さんの事気になってるよ」
正直に打ち明ける。
「え…」
急にこんなこと言われたら驚くだろう。口をポカンと開けている。
「で、でも関わってるの見たことないけど…?なんで気になってるの??」
同居してる、この事を言ったら簡単に説明がつくと思う。
でもまだ兄さんが紗奈さんに私と兄さんが義兄妹であることを伝えていないと思う。
なので紗奈さんには悪いけど嘘つかせてもらうね…
「一目惚れっていうか、なんというか…そんな感じだよ」
「そっか…じゃあ私たちライバルってことなんだね」
「まぁ、そうね」
「私負けないからね!」
紗奈さんはどこか自信に満ちているように見えた。
立場的には私の方が不利ではあるかもしれない。
でも、ここまで2人は長く関わってきたのにあまり進展が無さそうに見えるので、私にも勝機はありそうである。
まぁ今はライバルということにしておこう
そうして私は家に帰り、手帳に柊紗奈、兄さんの幼馴染、そしてライバルであり要注意人物と書き込んだ。