1.突然の出会い
僕の母は2年ほど前に離婚した。
原因は父親の浮気だったらしい。
でも同時の僕は信じることができなかった。
母と父は仲が良く、お互いにお互いを大切にしているように僕の目には映っていたから。
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母からの知らせは突然のことだった。
「湊、お母さんね新しい人と再婚しようかなって思ってるの」
「そ、そうなんだ…」
再婚という2文字に僕は驚きのあまりまともな返事を返すことはできなかった。
そして口から出た言葉は冷たく聞こえる返事。
けれど胸の奥では、むしろ安堵していた。
母は父を深く愛していた。
だからこそ、裏切りに打ちのめされ、心も体も壊してしまった。
立ち直るまでに、長い時間を要した。
そんな母が、再び前を向き、誰かと歩もうとしている。
嬉しくないはずがなかった。
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「そういうわけで、明日お相手の名取さんが挨拶に来るの。
それとね、湊と同じくらいの年齢の娘さんもいるらしいのよ」
「……同年代の女の子?」
「そう。愛菜ちゃんという子でね。写真を見せてもらったけれど、とても可愛らしい子なの」
「……あはは、そうなんだ」
曖昧な笑みでごまかす。
僕――千歳湊には、女の子と親しくした経験がほとんどない。
その僕が、いきなり同じ年頃の女の子と暮らすことになる。
不安がないはずがなかった。
「……優しい子だといいな」
心の中で、ただそう願うことしかできなかった。
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翌日。
玄関の呼び鈴が鳴った。
映ったのは、背の高いスーツ姿の男性と、肩まで伸びた黒髪の少女。
名取さんと、その娘だとすぐに分かった。
鼓動が早まる。
深呼吸をして、落ち着ける。
母が玄関へ出て、和やかに挨拶を交わした。
その姿に「優しそうな人だ」と思い、僕の緊張も少し和らいだ。
「こんにちは、千歳湊です」
「こんにちは、湊くん。名取和也と申します。よろしくね」
柔らかな笑顔で答える名取和也さん。
僕も一礼し、隣の少女へと視線を向けた。
「こんにちは、名取愛菜です」
その声は澄んでいた。
けれど、その目は――冷たかった。
僕にだけ、そう向けられているように思えた。
「よ、よろしくお願いします」
不安がぶり返し、声がわずかに震える。
これからうまくやっていけるのかな…
そう心の中でつぶやいた。
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その夜。
名取さん親子が帰り、母と二人で夕食を囲んでいた。
「名取さんたち、どうだった? とても良い方たちでしょ?」
母は期待に満ちた目で問う。
「うん……優しい方たちだったよ」
愛菜さんの冷たい視線が頭から離れなかった。
けれど母を心配させたくなくて、そう答えるしかなかった。
眠れぬ夜になる――そんな予感がしていた。
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そのころ。
父が再婚し、私は千歳湊という同年代の男の子と暮らすことになった。
だが、私は男の子が苦手だ。
昔から中身を見ようともせず、容姿だけを理由に告白してくる人が多かった。
そして、断ればありもしない噂を流す。
そんなことばかり繰り返された。
だから――私は男の子が嫌いなのだ。




