表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/51

氷の薔薇

 そういえばロナ以外手ぶらで来ている。

「みんな、荷物は?」

 三人が顔を見合わせる。聞くまでもなかったが、持ってきたい物がないわけではあるまい。馬車か何かで持って来られたらびっくりするが、多少の荷物なら対応できるだろう。

「じゃあ、各々荷物を持って夕方にまた集合しようか」

「はーい」

 ロナは行かなくてもいいだろうと思ったが、大きなトランクを残して行ってしまった。さっきまであんなに騒がしかったのに、急に静かになってしまった。

 私も自分の持ち物を持ってくることが出来たらいいのに。枕だけはどうしても使い慣れたものでないと、安眠できない。何度も作り直しているのだが、年月に勝るものはなかなか作れない。それでも、今日はぐっすり眠れそうだ。


 みんなが帰ってくるまでに、仮の部屋を作って一応寝具も揃えておいた方がいいか。ゼノは荷物が少ない気がした。着物すら持って来ないような気がするが、さすがにそれは無いだろう。部屋の内装は畳の方がいいのだろうか。和風な服装の彼ら。畳の部屋でくつろいでいる姿を見たい。とりあえず畳にしておこう。要望を聞けば、木目調の床がいいと言われるかもしれないから。

 外に出て、大枠を作っていると足音が聞こえた。もう誰か帰ってきたみたいだ。

「おかえり」

 振り返ると、花束を抱えたアインが立っていた。

「久しぶりだね」

「そうね」

「元気だったかい?」

 あまりにも自然に話しかけて来るものだから、うっかり返事をしてしまった。

「ずいぶんと賑やかになるみたいだね」

「……」

 関わりたくない。でも、こんな顔をさせたい訳でもない。どうしたらいいのだろう。

「良かったら、お嬢さんに」

「受け取れません」

 こんなもの見つかれば、またゼノが燃やすだろう。それにアインと接点があると知られれば、あの仲間たちとは一緒に居られない。

「分かっているよ。だからこれを」

 そっと手を取られ、渡されたのは花束から抜き取られた氷の薔薇一輪。なんて冷たい手なのだろう。氷よりも冷たくて、心まで凍ってしまいそうな温度。

「また来るよ」

「あの」

「誰も居ない時にね。では、また」

 残りの花を持って帰ってしまった。もし、アインもここに住んだらどうなるだろう。そんなありもしない未来を想像してみる。

 彼らの間にあるわだかまりを取り除く事が出来れば。三国が争い合うことのない世界に出来れば。いつかアインもなんて、何を考えているのだろ。彼はゼノを殺した憎い人。その事実が消えたとても、私の中の記憶は色濃く残っている。


 余計なことは考えないようにしなければ。ゼノを守るかとが私の指名。ここに居る意味だから。


 皆が続々と戻って来た時、手の中の薔薇は冷たさだけを残して溶けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ