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魔法の屋敷

 どうか何事もなく今日を過ごせますように。願っても何も変わらないのだが、私にはできることはない。ゼノが警戒しながら扉を開けるが、その場で立ち止まった。後ろの二人は家に入るつもりでいたようで、勢い余って三人が将棋倒しになった。

 彼らが目にしたのは一体誰なのだろう。急いで彼らの元に向かい、部屋の中を覗くとロナが一人でお茶をしていた。まるで自分の家に招き入れるような装い。なぜ、人の家なのにこんなにくつろげるのだろう。ゼノやルーヴェルもそうだが、この世界の住人は皆そうなのだろうか。

「なんでお前が居んだよ」

「ボスから、仲間になったって聞いたの」

「だからって、勝手に家に入って来んなよ」

 あなたも勝手に入って来てたけど、とは言わないでおこう。ゼノは特別だから。だが、誰でも入ってこられるのはあまりよくないかもしれない。

 でも、鍵をかけるとみんなが入ってこられなくなる。どこかで番犬を見つけてこようか。ケルベロスあたりがいいのだけど、近くに居たりしないだろうか。偵察に長けているトーガなら、いろんな情報を知っているかもしれない。

「トーガ君。この辺りに動物っているの?」

「はい。鹿や兎などが生息しています」

 あまりにも普通な答えが返ってきて驚いた。家の近くの森にも「動物注意」との文字と共に、絵が添えられている動物だ。

「ケルベロスとか、ドラゴンとか居たりしない?」

 何言ってんだけこいつ、と言いたげな顔をしてみんなが私を見る。この世界観ならドラゴンの一匹や二匹居てもおかしくはないだろう。

「もしかしてお師匠、捕まえようとしてます?」

「番犬になってくれたらいいなと思ったんだけど、無理かな」

「応じはくれないと思います」

「そうか。でも、存在しては居るんだね」

「でも、絶対に駄目ですよ。マグマの池と冥界の門に行くのは命がけですから」

「そこにいるんだ」

 ゼノから大きなため息が出た。きっと、私がやろうとしていることが分かったのだろう。

「行くだけ無駄だぞ」

「なんで?」

「言われねえと分かんないか?それに番犬なら間に合ってるだろ」

 それはゼノが番犬の代わりになって守ってくれるということだろうか。期待の眼差しで彼を見ると、そっぽを向いてしまった。その気持ちは嬉しいが、私が作りたいのはゼノを守るための要塞。その奥に閉じ込めてしまいたいのに、彼は私の思惑の反対のことをしようとする。

「へぇ。君、自分のこと番犬って言っちゃうタイプなんだ」

「悪いかよ」

 否定しないんだ。確かに家の前に立っているだけで、いろんなものを追い返してくれそうではあるが。

「ゼノ君、そんなに可愛かったっけ?」

「俺は可愛かねぇよ」

「ロナちゃん、分かるの?」

「え?」

「ゼノ君の可愛さ。今まで誰も分かってくれなかったんだよ」

 ゼノの可愛さについて語りたいが、本人が居る前では止めた方が良さそうだ。それに、彼女と過ごす時間はまだまだありそうだ。これ以上口を開けば、ゼノから怒られそうだ。それに、悪い顔したレインが聞き耳立てている。

「ねえ、その荷物はもしかして」

「私もここにお邪魔することにしたの」

 そうだろうと思った。足元には大きなトランクが置いてある。それにしても可愛らしいデザインだ。革製だろうか、茶色い本体にベルトが巻かれている。そしてさりげなくてレースの模様が施されていた。

「ここに居ていいよね」

「もちろん」

 まさかこんなに増えるとは思っていなかったが、こうなれば豪邸でも作ってしまおうか。一人で過ごすだけなら、質素な中に少しの好きなものを取り入れるだけで満足だった。気に入ってはいたが、急遽作ったものだったし。

 でも、本格的に住むとなれば改良の余地は大いにある。これだけ増えたのだ。まだ、人が来るかもしれない。それにケルベロスを連れて来るのは諦めたわけではないから。

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