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増えた弟子

「ねえ、エトちゃん」

「なに?」

「俺も弟子になっていーい?」

「いいよ」

 まさか承諾されるとは思っていなかったらしく、レインは驚いた顔をした。弟子になりたいと言われるとは思わなかったが、何かしら家に居座る口実を作ると思っていた。

「え、ほんとにいいの?」

「いいよってさっき言ったじゃない」

「いや、だって。即答してもらえるなんて思わないでしょ」

 こうなれば二人も三人も変わらない。みんなまとめて、家で過ごすといい。その方が賑やかになるし、みんな気が紛れるだろう。

「おい、本当に大丈夫なのか?」

「まかせてよ 」

 こんな共同生活なんてしたことないが、今とてもわくわくしている。ここは物語の世界。現実では叶わないことが出来るのだ。まあ、一部出来ないこともあるのだが。それでも、想像したことの多くは叶えられる。


 人には言いたくない過去を抱えた者同士。仲良くしてほしいとは思わない。ただ、似た傷を持ったかけらなら通じ合うことがあると思う。

 だから、もし不安に眠れない夜があるなら夜通しトランプやオセロをして一緒に朝を迎えたい。

 もし朝起きたくないのなら、家中の窓を全て閉める。そうしたら朝も昼も分からないから、起きる必要がなくなる。お腹がすいても、問題はない。作り置きのおかずとデザートは常備している。

 それか、焼きたての食パンをランプの火に照らされながら食べる。なにも話さず、ホットチョコを片手に炎を眺める。みんながそれぞれ好きに過ごせる場所にしたい。

「でもね、一つだけお願いがある」

「なんなりと」

「私はゼノ君を守りたくてここに居る。だから、協力してとは言わない。ただ、邪魔だけはしないで。このお願いだけは、守ってほしい」

「分かりました」

 トーガは分かっていたと言わんばかりの素早い返事。けれど、レインは少し考えて口を開いた。

「俺がゼノに怪我させてしまったら?」

「それは二人で解決して」

「じゃあ、うっかり氷漬けにしてしまった場合は?」

「その時はあなたを追い出すよ」 

 ただの喧嘩なら、邪魔はしないが敵意を持っているのなら黙っている訳にはいかない。できる限り、その様な状況は避けたいが可能性はゼロではない。注意深く見守る必要はあるが、レインからはそんな悪意は感じられない。

「でも、レインはそんなことしないでしょ」

「ああ、もちろん。出来はするけどね」

「喧嘩売ってんのか」

「そう聞こえたかい?」

 本当に仲が悪い二人だ。彼らの部屋は、互いに一番離れた場所に作った方がいいだろう。


 家が見えてきた。やはり普通の家が安心する。氷の城にも住んでみたくはあるが、きっと広すぎて居心地が悪いだろう。私は部屋の隅で細々とした作業をするのが好きだ。だが、あの家の広さでは四人で生活は出来ないだろう。

 とりあえず簡易的な部屋を作って、明日から本格的に作業することにしよう。まずは、お茶をしてゆっくり過ごそう。そして、それぞれの部屋の要望を聞くとしよう。

 この、小屋の様な家も気に入っている。それをベースに増築したらいいかも、なんて想像を膨らませながら家を見ると、煙突から煙りが出ている。


 まだ、三人は気づいていないみたいだ。

「そうだ。私、部屋の掃除してくるから、どこかで時間潰しててくれる?」

「俺は散らかってても気にしないよ」

「散らかってたことねぇだろ」

「ふーん。詳しいんだね」

 またもや喧嘩の予感。だが、家に近づかせないようにできるならちょうどいい。


 家の中に居るのが誰なのか、確認する時間が稼げればいいのだが。私の家に勝手に入って来るのはゼノはしか居ないが、アインが時々訪れる。けれど、窓の外から声をかけられる事がほとんどだ。でも、その他の人は思い浮かばない。

「お師匠、家に誰かいます」

 その一言で、ゼノとレインの視線が家に向いた。

「いや、私が火を消し忘れたかもしれない」

「それなら、俺が消してあげよう」

 レインが適任なのは間違いない。だが、アインと鉢合わせしたらどうなるだろう。面識があるかは分からないが、穏便には済まないだろう。

「いや、大丈夫。片付けのついでに消すから」

「危ねぇだろ。火なら俺に任せろ」

「ありがたいんだけど、大丈夫だから」

「駄目です、お師匠。人の気配がします」

「戦闘なら俺に任せとけ」

 そう言ってゼノは家に向かってしまった。それに続いて、レインとトーガも追いかける。

「みんな、待って」

 大声で呼ぶが、止まらない三人。でも、これは彼らに呼びかけた訳では無い。中に居る誰かが、外の様子に気付いて呉れるようにと願った。

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