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温度

 私が彼らの立場ならそういうだろう。得体の知れない、しかもなんの力も使えない。そんな人に期待など持てないのは分かる。自覚があっても、直接言われるとやはり傷つくものだ。

 トーガが言い返そうとするも、制止する。私を擁護すれば彼の立場が悪くなる。それは絶対にあってはならないことだ。ここは、彼にとっての帰る場所。奪うくらいなら、傷つくなんて安いものだ。私が黙っていればそれでいいのだから。


 しんと静まり返った室内に、悲鳴が聞こえた。ルーヴェルとゼノを除く幹部達が一斉に暴れ出したのだ。

「あっちい」

「なんだこれ」

「おい、今すぐやめさせてくれ」

 何事なのか理解できないトーガと私は顔を見合わせ、互いにぽかんとした顔をした。ルーヴェルとゼノはなんともないようで、暴れる仲間を見ていた。

「ゼノ。笑ってないで、早く消せ」

 ルーヴェルは苛立ったように、足元を払った。大きなテーブルの下を覗くと、彼らの足は炎に包まれたいた。騒ぎの発端はゼノだったよう。

 ルーヴェルのことは避けていたのかと思ったが、もれなくゼノの炎に捕まっていたようだ。さすがはボス。ゼノが炎を広げる前に、氷で跳ね返したのだろう。ということは、トーガと私は意図的に外していた。だが、レインと寝ていた彼は攻撃を免れなかったようだ。

「俺、とばっちり受けたんだけど」

「僕だって、寝てただけなのに」

「わりぃ。手が滑った」

 ゼノは手元に火の玉を集結させた。

「いいなー」

 ゼノはその炎に触れさせてくれない。何度お願いしても嫌がったのに。他の人には頼まれてもいないのに提供している。羨ましくなり、とっさに言葉が出たが、皆ぎょっとした顔をしていた。そんな顔しなくてもと思ったが、あの慌てよう。かなりの温度なのだろう。別にむやみやたらと炎に手を突っ込みたいと言っているわけではない。ゼノの炎に触りたいだけだ。そう言っても理解してくれそうにないので黙っていることにした。

「お師匠、寒さでおかしくなってしまったのですか?」

「失礼ね」

「申し訳ありません。お師匠はおかしくなんかありません」

「自分の意見をしっかり持たないと」

「はい。お師匠はおかしいです。いや、でも少しだけかもしれません。たぶん」

 私たちのやり取りを見てぜ、ゼノは静かに笑った。なにが気に入ったのかわからないが、どこか機嫌がいいように見えた。

「トーガ、気にするな。こいつは元からおかしい奴だ」

「ちょっと」

「俺みたいなの、助けるような人だ。ほんと、変わってる」

 褒められたような気もするが、やはり違う気もする。だが、いいことが一つ。熱いということは分かった。炎なのだから、もちろん熱いに決まっている。けれどその美しい青からは熱を感じなかった。どこか冴えているような、凍てついているような。なんともいえない神秘的な雰囲気を纏っている。いつかその冴えた熱に触れることが出来たのなら、もっとゼノのことを知ることが出来ると思うのだが。

 まあ、普通に考えて炎を触らせてくれる人などいないだろう。けれど、最後のお願いになったなら聞いてくれるかもしれない。その炎に包まれて眠れるのなら、きっと私は思い残すことはないのだろう。だが、それではゼノを一人にしてしまうということになる。それはいけない。私は傍にいると約束したのだから。ゼノが幸せになるまで隣にいなければ。

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