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温度の違い

 玄関に立たせておくわけにはいかないので、部屋に入ってきてもらった。ゼノが立っている窓際から一番離れた壁の近くに椅子を置き、座ってもらう。

「ねえ、ゼノ君」

「なんだ?」

「彼の服を乾かしてくれたりは」

 食い気味に「しない」と言われ、「ですよね」と答えるしかなかった。

「構わないよ。ほら」

 アインが濡れた服や髪を撫でると、水滴は凍りつき床に散らばった。自分で解決出来るなら、早めにやって欲しかった。気を遣う必要以上なかったし、ゼノの機嫌もさらに悪くならずにすんだのに。


 急に寒くなった。アインの落とした氷の粒は溶けずに床で煌めいている。とても綺麗だけど、このままにしておけない。溶けたら掃除が大変そうそうだし、ゼノの顔色も晴れない。

「この氷、外に出してくるね」

「俺がやる」

 ゼノはその場から動くことなく、炎で氷を焼いてしまった。水滴一つも残さずに。炎はアインを威嚇するように、燃えている。

 ゼノの炎はどれほど熱いのだろう。何度も見てきたが、触れたことは無い。普通、炎に触れるなど考えもしないだろう。そんなことをすれば火傷することは分かっている。けれど、知りたい。その青く揺らめく炎はどんな感じなのか。

「なにしてんだ。危ねぇだろ」

「ごめん」

 慌てたような声に我に返った。だが、後悔した。ゼノは炎を消してしまった。彼の炎になら灼かれてもいいと思ったのに。火傷の痕が残っても構わない。ただ、触れたかっただけ。


 すぐそばに居るのに。手を伸ばせば届くのに。どうしても、ゼノに触れる事が出来なかった。とっさに手を掴むことはあったが、それは反射的に動いていただけ。そこに私の意思はなかった。だから、まだゼノは次元の違う遠い存在のままだった。

「それなら僕が作った氷を触るかい?」

 アインは何もない手を握り、開くとそこには美しい氷の結晶。それはとても細かい模様で、顕微鏡でも使わないと細部まで確認出来ないのではないかと思うほど。触ってみたいけど、まだアインのことを信用している訳ではない。一時的に家に置いているだけ。雨が止めば、もう関わることは避けなければ。

「氷なら火傷の心配はないよ」

「やめとく」

「そうかい。では、こんなのがいいかな?」

 両手て氷の結晶を包み、再び開くとそこには綺麗なティアラがあった。体温で溶けることのない氷は、一瞬で心奪われるくらいに美しい。しかし、それはすぐに溶けてしまった。

 アインの手のひらで炎が怒り狂っているように燃え上がる。やっぱり綺麗だ。青い炎も、それを見つめるアインの瞳も。

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