青色の世界
ゼノを好きになった日、私の世界は青一色に染まった。持ち物や服にも青を取り入れたり、ゼノをイメージしたネイルをしてみたり。
止まっていた時間が動き出したように感じた。初めてアクスタを買った日は、ひとりにやけそうなのを抑えるのに必死だった。
棚の上に置き、配置替えをしたり自作の額縁にイラストを飾ったり。そこだけが別世界のように感じていた。だから、外の世界で嫌なことがあってもここに帰れば大丈夫。そう思うと、少しだけ強くなれた。
私が頑張れる理由は全部ゼノからもらった。だからそのお返しがしたいだけなのだ。それはあの世界では叶わなかった事。ここに居ても出来るとは限らないのだが、それでも行動しないことには分からない。
「ゼノ君は知らないと思うけど、あなたに救われたんだよ」
「なんだよそれ」
「だから、今度は私があなたを救いたい」
それはゼノが望んでいることなのかは分からない。そんなこと願っていないと言われれば迷惑になるかもしれない。分かっていても、何かを返したいと思ってしまう。それほどに私の人生に大きな光を灯してくれた。
「俺の事なんて放っておけばいいのに」
「それは出来ないよ。でも、嫌なら見つけられないところに居て。そうじゃないと、私、またあなたを探してしまう」
「俺と関われば、普通の生活は出来なくなるぞ」
「それでもいいよ」
ゼノがいれば、そこはどんな場所よりも生きやすい。その他大勢の人々を気にする必要はない。もとより、ゼノを眺めるのに忙しく、他人に割く時間はないのだ。
だけど、この思いは伝わらないようで、ゼノの表情は険しさを増す。
「俺は悪魔だ。自分が一番分かってる。この炎は呪われてる」
「あなたの炎は悪魔なんかじゃない」
「うるせぇよ」
「暗闇を照らして、温めてくれる優しい炎だよ」
暗く広い世界。それが私の見ている景色だった。吹く雨風は冷たくて、容赦なく振りかかる。全部終わってしまえばいいのにと何度思ったことか。そんな時、昼も夜も分からない暗闇に灯った炎。妖しい揺らめきに、魅了された。
何にも縛られず、自由に生きるゼノの姿。それを表現しているかのようで。つい見とれてしまった。
触れれば熱いのだが、その熱が冷えた心を温めてくれた。いつまでも眺めていたいと思うほどに、その色は優しかった。
まだ、その暗闇からは抜け出せていないけれど、それでいい。暗ければ暗いほど、炎の色がよく見えるから。
私が自分を肯定出来たように、ゼノにも自身を否定して欲しくない。それがどれ程苦しいことか分かっているから。
「私はこの炎が好きだよ」
「そんなこと言うんじゃねぇよ」
ゼノは家の中へ入ってしまった。




