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始まりの一撃

 やっぱりそこにいた。早く助けに行きたいのだが、目の前にゼノがいる。等身大のパネルがあるだけで、大はしゃぎできるのに、本物がいたら喜ばすにはいられない。


 その姿。出来ることならずっと眺めていたいのだが、そうはいかない。

 彼の危機は、刻一刻と迫っている。既に何発か攻撃を交わしたようだ。

 レンガの地面は焦げて黒くなっており、カラフルな家の壁は凍り付いていた。


 次は敵がゼノに攻撃をするだろう。そして、それが致命傷となる。ここで防ぐことが出来れば、彼は死なない。

「ゼノくん。ここは私に任せて逃げて」

「あんた、誰だよ」

 ゼノからしたら、私はただの村人にすぎない。そんな顔にもなるだろう。見知らぬ人が突然目の前に現れ、逃げろと言うのだから。


 本当なら輝くような笑顔を見たかったが、この状況では難しい。いい出会い方ではなかったが、彼と言葉を交わすことが出来た。贅沢は言わない。

「そんなこと、どうでもいいから早く」

 私の剣幕に押されて、ゼノは戸惑いながらも近くの物陰の方へ向かう。


 敵は不思議そうな顔でこちらを伺っていた。

「おやおや。ずいぶんと小柄な悪党だね」

「そうですか」

 こいつの言う言葉はどうでもいい。そもそも、私は小柄ではない。この物語の登場人物のスタイルがよすぎるだけだ。

「あんたは絶対に許さない」

 私がこの男をズタボロにしてやる。ゼノに攻撃した罪、償ってもらわねば。

そう意気込むが、どう対応しようか。大きな張り扇でもあればいいのだか、この世界にはないだろう。


 氷河の都、業火の森、青嵐(せいらん)の丘。それぞれに城があり、その国を治める王がいる。そして、その地に生まれた人はそれぞれの氷、炎、風を操る能力を持っていた。

 かつては、それぞれの国が協力し合っていた。けれど、強い力を持つ者が現れ、均衡が崩れた。それからは、氷の都と炎の森の間には大きな亀裂が生じた。その結果、ゼノが死ぬ運命を辿ることになった。


 敵は氷を操る達人だ。正直勝てるとは思わない。ただ、ゼノが逃げる時間を稼げればそれでいい。


 何か手頃なものはないかと、辺りを見回すとあった。この金棒で、応戦しよう。勢いよく振りかぶり、憎き英雄にぶつけた。

 氷の防御を張っても追いついていない。コントロールを誤ったようだが、なにぶん初めてのことだ。大目に見てもらいたい。自分が1番驚いているのだから。

「これほどまでの剣術の使い手がいたとは驚きだ」

「そりゃどうも」

 これが果たして剣術というのか分からないが、さすが主人公様。押されているにも変わらず、怯むことのない姿。嫌いではないのに。


 ゼノに会うまでは、そんな姿は私も励まされたし好きだった。氷の王が治める国。その国の王子。幾度となく国の危機を救い、英雄と呼ばれている。そして、その穏やかな性格や端整な顔立ち。大多数に好かれる素質を持っていた。

 だが、ゼノに炎の悪魔と言った瞬間、全て翻った。彼が何をしたというのだ。


 悪いのはゼノではない。彼の生まれた環境であって、彼自身が悪ではないのに。確かにゼノの出身地は彼も含め、気性の荒い者が多かった。だが、問題はそれではない。

 業火の森を治める者。極悪非道の暴君、閻魔王。彼によって、三つ巴の争いに火蓋が切られた。


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