灯火
攻撃はしないものの、睨み合いは続く。下手に口出しすれば、更に状況が悪くなるかもしれない。ここは一旦静かに見守って、何かあったらゼノを守ろう。
私の知っている中で、この二人の喧嘩は能力を使わないことがほとんどだ。さっきの様にけん制として使うくらい。
なぜって、二人の強さは互角だし本気を出して喧嘩したらこの国の半分は無くなるだろう。
協力すれば世界征服の夢は最短距離で行けると思うのだが。なにせ、相性が悪すぎる。
「ねえねえ」
ロナが私のそばに来て袖を引っ張る。
「あのカーテンも素敵ね」
「ありがとう」
「水色が好きなの?」
水色が好きかと問われれば違うのだが、こうして身の回りに多いのは、ゼノを連想するから。似ている色が目に入るだけで、気分があがる。気付けば私が水色の物を選んでいた。
カーテンはレースの生地。上は白で、下にいくにつれて薄い水色のグラデーションになっている。風が吹き込むと、ふわりと揺れる様子がゼノの炎の様にも見える。
現世ではなかなかイメージ通りの物が無かったから、こうして毎日のように見ることができて嬉しい。
「好きなんだね」
「え?」
「水色が」
「そうかもしれない」
ロナは優しく笑う。どこか見透かされているようにも思えたが、嫌な気はしなかった。
彼女のそばはとても暖かい感じがする。春の日差しを浴びているような、小鳥のさえずりを聞いているような。
そんな暖かな空気は、ガラスが割れる音で壊れた。ゼノとルーヴェルの能力がぶつかり窓に当たったのだ。凍りついているのに、燃えている。
恐ろしくも美しいと思ってしまった。だが、ロナが素敵だと言ってくれたカーテンは跡形もなく吹き飛んだ。
「お前は何のためにその身を灼いている?」
「てめぇには関係ない」
「忘れてないだろうな」
「分かってる。この炎は人殺しの炎だ。全てを焼け野原にするために持って生まれた。忘れるわけねぇよ」
悲しい素振りも見せずに、そんなことを淡々と言うものだから涙が出そうになった。でも、ここで私が泣くのは違う。
「分かってるならいい」
「言われるまでもねぇよ」
「それなら、悪魔の役目を果たすんだな」
ここで口を挟んだら、ルーヴェルに凍らされるだろう。でも、黙って聞いてはいられなかった。
「違う」
「なんだ?」
「違うよ。ゼノ君は悪魔なんかじゃない」
二人の間に割って入り、ルーヴェルを睨み付けた。手には金棒。いつのまに握っていたかなんて、今はどうでもいい。
「俺と勝負する気か?」
「これ以上ゼノ君を悪く言うのなら」
ルーヴェルの表情は何を考えているのか分からない。能面の様な顔はただ、じっと私を見ていた。こちらも負けじと見返していると、急に興味を失ったように背を向けた。
戦わずにすんだのか。いや、油断させてからの攻撃もあり得る。もう一度、金棒を握りしめるが仕掛けてこない。
「分かったよ。ただ、俺の要求を聞いてもらう」
「それはちょっと」
「なんか言ったか?」
「いえ、なにも」
ルーヴェルは敵組織であるい八寒社中のボスだ。他の登場人物と比べて少々小柄だが、戦闘能力は高い。




